第28話 一致団結
片目のジャックが闇改造されている事実をプレイヤーたちが訴えるためにゲーム会社に電話をかけて問い合わせたが「問い合わせの窓口が違います」というAIの返事しか返って来なかった。プレイヤーたちは不満を募らせながらも次にできる対策を考えていた。公平な戦いができないのであればVirtual Stadiumの信用に関わる大問題になる可能性があるのだ。ここで食い止めなければならない。
もし片目のジャックのような不正がまかり通るのであれば、みんな闇改造に手を染めるであろう。結局そういった問題が長引けば現実の世界でまた戦争になるのかもしれない。
食料や水、その他の物資を得るための戦いなので、それが不正の温床になるとすれば町や村だけではなく大都市や国レベルでもその問題を取り上げて訴える必要がある。傭兵たちだけではなくスポンサーになっている町や村も動きはじめていた。そして、デジタルニュース速報でもジャックの闇改造のことが流れはじめている。
片目のジャックのチームが3回戦へ進んだので次はお嬢様チームと対戦になる。ジャックとレモンの交換条件は酒場のバーカウンターのAIによって成立してしまっているので取り消すことができない。ただし両者が揃って取り消しを申し出た場合は、交換条件はキャンセルとして処理される。その場合はペナルティはどちらにも
ジャックとモーゼの競技の戦いの後、酒場でお嬢様チームを取り囲むように傭兵たちが集まり団結していた。トーナメントの3回戦が始まるまでまだ8時間ほどの時間がある。その間にジャックの闇改造を取り上げてゲーム会社へ直接、足を運んで交渉してみる価値はありそうだ。
ゲーム会社への訪問は、2回戦でジャックと戦ったモーゼたちのチームが担当することになった。現実の世界でゲーム会社に近いところに住んでいるプレイヤーはモーゼとマリアとハントである。
3人とも住んでいる施設は街の中にあり、大きなスポンサーがついているため、同じ街に住んでいることはお互いに知っていた。今回のジャックの右手の闇改造を訴えるために3人はどこかで落ち合ってゲーム会社に行くことになった。
それ以外の方法で何かいいアイデアはないか考えて、傭兵たちが沈黙していると戦略家のモルトがカウンター席から声を発した。
モルト「残念だけどゲーム会社に行ってもそんなものは知らないと門前払いをされるだけだと思うぜ。既にゲーム会社のスタッフにはチップを払っているだろうさ。もしくは物資をやる約束をしているのかもな」
ミルク「じゃあどうすればジャックを止められるの?あんな反則野郎と戦っても私達に勝ち目はないわ。他に何か方法があるのかしら?モルトさん」
モルト「方法は他にもある。しかし、あまり現実的ではないだろうな」
レモン「一応、参考までにお話を聴かせていただけるかしら」
モルト「わかった。もしできることがあるとすればジャックを操作しているプレイヤーと闇改造を
ミルク「あんまり現実的じゃないわね」
そう言いながら、ミルクは肩をすくめた。
モルト「ジャックはエルサルバドルの辺りに住んでいるという情報は既にある。あとはその近くに住んでいるプレイヤーたちがジャックが使う施設やカプセルを破壊しに行く勇気があるかないかだけだ」
レモン「私達は住んでいる国も場所もぜんぜん違うからムリね」
傭兵たちは顔を見合わせた。ジャックが住んでいる場所に近い者はいないのだろうか・・・?
シュガー「施設やカプセルを壊さなくても、もし闇改造された右手だけを一時的に止めることができれば勝機はあるだろうね」
忍丸「我らも加勢したいところだが住んでいる場所が全く違うので8時間ではそこに辿り着けぬ。力が及ばず、すまん」
マック「よりによってエルサルバドルか・・・。現実の世界は仮想世界と違って弾丸を一発浴びただけで死ぬリスクがある。非常に危険な賭けになるな」
ミール「私はイヤよ。エルサルバドルなんて内戦ばっかりやってるし犯罪組織が多いじゃない。女の私が足を踏み入れたらレイプされるわ」
ミゼラ「私とセラもムリね。エルサルバドルは怖すぎるわ」
リンダ「私が行ってやるよ。その代わり、あんたたちが持っている物資を10%こっちによこしな」
いつの間にかゴスロリのリンダが近くの丸テーブルに座っていた。いつもどおり金色のロウソク立てと灰皿が席に用意されている。そして、リンダを囲むように子分たちが席に座っていた。
ポテト「オム、どうする?8時間あれば多分、オレたちが住んでいる施設からだったらエルサルバドルには行けるはずだ」
オム「それでも場所がわからないんだったら探すのは大変じゃないか?」
リンダが葉巻を金色の灰皿の上に置いて、胸元から紙を取り出した。それを子分に渡し、子分はオムのところまでその紙を持ってきた。オムは受け取った折りたたまれた紙を広げてみるとジャックの住所と本名が書かれていた。博士の名前はいくつか候補が挙げられていて、どの人物がジャックに闇改造を施したのかはわからなかった。
オム「よし、じゃあオレも行ってやるよ。その代わり、オレも物資をみんなから10%ずつもらうぜ」
ポテト「おい、行くのかよ・・・・。お前に迷いとかそういうのないの?」(汗)
マック「オレも行こう。ミールは残れ。ポテトとシュガーは自分で判断しろ」
シュガー「ちょっと怖いですが僕も行きましょう」
ポテト「お・・おう、オレも行ってやろうじゃないか」
こうして異色のタッグマッチとなり、リンダ率いる子分たちとオムたちがジャックがいる施設に直接、乗り込むことになった。
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