8話 ダンジョン

 穴から落ちて周囲を見渡すと、目の前にどこからどう見てもゴブリンらしき魔物が出てきた。

 壁も灰色のレンガのように積まれているし、ここはもうダンジョンではなかろうか?

 今凄く胸が高鳴っている。まさかこんな所にダンジョンがあるなんて……


 グギャギャッ

 

 感動に呆けていると、緑の小人が突っ込んできた。

 まずはこいつを殺してから思いに耽るとしよう。


 手に錆びたナイフらしき物を持って突っ込んでくる。それが届く前に剣で真っ二つにする。

 何のひねりもなくスピードもなく、ただの雑魚だった。

 これなら上にいたスケルトンやゾンビの方が強かった。もしかして最初に出会ったスライムの方が…

 などと思えるくらいには心に余裕が出ている。


 よし、これなら外に出なくても肉の体を得られるかもしれない…

 そんな希望を胸に、このダンジョンを攻略していこうと思う。どうせ時間はたっぷりあるのだから。


 こうして俺は思いがけずダンジョンを見つけ、その攻略を開始するのだった。



 ダンジョンを進んでいると、一つ改善したことがある。

 それは光を認知するようにしたことだ。今までは魔力の流れだけを見ていたようで、洞窟の出口で光に気づかずに痛い目を見ていた。

 ならば光も見れるのであればそれを見るようにするのも手だろう。だが光にだけ頼りすぎると、光で視界を奪われた時に痛い目を見る事もある。なるべくそれだけに頼らないようにしたい。

 ダンジョンは不思議と明かりがある。面白いものだ。


 そうして進んでいると何匹か魔物を屠る。

 種類はゴブリンだけじゃなく、お馴染みのスライムからコボルド、コウモリや蜘蛛の魔物も出てきた。

 くまなく探すようにして、ついには下に下る階段も見つけた。

 この層も大体調べ終わったので、ここは下の階に降りよう。


 降りて少し歩くと、小さな部屋があった。そこには1つの宝箱がある。


 大抵こういうのは罠があるんだが、どうだろうか?

 俺は慎重に宝箱の周りを確認し、鍵がないのを確認しゆっくりと開けてみる。


 ふぅ…罠はなかったようだ。

 一息つき中身を調べると、そこには一冊の本が入っていた。

 もしやと思い手に取ってみると…


 おぅ…よめねぇ…


 この世界の文字なのか、俺にはさっぱり読めなかった。

 一応最初から最後まで見てみるが、何も変化はない。

 仕方ない、持ってても宝の持ち腐れだが、いつか役に立つだろうと思い魔法袋を開いて入れようとして、思わず魔力が本に流れると…


 んん? …なんだ?


 何やら本が光っている。そこで本を再度開いてみる。


 すると本から魔法陣が浮かび上がり、一瞬光が強く輝いたかと思うと、光の粒子になりそれが俺に吸い込まれるように入ってきた。


 なんだなんだと思っていると、確かな力の奔流を感じた。

 そこでステータスを覗いてみると、そこにはスキルが追加されていて、魔法の欄が増えていた。


 そこには、ファイアアローの文字があった。


 おお! これで念願の魔法が使えるじゃないか!

 今までは剣の真空刃しかなく、それも魔力が少なくあまり使う場面があまりなかった。

 だが今は魔力が増えたのもあり、魔法を使っても魔力が切れることはそこまでないだろう。


 まずはどの程度の威力と射程か調べてみるか。

 そこでまずは真空刃を離れた壁に放つ。

 それは見えない刃が飛び壁に当たった。すると一本の線が出来て横幅の直径は1mだろうか。深さは20cmはありそうだな。生き物に当たったとなると中々の威力がありそうだ。


 次はファイアアローを同じ壁に向かって放つ。

 手を前に突き出し念じると、手の前に魔法陣が浮かび上がり一瞬にしてファイアアローが壁へ向かって放たれていく。

 壁に着弾するや否や大きな爆発音をだし、煙が晴れた後には直径50cmはあろう大きい穴が出来ていた。

 これは魔物にぶつけても、そこらの魔物なら重傷を負わせられるだろう。

 強い魔物には通用しないかもしれないが、ここでは離れた場所へ向かって打てる物が増えたので、喜ばしい事だろう。


 試しに壁から離れに離れてもう一度2つのスキルを打ってみるが、真空刃は少し威力を幅が減少していたが、ファイアアローは何も効果が変わらなかった。


 この結果から魔法というのは風やらの影響を受けづらいのかもしれない。

 まあ矢の形をしてるから抵抗が少ないというのもあるだろうが、これは遠距離はファイアアロー、中距離は真空刃と使い分けるか。

 ちなみに魔力はファイアアローの方が若干少なかった。真空刃は鋭さがあるから致命傷になりやすいが、魔力をそこそこ使うから、やはり使う機会は少なそうだ。

 だが魔石を食べて魔力がかなり増えた、なのでこれからはずっと使えるくらい更に魔力を増やしたいものだ。


 さて、ではまた良い物が手に入るかもしれない。期待しながら進んでいこう。



 数日しばらくの間、探索を進めていると、いくつかの宝箱を発見した。

 それと共にここは魔物が豊富で、多い時には5分に一回は遭遇する。それも複数匹と遭遇するため、俺は嬉々として狩りをしまくっていた。

 そういう事もあり宝箱があっても中身を確かめる暇もなく、アイテムを取ったらすぐに戦闘といった行動を続けいていた。


 さて、そろそろこの階層も索敵し尽くしたな。ということでお宝を確かめてみようか。


 宝箱は全部で5つ。

 中身は…


 ナイフ 一本

 液体の入ったビン 2本

 腕輪 一個

 髪留め 一個

 真っ白な紙 1枚


 この計6個だ。


 正直何のアイテムだか欠片も分からない。

 一つづつ試してみるか。


 まずはナイフ。近くにあった死体に切り付けてみる。すると切った所が燃え上がった。

 そしてそれは切った所だけでなく魔物の全身を炎が多い尽くし灰に変えていった。


 これは驚いた。これは超一級の武器じゃないか? 正直ナイフだから使い所が難しいが、うまく使えば強力な武器になる。これは投げても使えそうだ。


 次は液体の入ったビン2本。これは分からない。正直自分のかけて試すしかないのだが、もし回復ポーションだとしたらヤバイ。何がヤバイって相当痛い。かなり痛い。骨が溶けるくらい痛い。

 多分ただのポーションですらそうなのだ。これが上級とかエリクサーとかだったりしたら、俺は死ぬんじゃないか? そう思ったので使うのを止めた。


 よくある初期スキルっぽい鑑定スキルだが、チートも良い所だろう。そんなもん誰だって欲しいに決まってる。正直何かの攻撃魔法より全然欲しいスキルだ。

 あぁ、俺に鑑定スキルがあれば…


 なんて思ってたら、腕輪を付けた瞬間、目に映る全ての物の情報が頭に入ってきた。


 おろ? これはもしかして? なんて思って魔法袋に入れたポーションを取り出して見てみた。

 すると…


 不思議な青い色のポーションは、エリクサーと出た。


 ま…マジかよ… ぶっ掛けなくて良かったー! あっぶねー!!


 これは体に掛けてたら間違いなく死んでたな。危ない危ない…

 効果は、傷や病、呪いすらも完全回復し、死んで数時間であれば、死んだ者すらも生き返らせるというものである。

 おいおい、死んだ者も生き返らせるとあるのに俺が使ったら死ぬかもしれないとか笑えない…


 そういう意味でも最初に殺した冒険者のアイテムを漁ってポーションを使っといて良かったな。

 いつもそうだが俺は常に危険と隣り合わせのような気がする。

 だがいつも間一髪のところで回避してみせているのは、神か何かの気まぐれなのか?

 この世界に来てることからも、そう思わずにはいられない。

 まぁ生きてるんだ。前向きに考えよう。


 次は赤い液体のビンだ。

 これは魔力完全回復ポーションと出た。効果は名前の通り魔力を回復する。さらに魔力を使い切ってから使うと最大魔力量が増えるらしい。

 これはすぐにでも使いたいが、やはり魔力がなくなったときに飲む方がいいだろう。

 やはりこの世界は魔力が多ければ多いほどいいだろう。何につけてもスキルを使えば魔力を使う。

 なので、いざという時は魔力を使い切ってから使用する事にしよう。


 それと髪留めは聖女の髪留めと書いてある。

 効果は、髪に付けるとあらゆる毒から身を守ってくれる。呪いも中級までなら完全に防いでくれる、とある。


 これは嬉しい装備だ。毒や呪いというのは正直一番怖い所だ。

 だが俺には髪がない。この虚しさはどうしたらいい…?


 まあ肉体を持つ者に進化出来れば使えるなら使おうか。


 最後は…


 おお! これはありがたい!

 なんとマッピングの地図だ。

これは行ったところをオートマッピングしてくれる。しかも起動させたらその場所の外周を勝手に読み込んでくれるらしい。

 一体どんな仕組みになっているのか不思議だ。

 これだから異世界は面白い。地球の科学では成し得ない事だらけだ。


 俺はこの階層はほとんど探し終わったので、次の階層からマッピング地図を見ながら探すことにした。

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