第35話 推論
AIによって現実の世界に引き戻されたジャックが叫んだ。
ジャック「ウォォォォー!」
右手を構えて施設にあるカプセルに狙いを定めて、ミサイルを撃ち放つ!
ドゥーン!という凄まじい爆発音と共にカプセルは粉々に吹き飛んだ。ジャックはアンドロイドの自分の右手を確認して見ると、そこには仮想世界で不正改造してつけていたロケットランチャーがついている。
中心部からロケット弾が発射でき、
ゆっくりとジャックは歩きはじめた。施設にあるカプセルを破壊したので警報ブザーが鳴り響いている。炎と煙が立ち込めて研究所の天井にあるスプリンクラーが煙に反応して水を放出しはじめた。
ジャックが搭載されたアンドロイドは身長が2mある。このアンドロイドのボディはカーボンが使用されていて非常に軽い。そして、硬い。
地下の研究所から出るために扉のほうへ向うと全身にタトゥーが入った若者2人がやってきた。銃を構えている。
モヒカン「なんでE-01Hが動いているんだ?」
ドラゴン「わからん。あれは博士が戦場から持ち帰って改造したやつだろ?」
モヒカン「そうだ。しかし、米軍の本拠地から遠隔操作する機能は外しているはずだぞ」
全身にタトゥーが入った若者2人は、仮想世界でジャックのチームにいるモヒカンとドラゴンだった。
ジャックがアンドロイドの音声で話しかける。
ジャック「お前ら誰だ?」
モヒカン「うぉ!しゃべったぞ!アンドロイドにAIを搭載しているのか?」
ドラゴン「いや、わからん。ここは一旦、
モヒカンとドラゴンは上の階へ逃げていった。その後をジャックが追いかける。1階に上がって辺りを見渡すと通路がある。そのままジャックは1階の通路を抜けて、外へ出ていった。
モヒカンは、研究所にある戦闘用のアンドロイドが動き出したことを博士に報告した。
モヒカン「博士、E-01Hが動き出してるがあれは博士が動かしているのか?」
スティーブ博士「なに!?アンドロイドが動いてるだと・・・。一体、誰がジャックをアンドロイドに搭載したんだ?」
モヒカン「ええっ!?あれはジャックなのか?カプセルにミサイルを撃ち込んでいたが?」
スティーブ博士「これはマズイな・・・。お前らは無事か?あのアンドロイドには近づくな」
モヒカン「わかった。停電の次はアンドロイドかよ。ついてないぜ」
スティーブ博士は推論した。
エルサルバドルに大きな地震が来て、各地域で停電が起きた。停電が起きると同時に施設は補助電力に切り替わり、バッテリー電力で電気をまかなっている。
このときにAIが仮想現実で疑似地球を作り出すだけの電気の容量が足りなかったということだ。いや、電気はあったかもしれないが省エネルギーモードに切り替わったのだ。
「手動」と「自動」のモードで確か「自動」を選んでいた。さらにジャック専用のカプセルにもAIが搭載されている。ロボットアームもある。
きっと何かの不具合でジャックの脳波が異常値にまで達したのだ。ジャック専用のカプセルのAIは単独で判断する。もし判断がつかない場合は、メインコンピューターにアクセスしているはずだ。
メインコンピューターへアクセスしたAIがジャックの生存を最優先して選んだ選択に問題があったのかもしれない。
スティーブ博士は、腕を組んで考え込んだ。
(これは非常にマズイ。よりによって戦闘用のアンドロイドにAIはジャックを搭載してしまったのだ。エルサルバドルの町が戦場に変わってしまう。
米軍が開発したあのアンドロイドはプルトニウムの力で電気を作り出している。外部から電気を供給しなくても30年は動き続けるぞ・・・。
何か手を打たねばならん。)
研究所がある施設から抜け出して、町へ出たジャックが
指図すればなんでもいうことを聞く側近のミザリーも現実の世界では存在していないのだ。ジャックに寄り添って、いつもニコニコ笑顔でそばにいる女たちも現実ではなかったということだ。
ジャック「なんだよ、博士・・・・。10年前にオレは死んでたんじゃないのか?」
ジャックは独り言をつぶやいた。そして、自分が脳だけの存在になっていることを知り、絶望した。
エルサルバドルの町は大きな地震の後、町の住人たちはパニック状態になっている。警察や軍人たちが暴徒と化した市民の制圧に取り掛かる。
非常時に暴れだした貧しい人々と警察や軍人が対立してどちらも譲らない。そのたくさんの人の群れのほうへ向かって一体のアンドロイドが近づいていく・・・・。
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