追い打ち

 ある休日のこと。

久しぶりに袋ラーメンを作っていた。

鍋の中ではキャベツ、玉ねぎ、人参、しめじ、卵がグラグラと踊りながらうま味を出している。

チャーシューもネギもスタンバイ状態。

袋麵を投入。

あとは伸びすぎないようにさえすればきっと美味しいラーメンのできあがり。

この隙にテーブルを拭いておこうとほんのちょっとだけその場から離れた。

「う~う~う~」突如夫が唸りだした。

振り返ってみるとコンロの前で夫が両手に水の入ったグラスを持ったまま固まっている。

コンロに目をやると鍋の中の泡は見る間に大きくなり激しく吹きこぼれた。

慌てて駆けつけIHの電源を切る。

そこでようやく夫が苦笑しながら言う。

「動けんかった。」

思うところはあるが追い打ちをかけるのはやめにして「フフッ」と、軽く鼻で笑ってやった。

「齢かな」との夫の言葉に「齢でしょう。でも、救急車を呼ぶような脳血管障害とかじゃあないからよかったやん」と返す。

あれ、結局追い打ちをかけてしまったわ。



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