第46話 移植手術を受ける元受刑者たち

秘密基地で死刑が確定していた元受刑者たちが研究所にある手術室の前に集められた。ついに電脳容器サイバーボトルに脳を移植するときが来たのだ。

ホルムアルデヒドの水溶液を希釈した液体を電脳容器サイバーボトルに充填し、元受刑者たちを1人ずつ手術室に呼び出して手術台の上に仰向けに寝かせる。そして、全身麻酔を打ち、体が麻痺して動かなくなったところで頭部の皮膚をメスで切り取って頭蓋骨に小型の回転ノコギリで切れ目を入れていく。最後はくるみ割り人形のようにロボットアームで左右から頭蓋骨を掴んで真っ二つに割る。


取り出した脳を素早く電脳容器サイバーボトルに入れてフタをしたら完成である。容器のフタにはたくさんのコネクタが付いていて、コネクタは視覚、聴覚、臭覚、味覚、思考にそれぞれ感覚が分かれている。


電脳容器サイバーボトルをパソコンに繋いで仮想世界にアクセスすれば、仮想世界で自由に動き回るアバターになり、人間だったころの感覚はそのままである。


遠隔型戦闘用アンドロイド(E-01H)の改良版である電脳容器サイバーボトル搭載型の戦闘用アンドロイド(E-01H)に繋げば、元受刑者たちはイーワンを自分の意のままに動かすことが可能なのだ。


手術室で担当医が次々に元受刑者の脳を取り出して、電脳容器サイバーボトルに脳を入れていく。必要がなくなった元受刑者の体は手術台から荷台に乗せ替えると荷台はそのまま焼却炉まで自動で動き出して焼却炉の中に入って元受刑者の体を焼却処分する。荷台が焼却炉から出て来ると元受刑者の骨だけが乗った状態になっているのだ。大きな鉄板の前で荷台の天板が起き上がり骨が滑り落ちていく。滑り落ちた骨はプレス機で粉々に砕かれるという一連の流れである。それを一日中、繰り返す。


手術室に入ってくる元受刑者の行動は素行が悪くてどこか一般人ではない独特な雰囲気を醸し出していた。手術台に乗る前、乗った後も担当医の助手をしている女性のほうをチラチラ見ながらお尻を触ったり、胸を覗き込もうとする。


今から手術台の上で自分の頭が割られるというのにヘラヘラ笑っている者もいた。電脳容器サイバーボトルに脳が収まった元受刑者は、電脳容器サイバーボトルのコネクタをパソコンに繋ぎ、秘密基地にいる他の研究者が作った”仮想世界”へ飛ばされるのだった。


元受刑者Aは世界中がゾンビだらけになった仮想世界に飛ばされ、ひたすら武器を使ってゾンビを倒し続けている。

元受刑者Bはビルの中で黒いスーツを着た男たちと銃を撃ち合っている。

元受刑者Cは地球外生命体と戦っていた。


戦闘シュミレーションゲームで経験を積んでジャックの討伐に行く予定である。

戦闘用アンドロイド(E-01H)の改良はスティーブ博士の設計図通りにエンジニアたちが改良を施した。完成しているアンドロイドの改良なのでそれほど時間はかからなかった。


ジャックはエルサルバトルの街外れの森に潜伏したままである。AI政府が送り込んだ遠隔型戦闘用アンドロイド(E-01H)や偵察機のドローンはことごとく叩き壊されていた。叩き壊したイーワンのボディや武器、偵察機のドローンは川沿いにある洞窟にジャックによって集められ、それらのイーワンのボディはジャックのスペアボディとして大切に保管されていた。偵察機のドローンはジャックの意思で動かせるように改良を施し、AI政府が次にジャックを倒すために刺客を送り込んで来たときに偵察機のドローンを使って、敵の動きを偵察するつもりである。


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