6話 二度目の遭遇
新たなスキルを使いまくり感触を確かめていたが、それも慣れてきた。
これは魔力を使うから、そこまで乱発はできないが、それでもコスパは良さそうなスキルだ。
名前は『真空刃』と書いてある。
強力だが魔力を使うため、場合に応じて使うように心掛けていた。
そうして幾日が過ぎたか、徐々に騒がしい音が聞こえてきた。
正確には耳は聞こえないのだが、振動を音として捉えている。
いわゆる骨振動という奴だ。
それにより、どうやらこの音の原因は人間達のようだ。
二度目ましてだな人間は。
俺は観察するために近付くことにした。
何故危険を犯してまで近付くかと言うと、情報が欲しいからだ。
今の俺にはこの世界の事が欠片も分からない。
この洞窟の事さえ分かっていない。
更に言えば、出口も最奥も分かっていない。
それほどこの洞窟は広い。
起伏や穴はあるが階段はないので、何処がどうなっているのかが分かっていない。
さすがに穴に入る無謀は出来ない。
だから、人間が来たならちょうど良い。出入り口と奥への道を、そして人間の強さや他の情報などを諸々頂こう。
そう決めた俺は気配を最大限に殺して人間の元へ近付いていった。
静かに近付くと何やら色々と話し声が聞こえるが、この世界の言葉が分からないから理解は出来ない。
だが顔や目線で何となく何言ってるかを予想する。
どうやらこの洞窟の調査をしに来たのかもしれない。
執拗に辺りを警戒しながら壁も入念に調べている。
あまり情報を持っていない洞窟なのだろうか?
少しでも知れていればどういう洞窟か、そして罠なんか無いと知ってるはずだ。
それをこの団体は罠がないか入念に調べている。
この洞窟の良いところは罠がないところだ。もしあったなら早々に死んでいただろう。だが罠の存在がこの団体の冒険者、そして外の人間がこの洞窟に詳しくないことを示している。
ならばここはこいつらを殺さない方が良い。
もしこいつらを皆殺しにしたり、中途半端に逃がそうものなら、余計に多くの冒険者が来ることになるだろう。
そうなると見つからずに過ごせる自信はない。
それに人間がどの程度強いのかも分かっていない。
なるべく危険は避けようと決めた。
まずは先程決めた情報を得ることを優先しよう。
この人間達はどうやら全部で5人ほど。
役割も前衛中衛後衛と、様々な役割がいそうだ。
慎重に慎重に観察を続ける。
そうして気配を殺し監視し続けていると、こちらの存在に気付いている者がいる事に気付く。
先程から意思を持ってこちらに頻繁に目線を送ってくるのだ。
何故気づかれた? 音は出していないはずだ。
そして臭いも骨だからしない。剣からの匂いも先程整備したからしないだろう。
ならなんだ? 何が原因だ?
そこでこちらを見ている者を観察すると、魔法使いのような服を着ており、杖も持っていた。
そこでピンと来た。
そうか! 魔力か!
あの魔法使いは魔力を探知してたんだな。
かなり盲点であった。
自分もこの洞窟は暗いから魔力で敵を探しているのに、なぜ相手もそれをしないと考えられなかったのだろうか。
それはここの魔物が魔力探知できる奴がいないからだ。
だから油断しきっていた。
危なかったな。ここで気付かなければ、この先で痛い目に遭っていただろう。
あの魔法使いには感謝だな。
しかしあの魔法使いも女だ。以前もそうだった。
魔法使いは女しかなれないのか?
そこらの知識も欲しいな。絶対に外に出れたら図書館などに行きたいと感じた。
それはそうとあの魔法使いが誰かにこちらの事を伝え始めた。
まずい、魔力を隠蔽しよう。
やったことはないが、外に漏れないように意識してみた。
すると今までのどれだけ魔力を体の外に無駄にしていたのか分かった。
そこで一気に遮断するとバレるので、徐々に魔力を引き絞り、遠ざかるような錯覚を抱かせるように魔力を消していった。
すると魔法使いも伝えられた男もこちらに来るが、距離を一定に保ちながら離れる。
きちんと魔剣の魔力も隠蔽してあるから、大丈夫だろうと思う。この剣を知っている者がいたら面倒になるだろうしな。
だがその予想は正しく、俺が今までいた場所に来た冒険者達だが、俺の魔力を見付けられず、違う方向へ行き始めた。
俺は嗤いそうになるが、ここでカタカタと音を出しては意味がなくなるので必死で抑え込んだ。
さあ、これでまだ観察が出来る。今度も慎重に続けていこう。
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