第23話 情報屋

片目のジャック「野郎ども!いくぞ!」

ジャックは低くて威圧感のある声で手下どもの士気を高めた。手下がジャックの頭に真っ黒なバンダナを巻くとジャックは控室のワープスポットの上に立った。


片目のジャックのチームは次々にワープして競技場に登場していくと観客たちはジャックの姿を見て驚きの声を上げた。右手がまるごと武器になっている傭兵など今まで見たことがなかった。


観客「なんだ、あの右目に眼帯をした男の右腕は・・・。あれは武器なのか?」


西陣側にジャックのチームが登場し、東陣には対戦相手のチームのメンバーが次々に登場しはじめた。司会者が両チームのメンバーを紹介していく。それを酒場にいる傭兵たちは観ていた。片目のジャックの強さがどれほどのものなのかみんな興味津々である。


酒場にいるポテトが言った。

ポテト「片目のジャックの右腕は競技場で許可されたものなのかな?」


シュガー「そんなわけないでしょう。あれがウワサに聞く闇改造っていうやつですよ。正規ルートの武器ではないので現実の世界ではカプセルもVR機器もすべて闇改造しているのでしょうね。どんな施設を使っているのか考えただけでも恐ろしいですよ」


ミール「ポテトも闇改造してエイムアシストをおでこにつけてもらいなさいよ。レーザーポインターがおでこから出たら弾を外さないでしょ?」


こういうときのミールは本当に悪女に見える。


マックがいつもの席に座っているとそこへベレー帽を被った怪しい男が近づいてくる。ベレー帽の男は、椅子に座ったマックに耳打ちして、マックは左腕を出してベレー帽の男と左腕を重ねた。仮想通貨でいくらかマックはベレー帽の男に支払ったようだ。支払いと情報の共有が一瞬で行われた。ベレー帽の男はマックが必要なときに呼び出す情報屋である。


マックがおもむろに話はじめた。

マック「片目のジャックは2030年以降に始まったVirtual Stadiumの初期のゲームのときからやっていたプレイヤーのようだな。それが2031年には物資を賭けて戦うようになり、勝率は高く多くの物資を手にしていたようだ」


オム「しかし、オレたちがVirtual Stadiumに参加するようになってから片目のジャックを見かけたことはなかったよな?」


マック「そうだ。情報屋から受け取った情報によると敗戦した国側に寝返ったジャックは母国から送り込まれた精鋭部隊によって体をバラされたらしい。片目を失い、右腕を失い2035年に死んでいる」


チームメイトたちが顔を見合わせた。マックの話がにわかに信じられない。


ミール「じゃあアイツは何?誰なの?」

マック「あれは仮想世界のジャックだ。本体はたぶん存在しない」

シュガー「ってことは・・・・。AIということになりますね」

オム「いや、本体は存在するだろ。一旦、死んだことにして人生リセットしたんじゃないの?

お嬢様チームに絡んでるときにって言ってたぜ」

ポテト「どちらにしても気味が悪いな」


シュガー「バラバラに体をバラされたから闇改造で復活した・・・。なるほどです」


マック「そういうことだな。テクノロジーがある国で一命を取りとめたんだろうな。競技の勝者は物資が得られる。だから、あんな奴でも敗戦国で資源がなく物資が欲しい国としては生かしておく意味があったということになるな」


オム「それだけじゃない気がするぜ。どうせ死にぞこないだから闇改造がどれぐらい通用するのか試したかったんじゃないか?だから、トーナメントにわざわざ参加したんだ」


オムの言葉には説得力があった。彼の野生の勘はいつも話の核心をついている。ハンドガンを撃つときにエイムにブレがないのと同じで真実を突き止めるときも核心に迫り考えにブレがない。


2035年に死んだことになった片目のジャックは2042年に復活した。片目と右手を失い死にかけていたがジャックが寝返った側の敗戦国の技術力で生き延びていた。ジャックがたらし込んだ博士がジャックを闇改造して生還させたのだ。

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