Virtual Stadium

hiroumi

第1話 仮想世界の中にある競技場

晴れ渡る空の下、傭兵たちがスタートラインで身構えて開始の警笛が鳴るのを今か今かと待っていた。


東陣と西陣のスタートラインには武器を持った5人の傭兵たちが横一列に並んでいつでも走り出せる状態でスタンバイしているのだった。


東陣はオレンジ色の迷彩服を着ていて、西陣は青色の迷彩服を着ている。

色やがらはランダムに選ばれ、チームの識別をするためのものだ。


チームの構成は5人で武器はメイン武器、サブ武器、スペシャルウエポンを組み合わせて戦う。

メイン武器の標準のハンドガンでたまを10発当てれば敵のライフがゼロになって傭兵が消える。

サブウエポンの手りゅう弾は2発当てれば敵のライフがゼロになって傭兵が消える。

スペシャルウエポンの追跡ミサイルであれば1発でライフはゼロになり敵の傭兵が消えるのだ。時間内に敵の傭兵を多く減らしたほうが勝者となる。


銃の種類は多種多様あり、一発の威力が強い武器からマシンガンのように連続で弾が発射される武器まで揃っている。

使うメイン武器によって相手が倒れる弾数や射程距離は異なるので注意が必要だ。

尚、防具を強化すれば動きは遅くなるが弾丸や手りゅう弾の防御特性が強くなる。


戦う傭兵たちの足にはインラインスケートが装着されている。

この競技用のスケート靴にはスイッチがついていて、それを押すと一定時間ジェット噴射でハイスピードで移動したり障害物を飛び越えることができるようになっているのだ。


ここは仮想世界なので傭兵たちの姿は”仮の姿”である。


いや、仮の姿というよりはこのアバターこそが本来の自分の姿を映し出した鏡なのかもしれない。

欲望を映し出しているのか、自分に似たキャラクターを作っているのかはプレイヤー次第である。


アバターは自由に選ぶことができるのでプレイヤーの性別が同じとは限らない。実際は中年のメガネをかけたおじさんかもしれないが傭兵のアバターは若くて可愛い女の子ということがよくある。


女性のキャラクターにはテンプテーションの能力が備わっている。

残りのライフが5割以下になると至近距離で対面した敵に”誘惑する”の技が使えるようになる。

テンプテーションにかけられた敵は動きがスローモーションになり、技をかけた女性キャラクターを倒すか、距離をとるか、もしくは一定時間が過ぎるのを待たないと技は解けない。


女性キャラクターだけが持つ特性が欲しくてアバターで女性を選ぶプレイヤーもいる。戦略の1つと捉えているようだ。


女性同士の場合は、テンプテーションの能力を使っても相手には通じない。


この仮想世界にある競技場は2030年以降に作られた。


クラウドコンピューターの大手企業とゲーム会社の共同開発によって、世界中の人々がインターネットを通じてオンラインで対戦できる戦闘シュミレーションゲームとして登場した。

当時はただのゲームとして登場していたのだが、現実世界では食糧不足や資源の枯渇が深刻な問題になりつつあり、資本主義では経済は回らなくなっていたので世界でも人気が高いこのゲームが”人類の戦場”に選ばれた。


仮想世界にある競技場にはたくさんのユーザーが集まり、プレイヤーたちを応援する。


この競技場で戦い、勝利したチームは物資を得ることができ、勝利したチームとチームが所属する地域に配られる。


2020年以降にあった第三次世界大戦時に人類の多くが犠牲になり、全人類でも30億人ほどに減少した。

資本主義経済が原因で戦争が起きたので、人類が選んだ次の時代のリーダーは人工知能である。AIによる国の統制を実現させることによって政治家は不要になった。

労働はロボットに任せ、工場はフルオートメーションになり、すべてのシステムを統括しているのは人工知能を持つハイスペックなパソコンである。

人が立ち入る隙はないようだ。


人々は労働を手放し、VRゴーグルをつけて一日を過ごす。これが2040年の常識である。


仮想世界の競技場で戦いに勝てば、現実世界で物資が得られる。人々はこの仮想世界の中にある競技場に熱狂していくのであった。


物資を求めた傭兵たちがVirtual Stadiumに世界中から集まって来ていた。

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