第45話 秘密基地の研究者

スティーブ博士は朝から晩まで秘密基地にいるエンジニアに指示を出しながら電脳容器サイバーボトルの製作をしていた。


迷いや葛藤はあったが作業に取りかかれば、すべてを忘れて作業に集中しているのだった。スティーブ博士は研究者の顔になり、研究の成果を見せるときが来たと心の躍動感を自分で感じるほどだった。


電脳容器サイバーボトルの視覚情報を研究所のモニターで共有できるように改良を施し、第七世代セブンジェネレーションの通信が届く範囲内でしか活動できないように制限を付け加えた。


夜になって作業が終わるとエンジニアたちと一緒に博士とオリビアは食事を摂っていた。研究所を出て、居住区に移動する。同じような毎日を過ごし建物内でしか行動していない博士は外の景色さえも見ていないのだ。


居住区の自分たちの部屋に戻った博士とオリビアは交代でシャワーを浴びると寝室のベッドの上で横になった。博士とオリビアには異性としての恋愛感情はなく、お互いにあるのは使命だけである。


スティーブ博士はベッドに横になるとすぐにウトウトと眠りはじめた。朝から晩までエンジニアに指示を出して電脳容器サイバーボトルの製作をしているので疲れが溜まっていたのだ。


ベッドに横になった状態でも明日の作業でやるべき工程を考え、どうすれば効率よく作業が進められるかをシュミレーションしながら眠るのがスティーブ博士の日課だった。今日も何も変わらない同じ日常である。しかし、スティーブ博士が浅い眠りの中で騒がしい音に不快感を感じてゆっくりと目を開けると・・・・。


そこには別の研究で秘密基地に滞在していた博士の姿があった。オリビアに夜這いをかけたようだ。スティーブ博士が驚いて起き上がろうとしたが既にオリビアに手と首を掴まれてクローゼットに背中を打ちつけられた研究者は震え上がっていた。


スティーブ博士「おい、誰なんだ?君は?名前を聞かせてもらおうか」


研究者「わ・・・私の名前は、アーサーだ。わかった。もう何もしない。許してくれ」


オリビアは掴んでいる首と手を緩めなかった。アーサーの苦痛に歪んでいる顔を見てスティーブ博士はため息をつきながらオリビアに手を放すように言った。


スティーブ博士「アーサー、悪いが君がやったことは第七等級セブンスオフィサーに伝えることになる。処分があることを覚悟しといてくれ」


アーサーはオリビアが手を放すと逃げるように部屋を出て行った。


スティーブ博士「オリビア、君はエージェントとしても素晴らしいが見た目も美しい。きっと他の研究者たちは君に興味があるんだろうね。この秘密基地には女性が少ない。それも原因の一つなんだろう」


スティーブ博士は部屋の床に転がった枕やアーサーが落としたカメラを拾って片付けながらオリビアに語りかけた。


オリビア「私は博士の監視・管理を上層部に命じられているのです。助手としてここに滞在します」


スティーブ博士「ああ、わかっている。まぁ紅茶でも飲もうじゃないか。私もこんな強い助手がそばにいてくれたら心強いよ」


次の日、スティーブ博士が第七等級セブンスオフィサーに昨夜のことを伝えると「対処します」と一言だけ云って第七等級セブンスオフィサーは去って行った。

その日からアーサーを見た者はいなかった・・・。







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