4話 進化先は

 戦士を食べ終えると進化のメッセージが浮かび上がった。


今度は2つの進化先が選べるようだ。


【進化条件をクリアしました。進化先を選べます。どちらを選びますか?】


骸骨剣士ソードスケルトン ←

腐屍体ゾンビ

小腐屍体ミニゾンビ



 どうやら骸骨スケルトンの上位と肉のあるゾンビに進化可能のようだ。小腐屍体ミニゾンビ? 論外だ。

 しかしこれは悩む。

 元人間だからか、肉の体が欲しい。

 きっとゾンビの先に綺麗な体が出てくると思う。

 だが今は人間から奪った切れ味鋭い剣を手に入れてしまった。だから骸骨剣士ソードスケルトンも魅力だ。

 だが今腐屍体ゾンビを逃すと肉の体が手に入らなくなるかもしれない。

 どうする? どうしたら良い?


 しばらく悩むが、今の思いに素直に従うことにした。

 冒険者共を装備をある程度回収して、他の男と女の肉も少しだが魔法袋に詰めた。


 そしてまた以前の部屋まで戻り進化をすることにする。



 またここに舞い戻り、再度横になり深化を開始する。

 前回と同じように徐々に意識が遠くなりブラックアウトした。




 どのくらい経ったか、ゆっくりと目が覚めた。


 体をお越し地面を踏み締める。

 その体は進化前とそんなに変わらない。

 だが骨が少しだけ太く丈夫になっただろうか。


 そう、俺は骸骨剣士ソードスケルトンを選んだのだ。

 素直に戦士から奪ったこの剣を存分に楽しみたいと思ったのだ。


 だが肉の体も諦められない。なので遊撃の男と魔法使いの女の体の一部の肉を剥いで魔法袋に入れて持ってきた。

 いつかこいつらを喰って肉の体を手に入れてやる。

 だから今は骸骨スケルトンでいいと思った。


 しかし見た目はほぼ変わってなくてショックだ。


 仕方ないと床に置いていた剣と盾を持つと、一瞬光った気がして、何やら妙にしっくり来る感じがした。

 そこで剣と盾を使い感触を確かめてると、これは凄いと感じた。


 骸骨スケルトンの時に振っていた剣の速度や体の動きとは、次元が違う動きなのだ。

 それは鋭く、それでいて滑らかに。

 まるで剣で舞っているかのように動ける。

 これは骸骨剣士ソードスケルトンになった事から、種族特性の「剣技の極意・極小」が増えたことが要因だろう。

 剣を使うと補正が掛かり真価を発揮出来るもののようだ。


 これは骸骨剣士ソードスケルトンを選んで大正解だと、本能に従った自分を褒めたい。


 それからもう少しだけ剣の感触を楽しんでから、次はこの剣の獲物を探すように歩き出した。


 今なら蟻が3匹くらい出ても負ける気がしない。

 なので今度はもう少し奥まで行ってみる事にした。


 すると少しして、危険すぎて近付けない場所がある所へ来た。

 ここはベビースケルトンの時に来たが、危険な蔓の植物が居る所だ。

 気付かず来てしまい左腕を1本持ってかれた。

 何故それだけで助かったかと言うと、弱すぎてあっさり左腕が取れたから、体を持って行かれずに済んだからだ。

 もしスケルトンのままだったら、もしかしたらそのまま拘束されて死んでいたかもしれない。


 なので今日はそのリベンジだ。


 俺は増えた魔力を身体強化に多めに回し、剣を握り締めて向かう。


 するとすぐに動くものを捉えた。

 前は気付かなかったが、今ならはっきり分かる。

 この蔓はやはり魔物だ。魔力をそこそこ持っていやがる。

 さあリベンジの時だ。


 俺は怯まずに足を踏み出す。

 すぐに反応はあった。

 蔓はスルスルと地面を這いながら近付いてくる。


 そして俺に触れる瞬間に俺は跳躍した。

 跳躍そのままに壁に繁っていた蔓の束を剣で切り付ける。

 切られた蔓は動かなくなるが、その大元が動き出した。


 それは地面がボコボコと盛り上がり太めの蔓が何本も出てきた。

 俺は冷静にそれらを1本1本斬り付け対処していく。


「カタカタッカタッ」


 話せないのに自然と笑ってしまう。

俺は心で歓喜しながら舞うように蔓を切断していく。

 骸骨剣士ソードスケルトンになったからか、剣が自分の一部のように感じられる。

 それにこの剣はやはり素晴らしい切れ味だ。

 何故あの程度の冒険者がこんな素晴らしい剣を持っていたのか不思議だ。

 何か理由があるのか、それともこの切れ味がこの世界では普通なのか。

 まあいい、今はこの舞いを楽しむとしよう。


 思った以上に蔓が出てくる。

 大小様々な大きさの蔓がどんどん出てくる。

 もう30本は出て来ただろうか。それらを全ての一刀両断していく。


 すると背後にボゴッと一際大きな音がした。

 すぐさま近くに迫った蔓を断ち切り、後ろを振り向く。

 するとかなり太い蔓が切れて短くなった蔓を、振り回しながら迫る。


 俺はそれが本体だとすぐ分かり、この分厚い蔓を一発で切り裂いたらどれだけ気持ちが良いだろうと興奮した。


 俺は全身に身体強化を更に強め、それでいて真っ二つに出来る一瞬を待った。


 太い故か動きが遅い、かといって規則性のない動きで暴れる蔓。

 細すぎて影響のない蔓が俺に絡まるが無視して一瞬を待つ。


 剣の範囲に入り、全てを切断出来る時を、気持ちが逸る≪はやる≫のを我慢して、じっと耐える。


 蔓なのに表現のしようのない奇声を上げながら、俺に迫る。

 それに少しだけ恐怖を覚えるが、それを切り裂く時の喜びを持って押さえ付ける。


 来た! 今だ!


 俺は全神経を剣を振り抜くことに集中して、思い切り、それでいて雑にならないように丁寧に持っていた剣を振り抜く。


 確かな手応えと共に煩かった蔓の魔物が徐々に静かになっていく。


 目の前には綺麗に2つ上下に別れた蔓の魔物がいた。


 会心の振り抜きだった。威力、タイミング共にこれ以上ない程の出来だ。


 俺は更にと本体の太い蔓を今度は千切りせんぎりのように何度か切っていく。

 やはり素晴らしい切れ味だ。

 この剣を大事に使うと心に決め、俺の相棒にした。


 それから俺は警戒しながら不意打ちだけは避けるように、且つこの全能感を隠すことなく、出会った魔物全てを切り裂いていく。


 たまに強い魔物も居た。

 腐屍体ゾンビに似ている屍喰鬼グールであったり、犬腐屍体ゾンビドッグであろう魔物が強かった。

 こいつらは見た目に反してとても素早い。それでいて長年ここに居る魔物を殺してきたのか、襲い方が洗練されていて、とても手強かった。


 だが俺も戦闘しながらも観察をし、剣と盾を巧みに操り少しづつ傷を負わせ屠っていく。


 鑑定スキルが無いから魔物の名前も分からず、勝手に名付けたりしながら、見かける敵を見つけ次第、正面から切り裂く。


 どれだけの時が経ったか、ほぼ暗闇の洞窟、それでいて寝なくても良い体。

 肉体が無いからか、疲れもなく、少し動きが鈍るときもあったが、魔物を倒すとそれも回復する。


 恐らくだが魔力が関係してるのではと推測した。

 ステータスが見えれば良いが、今の所はどうやっても見ることが出来ない。

 だからか自分の、そして敵の魔力が集中すれば薄っすらとだが、見えるようになってきた。


 それで殺した魔物を見ていると、ほんの少しだけだが死んだ魔物の体から魔力が俺の骨に吸収されているのが見て取れた。


 それがきっと少しづつ蓄積しレベルアップに繋がり、そして進化出来るのだろうと推測した。


 ならば迷う必要はない。これからも見付けた魔物を切り裂いていけば、きっと俺は肉体を手に入れる事が出来る。

 そして誰にも負けないくらい強くなれると信じて、これからもこの相棒と共に切り裂いて行こう。


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