スケルトン戦記 ~ベビースケルトンからの進化の逆襲~

テトとジジ

第一章 生まれいずるもの

1話 意識の覚醒

 意識があることに気づいたのはいつ頃だったか。

 ふと目が覚めたら、真っ暗な場所にいた。


「カタカタカタッ」


 何か喋ろうとすると奇妙な音がする。

 なんだと口を触ってみると、異常に骨張ってるではないか。

 何が起きたと体を触ると、それらも骨張ってる、というより骨じゃないか。


「カタカタカタッ」


 これは俺の口から出てる音か?

 なんなんだこの体は? おれはどうなったんだ?


 おれは誰だ? 最後の記憶はなんだ?


 少し考えてみる。するとハッキリと思い出せる最後の光景。


 そうだ、おれはアメリカに旅行中に無差別に乱射された銃弾の犠牲になったんだった。


 日本で生まれ、必死に東京で働いて生きてきたのに、32歳になったばかりの頃、世界的に蔓延したウイルスのせいで仕事がなくなり、溜まりまくったストレスを発散するために安全な国に遊びがてら旅行に行ったら死んだんだった。


 それがなんでこんなところにいるんだ?

 この真っ暗な空間はなんなんだ?


 もしかして病院かと思ったが、地面は砂というか土のようだから違うだろう。

 ならここはなんなんだ?


 しばらく目を凝らしていると、奇妙な見え方だが、段々と見えるようになってきた。

 辺りを見渡すと、どうやら洞窟のような場所にいるのだろうか。

 なんで洞窟に? そう思っていると、自分の体が目に入った。


 ……なんで骨?


 目に入ったそれは全身が骨になっている自分の体だった。

 しかも…異常に小さいのだ。


 なんなのだこの体は? なぜこんなに小さい骨の体になってるんだ?

 疑問は尽きないが、何かの音で意識が自分から外に向かう。


 音のする方をじっと見ていると…


 何やらヌルヌルとゆっくり動いてくるものが見えた。


 なんだあれは?


 おれは奇妙な動く物体を見つめていると、それはヌルヌルしながらこちらに近寄ってくる。

 何か恐怖を感じて逃げようとするが、体が思うように動かない。

 なんだこの小さな体は。全く思い通りに動かせなく、ワタワタしてるだけになってしまう。


 その間にもヌルヌルとした物体が近寄ってくる。

 この洞窟はほぼ暗闇なので分かりづらいが、なんだかスライムのように見える。

 それが動けない俺の体というか骨に覆い被さってくる。


 うおっ!? やめてくれ!!


 体全体を覆われ息が出来ないっと思ってると、別に苦しくはない。


 なんだと安堵したのも束の間、今度は全身が酷く痛みだした。


 なんだ!? い、痛い! なにしてやがんだこいつ!?


 痛みに暴れるが全く剥がれない。それどころか痛みが増してくる。

 恐らくだがこいつがスライムだとすると、俺の骨を溶かしてるんじゃないか?

 そう判断し、何とか脱出を試みる。

 だがそれも虚しく、まるで効果がない。

 意識が戻った瞬間にまた死ぬのかと思い絶望してると、顔に何やら固いものが当たった。


 なんだと目を凝らすがよくわからない。

 ならばと思いその硬い物を手で掴もうとするが、体を包まれているからか、うまく掴めない。

 そんな事をしているうちに、どんどんと骨が溶けていっている。

 そうしてワタワタしていると、たまたま口の中にその硬い球のような物が入って来た。

 これだけ硬いと手なんかでは壊せないだろう。

 だが今の赤ん坊の身体で一番力のある所に入って来たのだ。

 俺は思い切り歯でその硬い物を噛み砕こう歯を食いしばった。


 すると、パキンッと音を立てた気がした。

 それは口の中の硬い物を噛み砕いた感触も合わさった物だ。

 そして次の瞬間には聞き慣れない、ギギィという音と共に俺に覆いかぶさっていたドロッとした液体が溶けて崩れていった。


 体に纏わり付いていた物がなくなり、ほっと安堵したが、体を見て背筋が凍った。

 ボロボロに朽ち果てようとしている体、これじゃもう動けないだろうか。


 絶望に打ちひしがれていると、なんと骨が元に戻っていくではないか。

 暗くてよく見えないが、それはまるで逆再生で治っていくかのようだ。


 しばらくすると、骨が元に戻り、また動けるようになった。

 さらにさっきよりも動き易くなってる気がする。


 元通りになったからか少し余裕が出てきた。

 そこで、今の現状を分析してみる。

 おれは死んだ。これは間違いないだろう。

 そして今は生きている。何故か骨になって。

 それもただの骨ではない。きっと赤ん坊の骨だ。それくらいこの体は小さい。


 そして一番大事な事、それはきっとこの世界は地球じゃないってことだ。

 骨で動けるのもそうだし、スライムみたいな奴もそうだ。

 地球じゃそんな物はいない。ならここは異世界という事になる。


 そして俺は、異世界で弱すぎる赤ん坊の骨になって、スライムに食われる所だったと言うことだ。


 そう思ってるとなんだか腹が立ってきた。

 全てが不運の連続だ。


 なぜ俺が無差別な銃弾で殺されなきゃならない!

 なぜ俺がこんなクソ弱い小さな骨になってるんだ!

 なぜ俺があんな弱そうなスライムごときに殺されかけなきゃならない!


 全てに怒りが走り、この状況を絶対に変えてやると、心に火が付いた。

 俺がやらなければならないのは、生きてここから出ること。

 そして最弱であろうこの体をもっともっと強くし、誰にも負けないようにする事だ。


 そうと決まればさっさと動こう。いつまでもここに居ても意味がない。

 まずは強くなることを優先しよう。

 そう思い俺はもしかしたらと思い、自分の能力を確認することにした。


「カタカタカタッ」


 くそっ、喋れないんだった!


 仕方なく俺は心の中でステータスと唱える。

 すると思った通りステータスが目の前に現れた。

 やはり地球ではない事が決定した。


 そしてステータスには種族やレベル、HPや力などが目の前に浮かんで見えた。

 そこにはベビースケルトンと書かれており、レベルは2となっていた。

 能力は全てが2になっており、元は1だったのだろうと予想出来た。


 レベル1で全能力値が1とか終わりすぎだろ。

 人間がいたら歩いて踏まれただけで死にそうじゃないか!

 よくこんな弱いのでスライムに勝てたな…

 多分色々偶然が重なり、核≪コア≫と思われる物が口に入ったおかげだろう。

 だがスライムが狩れることは分かった。そしてレベルが上がれば体も治ることも分かった。

 なら俺がすべき事は、まずはスライムを狩り続けて強くなることだ。


 こうして今の現状とやるべき優先事項を確認し終わった俺は、この洞窟を徘徊することにした。

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