EX3 リリの過去
今日は街の中でのお仕事が無かったから外で薬草採取をする事になった。
冒険者ギルドに登録するのは10歳から出来るの。でも私は8歳からお仕事をしてた。
登録は出来なかったけど、ギルド長が内緒でお仕事をくれてたの。
他にも何かお仕事出来ないか街のお店とかに聞いてお手伝いしながらお駄賃を貰って。
それでなんとか生きてきた。でもおかあさんの薬代はほとんど買えなくて、食費を節約しても足りなくて……
おとうさんが死んだのはわたしが赤ちゃんのときで、冒険者やってたみたいだけど、普段は滅多に出ないガムルの大森林の浅い所でキラーウルフが出て、それも番いで出たらしくてしんじゃったみたい。
それでおかあさんが一人で私を育ててくれたけど、8歳になったころに風邪で倒れてからずっと寝込んだままになっちゃった。
それで食べ物が無いからわたしが働き出したの。でも日々の食べる物で精いっぱいでお薬は買えませんでした。
それからおかあさんはどんどん衰弱していって、一度だけお医者さまに見てもらったんだけど、もう末期の状態で……
それからは毎日のようにおかあさんが、「ごめんね……ごめんね……」って言ってて悲しかった。
でもわたしが大丈夫だよって言ってたけど、わたしが10歳になる頃には喋る事も出来なくなっちゃった。
それでもわたしの毎日は変わらなかった。お金を節約してお薬もたまに買ってたりするの。
だからわたしは今日もお仕事するの。今日は薬草採取。これは何回もやってるから大丈夫と少し簡単に考えてたの。
いつもより薬草が見つからなくて、いつもより森の奥に行っちゃったみたい。
そうしたらわたしは倒したことないけど他の冒険者さんに付いて行った時に見た、ゴブリンに出会っちゃったの。 それも3匹も。
わたしは見つかった瞬間にすぐに逃げたの。 でも同じくらいの身長なのに、あっちは足が速くて、それも剣も持ってるのに早いから。だからすぐに追いつかれちゃった。
それが怖くて大声を上げて誰かに助けを求めたの。
でもこんな所では誰もいなくて助からないと思ってた。
それがますます死ぬことへの恐怖心で足が動かなくなって、でも声は出そうと思って必死になって叫んでたの。
ゴブリンはわたしを見てニヤニヤしながら近寄ってくる。それが緑の裸で気持ち悪くて…
もうわたしは生きたまま食べられちゃうんだなって思ったの。
そしたら急にゴブリンが3匹とも倒れちゃった。
何が起きたか分からなかったけど、助かったことだけはわかった。
ホッとしたら急にわたしの直感スキルが反応したの。
わたしはパッと振り向いたの。そしたら誰もいなかった。
でもわたしの直感が告げてる。この方向に絶対に助けてくれた人がいるって。
だからわたしはまた必死で駆け出したの。
少ししたら人らしきものが見えてきて、絶対にこの人だと感じたの。
だから必死で呼んだんだけど、聞こえてないのかそのまま歩いて行ってしまう。
もっともっと必死に呼んでるうちに追いついてきて、わたしは無視してるって分かっちゃった。
だから、なんで無視するのって言ったら、無視してないって!
絶対にウソ! なんでウソつくのか分からなかったけど、でも助けて貰ったからそんなに怒れないの。
それからは手をつないで街に帰る事にしたの。だってここはどこだって言うんだもん、おかしいよね。なんで森にいるのって言ってもよく分からんっていうし、ほんとに不思議な人。
だから街に連れていくために手をつないだら、すごく冷たくてびっくりしたの。
フードを深く被ってたから顔は分かりづらかったけど、下からだと顔が少し見えたの。
そしたら顔は少し黒い感じだったけど、目が赤くてまた少しびっくりしたの。
でもこちらに何かをするような感じには思えなくて、わたしはわたしの直感スキルを信じる事にしたの。
それからはわたしを助けてくれた人、スタークさんって言うんだけど、言葉も文字も分からないっていうから、わたしが教える事にしたの。わたしが先生だって……ふふっ。
でもなんで言葉が伝わるのに言葉を教えてってなるのかな? 思念ってなんだろ? ほんとに不思議な人。
それからは冒険者ギルドに行って、取って来た薬草を売って、スタークさんも売るものがあるとかで色々出してたら、ギルド長と何かと言い合ってて……
でもそれも仕方ないと思うの。だって凄いものばかり出てくるんだもん。蘇生草なんて見たことなかったけど、魔力で淡く輝いててスゴく綺麗な草だった。
なんでも幻のエリクサーっていう死者すら生き返すお薬の材料みたいで。
もしそれがあったならおかあさんは……
そんな感じでその日は終わったの。
いつもは家に帰ったら何も喋らないんだけど、今日はおかあさんがいる所に向かって今日起きた事とかスタークさんの事を話してたの。
それがなぜか楽しくて、久しぶりにゆっくり寝れた感じがしたの。
それから朝起きてすぐにスタークさんの所に行って、文字とかを教えたりして過ごしたの。
街の案内をしようとしたらまだいいって言われちゃった。でも何日か経ってから案内してあげたの。
そんな生活が2週間くらい続いて、そのあいだすごい幸せだった。まるで離れて暮らしてたおとうさんと再会したような感じで、スタークさんの所に向かうのが毎日の楽しみになってた。
でもスタークさんからわたしの家に来たいって言われて、心がしずんじゃった。
病気だからとか話せないからとか来ないようにしようと何回か断ってたけど、おかあさんに挨拶したいっていうから、しょうがないから入れてあげる事にしたの。
「せまい所だけど、どうぞー」
「ああ、お邪魔するよ」
わたしはスタークさんを家に入れてお茶でも出そうとしたの。スタークさんは家の中をくるりと一度見てわたしが座ってって行った場所に座った。
でもお布団の所をじっとみてるの。
わたしはそれが嫌でお茶を出して、スタークさんからお布団を隠すように座った。
それからいつものように普段の事を話したりしてたんだけど、スタークさんがおかあさんはって言われて、心臓の音が聞こえないようにお布団を指さした。
それでおかあさんは病気で話せないからって言っても聞いてくれなくて、ついにはお布団をめくられちゃった。
そこにはおかあさんは居なくて丸めたお布団があるだけ。それがスタークさんに見つかっちゃってわたしのウソがバレちゃった。
スタークさんの目が見れない。わたしはむねの鼓動を押し出すように叫んじゃった。
「だって……おかあさんはまだ生きてるもん! わたしにはおかあさんしかいないんだもん!!」
わたしにはおかあさんしかいない。でもしんじゃって……だからわたしはおかあさんが生きてるように毎日を送ってた。 おかあさんがいないと何をしていいか分からないし、なんでわたしを置いてったのってずっと考えてたから。
それからはスタークさんが何か言ってたけど何も聞こえなかった。気付いたらスタークさんを追い出して家に閉じこもってたみたい。
それから数日、家から出なくて何も食べなくて、もうこのままでもいいかなって思っちゃった。
意識がもうろうとしてきた時にドアからすごい音がして、わたしは助け出された。
わたしを助けてくれた人はやっぱりスタークさんで、食事をたくさん食べさせられて、出たくないのに無理やり外に出されて……
でもわたしを心配してくれてる人がたくさんいるんだって教えてくれて……
おかあさんがしんでから、わたしを現実に戻してくれたの。
それからはおかあさんとおとうさんのお墓に行って、わたしは現実で生きる事を宣言して、それから……
「スタークさん、ありがとう……これからよろしくお願いします」
「ああ……え?」
「ふふっ……これから一緒だよおとうさん!」
わたしのお父さんに任命しました。勝手だけどスタークさんが本気で嫌がるまでは一緒に居れたらいいな。
今度はおとうさんの秘密を教えてね。
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