洗ったのね。

 ピーピーピー

 洗濯が終わったことを報せる音。

 「はい、はい」と、返事をしつつ洗濯機の蓋を開け、固まった。

 うん?

 わたし、いま、何を見てる?

 わたしの眼が変なのかな?いや頭かな?


 

 少しの間をおいて、洗濯機の中心に突き刺さっていたものを取り出し大声で笑った。

 「きゃははは、」

 その声を聞いた夫が、「何があったん?」と、居間から声をした。

 私は、笑いながら手に握りしめたものを夫に見せてやった。

 夫の目がテンになった。

 

 洗濯機の中、他の洗濯物の中心にあった黒い棒状。それを取り出すと先端には、猫の手の形。

 50㎝の長さの先には、直径7㎝ほどの猫の手。

 猫の手の部分はクッションになっていて、夫が背中に薬を塗る時に使っているもの。

 たぶん、夫が風呂上りに使用しうっかり洗濯機に放り込み、そのまま蓋をしてスタートボタンを押したのだろう。

 当初、「なんで、」と、言っていた夫は、暫く思い返したのち「あっ、わしか」と小さく声にした。

 

 「う~ん、良かったんじゃあないかな。だって、何だかキレイになってる」

 もちろん、猫の手は、物干しには干しませんでしたが…

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斎藤さんちの小噺 真堂 美木 (しんどう みき) @mamiobba7

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