43話 決行
アルラウネに効果のある属性を見つけ、そしてリリのレベルも上がり魔力に余裕が出来た頃を見計らって、あの数万はいるだろうアルラウネの大群を駆除すべく動き出した。
「リリ、準備はいいか?」
「うん! いつでもいけるよ!」
「よし……いまだ!」
「は~い! いっけーーーー!!」
それはアルラウネの大群の上空から落とされた大岩がフレアボムにより弾け飛び、各地に炎を纏った火山岩のように降り注いでいった。
それは俺とリリの共同で作ったメテオのような合作魔法だ。
基本的にアルラウネは動くのが遅いので逃げる事は叶わずに、そのまま炎の岩の餌食になるか、その周囲にいて地面がクレーターになるほどの衝撃の餌食になるかで、数百匹から数千匹は一気に倒す事が出来ただろう。
「……うぅ。もうだめぇ」
だがその対価はリリの魔力全てという事になるので、リリはもう立てなくなってしまった。
「リリ、すごい成果だぞ。ここは安全だから少し休んでてくれ。あとは任せろ」
「そうじゃ! あんな魔法など中々撃てる物ではない。ゆっくり儂らの戦いを見とってくれ」
「うん……あとはおねがいね」
俺はリリに魔力ポーションを数本渡しておき、ガラハドに目配せをしてから、アルラウネの大群へ突っ込んでいった。
俺とガラハドは話し合った結果、離れると助けようにも助けられないので、お互いの剣が届くかどうかの近距離で立ち回ろうという判断になった。
そうすればアルラウネの蔓に縛られてもお互いを助けられるという事から、お互いが近距離で動く事になり、その判断はさっそく役に立つ事になる。
「うぉおりゃあああああ!!」
「ぬぅおおおおおおおお!!」
お互いが自身にやってくるアルラウネの蔓を斬りまくり、弾丸と化した種を無視して蔓のみを対処する。
ガラハドは強固な鎧で種を弾き、俺は結界で種を弾く。
ガラハドは何発喰らっても鎧にダメージは無さそうだが、俺は結界にヒビが入ってきて限界を迎えそうになったら再度、結界を張り直して種を防いでいく。
一度結界が間に合わなくて食らってしまったが、中々に痛かった。
ありとあらゆる角度から迫ってくる種がほんの数秒、結界が切れただけで数百発は飛んできて地味に削られてしまった。
その種に対処しても蔓は掴んでくるのでガラハドの強固な鎧でも数百本の蔓に掴まれては、さすがのガラハドでも動けなくなってくる。
数本から数十本ならガラハドは引き千切って対処するのだが、それ以上は駄目なようだ。
そして俺はあまり広範囲に結界を出すと
適度な大きさの結界が必要なのだ。
そうして俺とリリの合作魔法のメテオから逃れたアルラウネ達を斬って行くが、思いのほかアルラウネが多く残っていた。
それらを一つ一つ潰していく。
右から飛んできた蔓を数本まとめて斬り飛ばすと今度は左から。
左から飛んできた蔓を対処するとまた右から後ろから。
蔓が飛んでくるのが身体に向かって直線的に飛んでくるから、大剣を横に振った所で当たらない。
なので大剣を斜めに角度を付けて斬り付ける。上から下へ下から上へと斬り付けるが、これが意外と力を消耗する。
しかもアルラウネから蔓が伸びてくる距離が思いのほか長く、移動しながら斬っているとありとあらゆる範囲からアルラウネの蔓が数百から数千本も飛んでくる時があるので、その時はお互いがお互いを見ながら同じ場所へ引いて行く。
だが対処出来なくなってくる時もあり、絡みつかれたら力で引き千切るが、それで引き千切れなく身体を動かせなくなる直前に、すかさず助けを呼ぶようにしていた。
「ぬお! スターク! 頼むぞい!」
「任せろ!」
ガラハドの助けの声に、一目見て俺は
それだけで蔓が纏まり太く一本の大きな蔓みたいになっていた所を、1/3ほど斬り飛ばす。
その切り込みだけでガラハドは力任せに太かった蔓を引き千切っていった。
「ぬはははは! お主は短剣を飛ばせるからいいのう!」
「まぁな! ガラハドも何か覚えたらいいさ」
「この戦いが終わったら考えてみるわい!」
そう言いながら戦いを続けていく。
そして俺がピンチを悟ったらすかさずガラハドを呼び、ガラハドがその巨体に似合わぬ速度で俺に絡みついていた蔓を一太刀で切り裂く。
それで隙が出来たガラハドに絡みついてくる蔓を俺が切り裂き、お互いを助け合いながら大量にいるアルラウネを殲滅していく。
そこで数万はいるであろうアルラウネの1/10程度を壊滅させた所で、メテオの魔法の影響を受けていないエリアに来てしまい、そこはさすがに二人では手が足りないので一旦離脱する事が決まった。
「ガラハド! ここはもうリリの魔法が届いてない場所だ! 一旦帰るぞ!」
「うむ! 承知した! ちと数が多いわい!」
そうと決まれば急いで帰還する為に、アルラウネを殲滅した場所まで戻り、蔓が届かない所まで移動していった。
そこで自分たちが倒したアルラウネを見ていると、自然に薄っすらとその姿が消えていく。
この時は迷宮が一定時間過ぎたので、吸収したのだと思っていた。
「素材が勿体ないが仕方ないか」
「そうじゃのう。今回は素材よりも先に進むことが優先じゃな」
「だなぁ。ここにもう長い事いるからな。こうやって少しづつ減らしていくしかないか」
アルラウネの攻撃の届かない範囲まで来た俺達は、ゆっくり歩きながらリリの元へ帰っていった。
「おとうさーん! だいじょうぶだったー?」
リリが手を一杯に振りながらこちらに向かって走って来る。
俺はリリが無事だったのに安堵しながら、飛んで抱き着いてくるリリを受け止める。
「ああ、俺とガラハドは無事だぞ。リリは無事だったか?」
「うん! 遠くからだけどアルラウネさんが減って行くのがわかってすごかったよ!」
「そうか。結構な数を斬ったからな」
「うむ。あれほどの数を斬るのは久々で楽しかったわい!」
そう言って「がははは」と笑うガラハドに、自分も同じ気持ちなのを残念に思いながらも、楽しかったのは事実なのでそれを言葉にはしないでおいた。
リリに同類とは思われたくないからな。
「しっかしあれだけやっても全然いるな」
「そうじゃな。さすがに数が多すぎるわい」
「なんか途中から森の木が消えてアルラウネさんだけにみえたよ? 奥の方はまだ木のままだったけど」
「ん? ……たしかに途中から木を切るんじゃなくアルラウネを斬ってたな」
「確かに最初は木から蔓や種が飛んできていたように見えたが、気付いたらアルラウネが飛ばしてきておったな」
戦闘に夢中で気付かなかったが、いつの間にかアルラウネが正体を見せて攻撃していたようだ。
「そういえばアルラウネは誘惑に幻覚も使うんだっけか?」
「うむ。たしかに誘惑だけじゃなく幻覚のような効果もあるかもしれんのう」
「あまりに大量に居たから木に見せる幻覚に掛かってたが、数が減ったからそれが薄れてアルラウネ本体が見えるようになったのかもな」
俺はそう予想して、次からはアルラウネの姿が見えるようになったら、そのエリアはアルラウネの数が減り幻覚の魔力も薄れたと判断して、次の場所へ向かうようにしてみようか。
「とりあえず次からは、アルラウネの姿が見えたら数が減ったと判断して次の場所へ移動してみるか?」
「そうじゃのう。試してみるか」
「次っていつ行くの? リリまだ魔力あんまり回復してないよ?」
「魔力ポーションは飲まなかったのか?」
「ううん。1本だけ飲んだよ」
「そうか。まぁポーションもそんなにあるわけじゃないから、1日1回にしてみるか」
「うむ。そうじゃな。あまり無理しても危険じゃからな」
「ならそうするか。死んだら元も子もないしな」
そうして無理はしないようにして、アルラウネと戦うのは1日1回にする事が決まった。
これを繰り返していけば10日かそこらでアルラウネを壊滅、また階段を見付ける事が出来るだろうと思われていた。
だが翌日以降、俺達は違和感に襲われる事になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます