第40話 Genesis
オムたちが4回戦まで勝ち残ったので米国の田舎町は大量の物資で潤った。
1回戦で3倍の物資、2回戦で6倍の物資、3回戦で9倍の物資が手に入り、そして、4回戦に勝てば12倍の物資が手に入る。
もしトーナメントで優勝すればAランクからAAランクへの移行が認められる。話し合いで選ぶことが可能である。どんどん可能性と夢が広がっていた。
・Aランク→町、村への物資の供給
・AAランク→州、県、地域一帯の物資の供給
・AAAランク→国全体への物資の供給
スポンサーの数、物資の量、チームの数が増えていく。スケールが大きくなっていくので傭兵たちにとって競技で上のランクを目指すのは1つの目標になっていた。
戦っている傭兵たちの国はバラバラだが物資が供給されるのは自分たちのチームを応援してくれるスポンサーとなった地域である。
2042年、今となっては農作物を育てるのもフルオートメーションで稼働する機械となった。管理しているのはAI(人工知能)である。
果物を収穫するために活躍しているのはアンドロイドやロボットアーム、ドローンとなっている。
世界の人口が大幅に減少したのと反比例して、農作物の育成は盛んになっていった。足りなかった食糧はいつしか豊富に品揃えされるようになった。
2030年に第三次世界大戦の終戦を迎えてから復興が始まり、当時のテクノロジーを駆使して人員不足で足りなかった産業へ積極的に機械やAIを導入していったのだ。その結果、人類は働く必要がなくなり、自由を手にした。
人が商売をして利益がたくさん出れば販路を拡大していく。しかし、それでは地球の資源が枯渇してしまうということで商業には多くの制約が課せられた。
世界政府は、地球上にある資源を守るために人類を少しずつ仮想世界へ誘導していき、それは成功することになった。10年の歳月を費やしたこの計画によって、仮想世界へ誘導された人々はついに1日の大半を仮想世界で過ごすようになったのだ。
それが当たり前になるとやがて人類の活動エネルギーは縮小して、地球の環境汚染が止まり、自然界に生息する動植物は減少から増加へと転じる結果となった。
世界政府の中枢を担うAI政府の予想通りの展開となり、地上を支配するAIと平民だけの世界になりつつあった。
これが「Virtual World」の「Genesis」と位置づけられた。
現実の世界では、元の世界を取り戻そうとする革命派も少なからず存在している。AI政府が遠隔型戦闘用アンドロイド(E-01H)を使って制圧することがしばしば見受けられたがスティーブ博士が手掛けたジャック専用のイーワンはAI政府でも手を焼く代物だった。
ジャックを搭載したイーワン(E-01H)に足を撃ち抜かれたと証言するスティーブ博士の言葉を信じ、そして、博士が町のために貢献した研究の実績を評価して、AI政府は博士の協力を得ることにした。
スティーブ博士は保身のためにジャックを裏切り、自分が作ったジャック専用のイーワン(E-01H)を手放す覚悟を決めた。
エルサルバドルの森に身を隠したジャックは擬態を駆使しながら次々に現れる遠隔型戦闘用アンドロイド(E-01H)を倒して武器と弾丸を調達しているのだった。
森にはトラップがたくさん仕掛けてあるのでジャックを倒すことがより困難になっていた。
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