第41話 AI政府の意向

世界政府の中枢を担うAI政府は、世界中の重要機関に働きかけていた。200年以上前から、この地上を支配する貴族が一部その重要機関に入っているというウワサである。


スティーブ博士はAI政府の指示に従って米国の軍事開発を担当している秘密基地へ向かうことになった。何をするのか内容は一切聞かされていない博士は身震いしながらも「自分のためだ」と言い聞かせているのだった。


病院で手術を受けて右足の甲に空いた穴は塞がったが、まだ足の骨は何本か骨折したままである。右足にギブスをはめて車イス生活を余儀なくされた。


スティーブ博士は、電動の車イスに座ったままAI政府が用意した大型のドローンの護送機に乗り込むことになった。1人の人間を目的地に運ぶにしてはかなり大掛かりである。乗組員にサポートされながら博士が大型のドローンに乗り込んでいくと大型のドローンの輸送機のプロペラが回り、まっすぐ真上に上昇し高度を上げはじめた。上空で機体の向きを変えて秘密基地のほうに向かって飛んでいくのであった。


大型のドローンには何人か乗組員が乗っているようだ。スティーブ博士をサポートしている乗組員が電動の車イスを床に固定して、座席の前に机を置きノートパソコンを用意した。手際よく作業を終えると乗組員は前方にあるドアを開けて立ち去っていった。


鉄骨がむき出しになった味気ない大きな空間にスティーブ博士はひとりである。ホッとしたのかスティーブ博士は、ため息をつき、落ち着きを取り戻した。しばらくすると乗組員が立ち去っていった前方のドアが開き、今度はビジネススーツを着たブロンドヘアの若くてキレイな女性がやってきた。


ブロンドヘアの女性「はじめまして、スティーブ博士。私はオリビアです。これからあなたの助手を務めさせていただきます」


オリビアは右手を差し出して、スティーブ博士と握手をすると優しい眼差しで微笑んだ。


スティーブ博士「助手になってくれるのかい?ありがとう。今はとくに何も君に出せる指示はないよ」


オリビア「ええ、わかりました。博士に私の名刺を渡しておきますので何か御用があれば、その携帯の番号におかけください」


スティーブ博士「ああ、助かるよ」


この後、大型のドローンの輸送機は1時間ほどのフライトで秘密基地に辿り着いた。


目印も何もない荒野の地面が開いて、四角に切り取ったような穴が空いた。大型のドローンはその四角い穴の下のほうへ降りていく。秘密基地は荒野の地下に作られていたのだ。小さな窓から外の景色を眺めていたスティーブ博士が眉をひそめた。


スティーブ博士「こいつは驚いた。米軍の秘密基地は荒野の地下に作られていたのか・・・・」


第七世代セブンジェネレーションの通信技術を持ってしても、この地下にある秘密基地には電波は届かないのだ。あらゆる国のスパイによる工作活動を遮断して完全に外部からの通信が隔離できる体制が作られていた。


あらゆる電波を電磁遮断器シールドで遮断しているのだ。ハッキングも妨害電波も盗聴もすべてを遮断する電磁遮断器シールドによって軍事機密を守っているのである。


電線類はすべて地中のトンネルに張り巡らされ、光ケーブルもトンネルの中を通っていた。そして、この通信用の光ケーブルは厳重なセキュリティが施されているのだった。


ローカルエリアネットワークで軍基地と秘密基地の通信は繋がっているが秘密基地がオンラインになるのは1日に数時間程度である。

秘密基地の実質トップである第一等級ファーストオフィサーの権限でオンラインにすることが許されていた。


大型のドローンの輸送機が秘密基地の駐留ちゅうりゅうスペースに機体を置いた。乗組員がスティーブ博士の前を歩き、博士を誘導する。その後ろには博士の助手を務めるオリビアがついて歩いていく。


乗組員が秘密基地にいる第七等級セブンスオフィサーに敬礼をして、スティーブ博士の案内を譲り渡した。


第七等級セブンスオフィサー「はじめまして、スティーブ博士。ここからは私がご案内致しましょう。ここへ来ていただいた理由は、博士が人類にとって重要な人物であるからです。これからのご活躍に期待しています」


スティーブ博士「どうも、よろしく。若いのに立派な青年だ。私が人類の役に立てるのなら嬉しいよ。そんな大したことはできないが老い先も短い。せいぜいがんばってみるよ」


第七等級セブンスオフィサーに案内され、スティーブ博士はオリビアと共に秘密基地の中へ入っていった。

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