44話 疑念
あれからアルラウネの大群を倒すべく数日間、俺とリリの
何度も同じことを繰り返してアルラウネ達を屠っていくのだが、俺達の殲滅は一向に進展を見せなかった。
「……なぁガラハド。やっぱりよぉ」
「……うむ。決まりじゃな」
俺とガラハドはアルラウネを倒しながら話し合っていた。
そして俺の考えにガラハドは同意を示した。
「やっぱりこりゃぁ……」
「うむ。……増えておるな」
二人の考えが一致した所でここは一旦引く事にした。
「今日はもう一旦安全な所までじゃなくリリの所まで戻るか」
「そうじゃな。そこで話し合おうかのう」
いつもは一旦、安全な所で次はどこへ行くか話し合うのだが、今日はもう引き上げる事にした。
そしてリリが待っている場所まで戻ってきてからリリにも改めて聞いてみた。
「おとうさん、おかえりなさい。今日は早かったんだね」
「ああ、ただいま。今日は確認だけだからな……やっぱり増えてるよな?」
「うん……2日目は大丈夫だったけど、3日目くらいから増えたり減ったりしてる感じがする」
「やはりそうじゃろう。戦って殲滅した場所でまた戦っているような気がしていたからのう」
そう、ガラハドの言う通り、前日に殲滅してアルラウネがいなくなったであろう場所で、また戦っているという感覚がずっとしていたが、リリもガラハドも同じ場所で戦っているんじゃないかという疑念を持っていた。
このあまりに広大な範囲にアルラウネの大群がいるので、どこからどこまで倒したというのが非常に分かりづらい。
そこで昨日からは予め場所を確認しながら戦おうと話していたのだ。
そうしたらやはり同じ場所、前日にアルラウネを大量に殲滅した場所で戦っていた事が分かった。
どうしてそうなったかは分からないが、アルラウネを倒した場所にまたアルラウネが沸いているという事以外考えられない。
「倒したアルラウネが同じ場所に再生しているな。いや再生というよりもその場所に固定沸きしているような感じか」
「うむ。倒しても倒しても進んでいる気がしなかったのは、同じ場所に何度も現れていたからであろう」
「やっぱりそうだよな。そうとしか考えられない」
「うん。わたしが見ててもずっと同じような位置で戦ってる気がするよ」
再度二人に確認するが、やはり倒して進んでいるのではなく、同じ場所で何度も戦っているようだ。
このままでは何の意味もなくただただ消費するばかりなので、今日の所はこれで終わりにして、今後どうするかを話し合おう。
「ふぅ。いつもの拠点に戻って来たな」
「うむ。今日はなんだか足取りが重いせいか疲れたのう」
「そだねー。リリもなんだかつかれちゃった」
「確かになぁ。進んでいたと思ったらただの停滞だったからなぁ。気持ち的にちょっとな」
3人が同じように疲れたと言っているのは3人共に精神的に疲れたという事で間違いないだろう。
それくらいこの2・3日は進んでいるのか戻っているのか分からない中で戦っていた。
リリもただただ無意味に待っているだけだったろうから疲れただろう。
それにただ待つと言っても俺達は命の危険があるのだから、心労もあっただろうしな。
「しっかし明日からどうするかな……」
「うむぅ……さすがに手の打ちようが無いのう」
「ね。どうしたらいいのかな?」
たいして魔法が得意というわけではない3人。
出来る事は今までの様に、最初に魔力全開でデカい魔法を撃ち込んでから大剣で斬るか、最初に魔力を使わずに魔力を温存しながら1か所づつ丁寧に殲滅していくか、はたまた一気に中央突破するというくらいしか手が無いだろう。
「そのくらいしか儂たちじゃ出来んか……」
「わたしは付いて行ってもいいの?」
「ん~……辞めて欲しいなぁ」
「リリじゃ危なかろうのう」
「でも手が無いんだよね?」
「……ないなぁ。でもリリが行くと幻惑されそうでなぁ」
中央突破するとなるとリリは連れていけない。かといって最初にどでかい魔法を撃ち込まないとなるとリリが着いて来ないと進むのも難しい。
なぜならメテオをぶっ放した後のように点々とした場所のアルラウネを倒すならまだしも、そのまま突っ込むとなると少し進んだだけで数百のアルラウネから一斉に攻撃を受ける。
だが最初にメテオを撃っておけば、点々とした場所からの数十のアルラウネ達からの攻撃で済む。
さて、どうするか……
そこからは結論が出ないまま数日が経過した。
その間もアルラウネの大群を見守っていたが、最初の頃と同じような位置から増えも減りもしていないのだ。
これは何かおかしいと思い、一度ある程度アルラウネを倒してその場所を調査する事にした。
「それじゃやるか」
「うん! なんだか久しぶりだね」
「ああ、そうだな。じゃあ早速やるぞ」
俺はそう言ってヒュージロックを唱えて超巨大な岩を作り出し、手前の方のアルラウネの大群の上に落としていく。
それをリリの全魔力を注いだ爆発する巨大な
それは何度もやって来たように俺の巨岩に見事にぶつかり、大爆発を起こし散り散りになった岩にはリリの創った炎が纏い、アルラウネの大群をまるで隕石が降り注ぐかのように消し飛ばしていく。
最初の数日はそれで効果が出ていると思っていたが、効果が無いと分かると落ち込んだ。
だが今日は殲滅するのではなく、その場所のアルラウネがどうして再度現われるのかの調査を行うので、数日前の時よりは幾分かは上機嫌で放てるというものだ。
「よし、では行って来る」
「うむ。行って来るぞい」
「は~い! いってらっしゃい!」
いつもと変わらぬ元気なリリの声に見送られて、俺達は一番近くにいるアルラウネの大群を殲滅しに掛かる。
何度も何度もやっている為か、アルラウネの対処は世界一上手い二人ではないかと思える程、順調にアルラウネ達を簡単に屠っていく。
だがこれがメテオがなければ一気に数百から数千の蔓が迫ってくるから、さすがに対処しきれない。
なので最初にメテオを撃つ事にしたのだ。
それからある程度アルラウネを殲滅し、もうこちらに蔓や種の攻撃が来ない事を確認した後で、倒したアルラウネの調査をする。
「今まではこんな死骸に気を配る暇なんてなかったな」
「うむ。迫りくるアルラウネの攻撃をいなすだけで精いっぱいいじゃったからのう」
「だなぁ。それじゃアルラウネの死骸と地面を調べるか」
俺とガラハドは今倒したアルラウネ達を順に調べていった。
そこで気付いた点をお互いに答え合わせを行っていく。
「このアルラウネはおかしいよな?」
「うむ。前に倒したことのあるアルラウネとは違うのう」
「まず素材が取れねぇな」
「うむ。取ろうとしてる段階で消えていってしまうのう」
「それにアルラウネが地面の下に入ってる感じがしない」
「うむ。アルラウネが生息している気配がないわい」
「おまけに死骸を持ち上げても地面の下から根が出てこねぇどころか、何も出てこねぇ」
「うむ。つまり上辺だけのハリボテという事じゃな」
それから今日の戦いで俺達が出した結論は、ここら中にいるアルラウネは全て幻惑という事が分かった。
だがそれは信じられないのだ。この見渡す限りいるアルラウネが全て幻惑とは……
それは何度見ても信じられないが、アルラウネの死骸を見るとそれ以外考えられない。
「……どう思うよ」
「うむ。信じ難い事じゃが幻惑じゃろうな」
「ほんとにそう思うか?」
「うむ。それ以外ないじゃろう。儂自身も信じ難いがな」
そしてまた近くにアルラウネを倒して確認するが、やはり本物という事は無く幻惑と思える物でしかなかったのだ。
何度かアルラウネを倒して調べる事を繰り返し、ある一つの事を試す事にした。
「さて、やるか?」
「うむ。やろうかのう」
そうして俺たち二人は命を懸けてある事を試す事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます