52話 vs金ゴキ

 今日は魔力ポーションを買い込んで来た。

 ガラハドはともかくアリシアは人間にはどうやっても見れない。

 幻覚でどうにかと思ったが、街全体の人間に掛けるのは結構な時間が掛かるとの事。

 一人くらいならすぐだが、やはり広範囲となると時間が掛かるようだ。


 仕方なく迷宮に居て貰おうと思ったが、一度は迷宮の外へ出たいという事で、人がいない場所に転移して外の景色を見せる事にした。


「……ウソ?」

「嘘じゃないぞ。ちゃんと外だ」

「そうじゃない。まさかアナタが転移魔法を使えるとは思わなかった」

「まぁただの屍喰鬼グールが使えるのはおかしいよな。けど使えるんだから仕方ない。これで外に出れるって事が分かったろ?」

「ええ。アナタが異常だという事がさらに分かった」


 そんな事を言ってくるアリシアの顔は若干だが笑っているようだ。

 素直じゃないなと思いながらも、どうにかこいつも自由に街に出入り出来るようになればなぁと思っていた。


 そしてアリシアを一旦迷宮に戻して、街で魔力ポーションを買い込み、20階層の攻略が出来るかどうかをアリシアに確認したら行けるというので、今日こそは黒い悪魔エリアを攻略しようと挑む事にした。


 それから俺達4人は順調に殲滅をしていった。

 やはり俺とリリだけよりも、アリシアが闇の範囲魔法を使っているからか殲滅速度が速い。

 それにアリシアは魔力が豊富なので、何度も範囲魔法を放てるのが良い。


「しっかしこれだけ炎を使ってるのに酸素が無くならないのはさすが迷宮という所だろうかね」

「さんそ?」

「ああ、リリは今、息苦しくないだろ?」

「うん! ぜんぜん!」

「普通は密閉空間で火を使うと酸素が失われて苦しくなるんだ。けどその様子が無いからな。ほんとに迷宮というか異世界は摩訶不思議だ」


 リリ以外にもガラハドもアリシアも詳しく酸素の事を分かってなかったので教えた。


「なるほどのう。確かに洞窟などで火を焚くと危険というのは知っとったが、そんな原理があったのか」

「……スタークは博識」

「まぁ俺の世界は科学で伸し上のしあがった世界だからな」


 科学では地球が上だろうが、魔力という便利すぎる物があるので、こちらの生活の方が地球よりも圧倒的に上になる要素は高い。むしろそういう高度な文明がこの今の世界にもありそうだ。

 そういう意味でも世界を旅するのが楽しみになる。


 そうして炎を使って敵を殲滅していったが、丁度辺りに何も居なくなった。


「ようやく居なくなったな。リリ、水飲むか?」

「うん。ありがとう、おとうさん!」


 俺は魔法袋から水の魔石が嵌まった水筒を取り出してリリに渡す。

 最初は水の入った水袋を大量に買っていたが、すぐ無くなるし嵩張かさばるので水の魔道具を買う事にした。

 それは金貨5枚もしたが、片手で持てる水筒サイズだが、これ一つで4人家族が1か月は持つ。

 そして水が無くなったら水の魔石を変えればまた使えるので、買って良かったと思う。


 こうして俺達は順調に殲滅を続けて行った。


「あれだな。アリシアがぽんぽんとレベルが上がってるのを見ると、そんなにレベルが高くなかったのか?」

「うん。私が生まれたフロアで敵無しになった所で眠りに付いたから」

「そうか。なら生まれた時からその姿か」

「そう。アナタは違うの?」

「俺は違うな。そういえばガラハドも最初からデュラハンだよな?」

「うむ。恐らく生前の能力をある程度反映して生まれるのかもしれんな」

「という事はガラハドは王国騎士団長で剣が得意だから剣を使うデュラハンで、アリシアは闇の魔女だからそれと相性のいいアルラウネと」

「うむ、そうじゃな。そしてお主は……な、なんじゃ……すまんかった」


 俺はその言葉を聞き、遠い目をしていた。

 謝られると余計に惨めになる事を今度ガラハドに教えようと思う。


 じゃあ何か? 俺は生前がベビースケルトンのような能力しかなかったから、ベビースケルトンの姿で生まれたと……?


 (泣いても良いよな……?)


 執拗にアリシアが俺の最初の姿を聞いてくるが俺はただただ黙って無視を決めていた。

 だが心優しいリリが俺の最初の姿を教えてしまい、アリシアが同情の眼差しを向けて来た。


 ガラハドに続き心に傷を負ったが、今度リリにも黙っている優しさを教えようと思う。


 俺は心に多大なダメージを追いながら進んでいって、ようやくこのフロアの最奥まで行く事が出来た。

 そしてそこにはある物が居た。

 それは……


「なんか色違いのデケーのが居るな」

「なんかピカピカ光ってるね」

「なんじゃろうのあれは」

「……金ゴキ」


 確かにアリシアが言う通りに金ゴキだ。

 金色に光っており、しかもデカい。

 その大きさは体長4mはあるだろうか。

 それでいて地面からの高さも1m50cmはあるだろうか。


「あんなのに魔力喰われたらあっという間に枯渇しそうだな」

「じゃのう。しかしこっちに向かって来ないのう」

「こいつはノンアクティブらしい。こっちから攻撃しない限り何もしてこないようだ」

「それじゃ周りのを倒してからやるの?」

「ああ、そうするか。まだ黒いのが残ってるしな」

「……金ゴキなら大きいけど見た目は大丈夫」


 確かに黒くないだけでこれだけ見た目が違うのか。

 しかも金色というだけでゴージャスに見えるな。


 それにこいつの名前はゴールデンコックローチというらしい。

 攻撃しない限り、こちらに攻撃はしないようだがとても厄介な物があった。

 それはこいつを攻撃すると、このフロアにいるコックローチが全て襲い掛かって来るという物だ。


 正直こいつが階段の近くに居なくて良かったと思う。

 気まぐれに攻撃してたら数千万匹が襲い掛かって来ていて、きっとあっさりと殺されていただろう。


 こいつが奥に居て、さらにここに来る数時間でコックローチをほぼ殲滅しといて本当に良かったと思う。


「きっとこいつがフロアボスだろうな。弱いわけが無いから攻撃する時は注意だ」

「うむ。最初は儂がターゲットを取ろう」

「ああ、頼むな。それに魔法使う時は前衛に要注意だな」

「……小さい重力球でやっとく」


 アリシアは攻撃が闇魔法のグラビティボールというのを使っていて、重力で吸い込む魔法を使っていた。

 それは俺のヴォルテックスよりもよく吸収していて、コックローチの残骸を残す事もなく消し去って行くので、見た目がキツいこのフロアではとても向いていた。

 それにサイズも小さく出来るようで、金ゴキの時はガラハドと反対から撃つように伝えた。


 それから見える範囲のコックローチをある程度、倒し終わったので準備が整った。

 まずは一番頑丈であるガラハドに攻撃と防御をお願いし、炎魔法で倒す予定だ。


「では行くぞい」

「ああ、頼む」

「ガラハドおじちゃん、がんばって!」

「……倒す」


 ガラハドは大剣に闇の魔力を纏わせ、強力な一撃を叩き込んだ。

 それはこの石畳の床が陥没し、深いクレーターが出来る程の一撃だ。

 しかしそれを真正面から受けても金ゴキは軽い傷しか負っていなかった。


「ぐぬぅ!? こやつ硬いぞ!」


 ガラハドが驚くがそこで一気に金ゴキのスイッチが入った。


 ギュィィィイイイイイイ!!


「ぬお!? なんちゅう馬鹿力じゃ!!」

「何とか耐えてろ! フレアボム×10」

重力球グラビティボール!」

「え~と、ガラハドおじちゃんに結界!」


 金ゴキが動き出したかと思うと、一瞬でガラハドに突っ込んでいった。

 それは大型トラックが猛スピードで突っ込むような衝撃があり、あのガラハドがその突進に数mは身体を持って行かれていた。

 更に脚も器用に使いながらガラハドを喰おうとしている。


 リリは攻撃が範囲攻撃以外に強いのを覚えられてなかったので、ガラハドに結界を張っていた。

 咄嗟の判断だったろうが、それは大正解という奴だろう。

 金ゴキに攻撃した瞬間に、倒し損ねたこのフロア中のコックローチが一斉にガラハド目掛け襲い掛かった。

 しかしリリの張った結界は電撃で、触れた瞬間から死んでいき、結界を覆い尽くすようにはならなかった。

 その数は見た所、数千から数万は居たようで、俺も2重3重の結界をガラハドに追加で張った。


 しかしそれはすぐに破壊されてしまう。


「こやつの魔力を齧る力が強すぎるわい!」

「なら弾き飛ばすか距離をとれ!」


 あまりの金ゴキの魔力を喰らう速度が早いせいで、張った結界がすぐに割れていく。

 なんとかガラハドも弾こうとしているが力が強すぎるのか、中々に離せないでいた。

 俺のフレアボムに身体が炎を纏っているが、気にせずにガラハドに攻撃をしかける。

 そしてアリシアの重力球グラビティボールも意に介さずに突き進んでいく。


「チィ! ガラハドに加勢する。リリは結界を、アリシアは攻撃を続けてくれ!」

「うん!」

「了解」


 ガラハドの結界が何度も割れながらリリが掛け直している。

 これでは拙いと俺もガラハドに結界を張りながら血剣ブラッドソードで加勢するが、これが硬すぎて攻撃が全く通らない。


 なので俺は血銀十剣ミスリルブラッディソードを使い、それを全て纏めて超巨大な剣にして思い切りぶん回す事にした。

 これはドラゴンゾンビにぶっ刺した時に使った大剣だ。


 さすがに巨大化してるだけあって威力は1本の血剣ブラッドソードよりも遥かに大きい。

 それを思い切り脚を目掛けて叩き付けていく。


 胴体よりは細い脚なので、多少なりとも傷が付いて行くが、何本もあるので機動力は全く落ちる事は無い。

 それよりも執拗にガラハドを狙っているので、ガラハドは攻撃しつつもいなす事を優先している。

 金ゴキの攻撃はメインが口で齧る事だが、時にその巨体での体当たり、時に太い棘の付いた脚での薙ぎ払いを仕掛けてくる。


 時折、結界が間に合わなくガラハドの身体が齧られるが、齧られた部分が黒から灰色に変わって行く。

 そのすぐ後にはまた黒くなるのだが、魔力をごっそりと喰われているのが目で分かる程だ。

 しかも金ゴキはその恐るべき力、そして恐るべき速度で執拗にガラハドに迫っているので、常に危険に晒されている。


「ガラハド! なんとか離れろ! そのままだと魔力を完全に喰われるぞ!」

「何とかしとるわい! じゃがこやつの力も瞬発力も強すぎるわい!」

「リリも魔力なくなりそう!」

「幻覚を使う」


 どうにかしようとしているが、中々打開策が出せないでいる中、アリシアが幻覚を掛ける事にした。

 しかし金ゴキに幻覚魔法が届こうかという時に金ゴキの身体が一瞬光り、アリシアの幻覚魔法を弾いていた。


「レジストされた……ダメ、効かない」

「ならアリシアはリリに魔力ポーションを渡して、リリの代わりにガラハドに結界を!」


 アリシアに指示してリリを回復させる。そしてなんとかガラハドにリリとアリシアでガラハドを守るように結界を張って行くが、すぐに破壊されてしまう。

 そこで2重3重に張るように指示してなんとかガラハドは存在を保っていた。

 魔力を一瞬で喰われそうだが、なんとかガラハドも大剣でいなす事が出来ている。

 だがこのままじゃ埒が明かない。


「ちっ! ならこれでどうだ!」


 俺は巨大な血剣ブラッドソードに炎を纏わせて脚に叩き付けた。

 すると何度も叩き付けていた場所であったので、なんとか大きな傷を負わせて炎が纏い、1本の脚が熱により千切れていった。


「このまま続ける! なんとか耐えろ!」

「うむ! 了解じゃ!」


 それを見たガラハドは攻撃をせずに回避に専念する事により、結界を長持ちさせていった。

 俺は炎を纏った血剣ブラッドソードで執拗に同じ脚を狙いまくり、脚の一本一本を潰していく。


 だが脚は何本もあるので中々に機動力は落ちなかったが、脚での攻撃が少なくなったのでガラハドも回避が楽になったようだ。

 しかしリリもアリシアも魔力が厳しくなってきており、結界を張れるのが残り数回といった所か。

 俺もなんとか金ゴキのターゲットを取ろうとしているが全くこちらに向く気配がない。


 そして俺も魔力が厳しくなってきたので、一気に回復しようと魔法袋に大事に入れていたある物を取り出した。


 それはドラゴンゾンビの腐肉だ。


 何度も戦っている時にすぐに再生するのを良い事に、大量に魔法袋に取っておいたのだ。

 それを取り出し貪った。


 (やっぱり魔力が凄い回復するなぁ)


 これである程度回復出来たので、もう一掴みの腐肉を取り出すと、急に金ゴキがこちらに猛スピードで向かって来た。


 俺は不意を突かれてドラゴンゾンビの腐肉を横に捨てて血剣ブラッドソードの大剣を構えるとその横を通り過ぎていった。


 俺達4人がポカンとしていると、金ゴキは何かを貪り喰っている。


 それは俺が捨てたドラゴンゾンビの腐肉だった。

 それを異常な雰囲気で貪り喰っている。


「……なんだ? 高濃度の魔力に反応したのか?」

「かもしれんのう。所であれはなんじゃ?」


 俺の近くに来ていたガラハドがそう聞いてきた。


「あれはドラゴンゾンビの腐肉だ。喰うと一気に魔力が回復出来るから魔法袋一杯に取って来てた物だ」

「お主もようそんなに余裕があったのう」

「いや、余裕は無かったが、俺じゃケリが付けられなかったからな。だからなんとか得る物は得ようと思ってな」


 あのドラゴンゾンビは俺では勝てないと早々に悟っていた。

 だがそれで終わらせられないので、なんとか出来ないかと色々試していた。

 その一つが腐肉を抉り取りまくり持ち帰る事だ。

 それがこんな形で役に立つとはな。

 と思っていたら……


「あいつ! 再生してやがる!」

「うぬぅ……拙いのう。あの高濃度の魔力を喰らった事で再生し出したのじゃろう」

「仕方ない。またガラハドがターゲットを取ってくれ。俺が脚をなんとかする」

「それしかないじゃろう。儂じゃ中々にダメージを与えられん」


 そうしてガラハドがまた攻撃をしてターゲットを取り、俺が回復した魔力で血剣ブラッドソードに超高温の炎を纏わせて、金ゴキの脚を執拗に狙いなんとか動けなくしていく。


「動きが大分鈍くなったのう。これなら儂も攻撃出来るわい」

「ああ、こいつに通じる攻撃を編み出してくれ」

「うむ。儂も攻撃が通じないのはプライドが傷付くわい」


 俺は引き続き脚を狙い、ガラハドは頭部や胴体を攻撃していく。

 何度も何度も攻撃している内に全ての脚を斬り飛ばす事が出来た。


 完全に胴体だけになった金ゴキはギュイギュイ鳴いてるだけの存在になるが、脚に比べ胴体はあり得ない程の硬さを誇る。


 魔力が回復したアリシアも闇魔法で攻撃するが、やはり効き目はほぼ無い。

 アリシアに炎魔法を使うように言ったが、アリシアは植物の魔物なので炎を使う事は出来ないらしい。


 確かに植物に炎は天敵だよなと思いながらも今度覚えさせる事にして、次はガラハドの大剣に斬撃じゃなくハンマーで叩くような衝撃重視の魔法が付与出来ないか聞いてみた。


「儂は出来んがアリシアは出来んかのう?」

「出来ない。でも闇魔法を付与できる大剣なら、多分重力球グラビティボールの付与が出来るかもしれない」

「お、そうか。1回試してみてくれ」


 それから金ゴキが再生しそうになると俺が斬り付けて再生を阻止する。

 それで俺とリリで金ゴキを見張り、ガラハドとアリシアはガラハドの大剣に重力球グラビティボールを付与出来るように試行錯誤していった。


 しばらく試していた二人だがなんとか形に出来たようで、それを金ゴキにガラハドが全力で叩き付けた所……


「こ、こりゃなんちゅう威力じゃ……」


 バゴンっという音と共に石畳にクレーターが出来、煙があがった。

 煙が晴れて行くと金ゴキが石畳に沈み込んだ状態が見えてきて、体液を巻き散らして苦しんでいた。


「……無理!」


 それを見たアリシアがどこかに飛んで行ってしまい、俺は呆れた顔をしてしまう。

 しかしこれは絶好のチャンスなので、まさかの威力に呆然としているガラハドに声を掛け、二人で同時に攻撃を仕掛ける。


「俺が炎を纏わせて甲殻を弱らせるから最後は頼むぞ!」

「任せい!」


 俺が魔力を全力で血剣ブラッドソードの大剣に注ぎ込み、血剣ブラッドソードが魔力で淡く光る。

 それを金ゴキに腕が壊れる程の威力で叩き付け盛大に体液を巻き散らせる。

 そして炎が金ゴキ全体を包み込んだ。


 ギュイイイ!! ギュィィィイイイイイイ!!!


 動けない身体で悲痛な叫びを上げるが、それに構わずガラハドが重力球グラビティボールの纏った大剣で痛烈な一撃を放った。


「これで終いじゃ!!」


 その一撃は先ほどのガラハドの一撃よりも更に破壊力のある物で、炎の纏った甲殻や体液を巻き散らしながら、更に地面に叩き付けられて身体を真っ二つに分断していった。


 金ゴキの2つの身体は数m吹っ飛んでいき、ゴロンゴロンと回転しながら止まった。

 それから注意深く見守るがどうやらこれ以上動く事は無いようで、徐々に体が消えていった。

 それを見届けた後に少し気を抜いていると、上空から何やら光った物が降って来た。


「追加か!? ……ん? これは……」

「……金貨じゃな?」

「なんか宝石もあるよー!」


 それは金や銀などの鉱石や宝石などが降り注いでいるようだ。

 それからフロア全体が暗闇だったのに明かりがついて、その全体が見渡せるようになった。


「これは金ゴキを倒したから明かりが点いたのか?」

「どうやらそうじゃろう」

「うわー、広かったんだねやっぱり」


 リリが言う通り、やはり明かりを点けてみて分かるこの広大なフロア。

 こんな所にビッシリあれがいたかと思うと暗くて良かったと思ってしまうな。


 それにこの金ゴキを倒して降って来た物を見ると、やはりある意味ボーナスボスだったのかもしれないと思える程の金銀財宝が地面に転がっていた。


 それからは宝を全て拾ってからアリシアを探すが、上への階段の入り口まで戻ってきていたアリシアに呆れながらも、また金ゴキが沸いたら美味しいなと思いながら一旦、上の階に戻って休む事にした。


 その後は再度湧くことが分かった金ゴキを、ガラハドが重力球グラビティボールを纏った一撃でターゲットを取り、俺が炎を纏った血剣ブラッドソードで脚を斬り付け、アリシアが炎の魔法を覚えて援護、リリも炎魔法で援護という形を取った。


 ガラハドに執拗に金ゴキが迫るが、その度にガラハドの強烈な一撃で吹っ飛ばされて距離を取らされて、その間に俺が脚を斬るので動けなくなっていく。

 あとは遠距離からの炎攻撃とガラハドの一撃でなんなく倒せるようになり、安全なパターンを確立していった。


 それからは試しに戦闘中に転移を試そうとなり、俺がターゲットを取り転移する。そして襲い掛かって来るようだったらガラハドがリリ達を守るという事を実験した。

 まず俺の全力のフレアストームを金ゴキにファーストアタックとしてぶつけたが、大したダメージを与えられずに俺の結界を食い破っただけじゃなく、腕と足も喰われて死にかけてしまった。

 それで逃げるように転移を使ったが、俺が階層を移動したら金ゴキもまたノンアクティブに戻ったらしく、リリ達に危険はなかった。


 一応ガラハドがいるから大丈夫と思って転移したが、ちゃんと生きていて安堵した。


 俺が金ゴキにやられたのは転移する為に常に血結晶の魔力を感知していて、戦闘に集中出来なかった事が原因だ。

 やはり戦闘中に使うのは難しいと改めて思った。


 それからガラハドがターゲットを取り、そして俺がガラハドを抱えて転移するといった事も試したりした。

 ターゲットを取った者がいなくなれば金ゴキは誰も攻撃しなくなるのは判っていたので試したが、これは上手く行った。

 ただこれも常に転移の為に血結晶の魔力を感知してないといけないので、咄嗟に使うには向いていない。


 これからの課題はランダムでも良いから、一定距離に転移出来る事が出来るのであれば、咄嗟に使えると思うので、それが出来ないか試していきたいと思う。

 もしかしたらもう魔道具とかでそういうのがある可能性がある。

 そうすればそれをヒントに自ら転移出来るかもしれないし、もし出来なくてもその魔道具を人数分確保しとくのも悪くないだろう。

 もしそういう魔道具があったなら最優先で手に入れる事に決めた。


 それからは確立した比較的安全なパターンで金ゴキを倒して行く事で決定した。


 そしてそれに味を占めてしまったからか、俺達はアリシアが涙ながらにもう次へ行こうというまで倒し続けていた。

 そのおかげか全員が大幅にレベルが上がり、宝物も存分に手に入れられた。


 最後はアリシアは泣いていたがいいじゃないか。

 闇精霊の杖とかいうアリシアに相性ピッタリの杖も手に入ったんだから。


 まぁこれ以上はもう宝物も持てるスペースも無くなるから、そろそろ進む事にするか。

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