第29話 現実の世界

酒場から出ようとするとミルクがオムを呼び止めた。オムの肩に手を回して、ミルクはほっぺたにキスをした。同じようにレモンはマックのほっぺたにキスをして、クレープはシュガーのほっぺたにキスをした。

なぜかポテトだけミントとメロンに同時に右のほっぺたと左のほっぺたにキスをされた。お嬢様たちに笑顔で見送られるオムたちだった。


酒場が賑やかになり、他の傭兵たちもオムたちを応援して盛り上げる。ゴスロリのリンダは子分を引き連れて颯爽さっそうと出て行った。


施設のカプセルから出てきたオムたちは、ドローンの形をした車に乗って4人でエルサルバドルを目指した。リンダにもらった紙に書かれたジャックの住所をナビゲーションシステムに入力してドローンの車を自動運転に切り替える。ドローンの車は空高く上昇をはじめた。


ドローンの車は上空100mのスカイウェイのレールに沿って走りはじめた。スカイウェイはドローンの車のバッテリーの故障やトラブルによる走行停止時に地上に落下しないようにするための安全防止策である。走行するレールは左右に青白いライトがついている。青白いライトはずっと線のようにつながっていてスカイウェイの端から端までライトが光を放っている。


エルサルバドルのジャックの施設までオムたちが住んでいる場所から約4時間ほどで着く予定だ。リンダたちは別行動でジャックの施設を目指している。


酒場に残されたミールは、レモンたちと一緒に酒を飲みはじめた。他の傭兵たちから物資を譲り受ける手続きをしながら他愛たあいもない話をしている。


ミルク「ねぇミール、オムたちってリアルでも戦えるの?まさか第三次世界大戦の生き残りじゃないでしょ?」


ミール「イヤ、私達は次世代のプレイヤーよ。私達5人は同じ施設で訓練を受けたの。実戦経験でいえばそれほど多くないけどね。でも、子供の頃から戦闘の戦略や武器の使い方を学んできたの。決して、弱いわけではない。ただジャックとリアルで戦えるか?と聞かれたらムリだと思うわ」


ミルク「片目のジャックは元軍人で、しかも精鋭部隊に所属していたという話よね。もし現実の世界でも体に武器をつけて改造されてたら手に負えないわよね」


ミール「でも、誰かが止めないと仮想世界の秩序が乱れてしまうんじゃない?それを私たちのチームも話し合っていたの。だから、オムやマックはほっといてもジャックのところへ行ってるわ」


レモン「ほんとうにあなたたちのチームに感謝しているの。あのリンダ様にもね。私達はヨーロッパに住んでいるプレイヤーだからジャックのところには行けないから。私の物資でよければ今回のトーナメントの分は全部、あなたたちのチームに寄付するわ」


ミール「ありがとう。その気持だけを受け取っておくわ。オムたちが生きて帰って来たらデートしてあげてね♪」


オムたちはドローンの車の中で戦略を立てていた。自動運転に切り替えたので前の席を180度回転させて後ろの席と向き合う形で4人は話し合っていた。


さすがに元軍人の精鋭部隊と現実の世界で戦えるほど、4人は強くない。施設での訓練はあくまで仮想世界で戦うための基礎を学んだに過ぎない。

武器はハンドガンやボトルアクションピストルはある。現実の世界では手りゅう弾やスペシャルウエポンの追跡ミサイルは用意していないのだ。


オム「ジャックの施設にはトラップがあるかもしれないな。他のプレイヤーも同じ施設にいる可能性がある」


マック「ほんとにその通りだ。きっと他のプレイヤーと博士も一緒にいるだろうな。ジャックの闇改造が成功しているのなら、他のプレイヤーも闇改造していくつもりかもしれん」


シュガー「しかし、闇改造には様々な難問を突破する必要があるはずだが・・・。体に埋め込んだチップの個人情報を変えるだけではなく、カプセルでモーションキャプチャされたときに登録したアバターと動きを一致させる必要がある。武器と一体となっている体はどうやって一致させているのか謎が残ったままだ」


ポテト「そのへんはよくわからないけど、別のプログラムがゲーム会社が作った仮想世界に干渉しているのかもな」


オム「闇改造に興味はないがどういう経路を辿って、そういう状況になったのか知りたいぜ」


マック「直接、博士に話を聞けばいいさ」

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