第3話 散歩 三歩
梅雨明け後の早朝に夫婦で自宅近くの国道沿いを歩いてみる。
梅雨が明けてしまうと山間部のこの地では早朝は少し肌寒ささえ感じる時があるのだが今朝はじっとりと湿気がまとわりついている。
地球環境の変化によるものか、はたまたステイホームによる体重増加によるものなのか、その湿気は歩みにブレーキをかけているようだ。
今季の多雨によって山の土はしっかりと水を含み、なかなか乾かずにいまだ水が小さな筋となって染み出している箇所もある。
歩道沿いの草は小柄な私の背丈ほどに伸びているものもあるが、水になぎ倒されたものは腐っていく途中のようで異臭さえも放っているように感じた。
だが、木々は逞しく枝葉を生い茂らせて歩道を歩く私たちの頭上も覆おうとしている。
夫は持ってきたタオルを前方でグルグルと回しながら歩いている。蜘蛛の巣除けなのだが時に「うっ!」と声を上げている。
私はその後ろを3歩ほど下がってついていく。遠目にはつつましやかな妻に見えるだろうかと内心ほくそ笑む。この時だけは夫に感謝する。虫除け、蜘蛛の巣除け、蛇除けありがとう!
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