第50話 戦いの鉄則

ジャックを討伐するために派遣された30体の戦闘用アンドロイド(E-01H)は電脳容器サイバーボトルを搭載し、個々に判断して行動できる優れものである。


AIが遠隔操作で動かす戦闘用アンドロイド(E-01H)と違い、単調な動きではなく戦闘用アンドロイド(E-01H)の機能を最大限に引き出せることが期待されて派遣されてきたのだ。これは戦闘用アンドロイド(E-01H)が実戦でどれだけ実力を発揮できるかを知るための実験でもあった。


3号、4号、5号が川沿いを歩いて川上のほうへ進んでいく。元受刑者だったころにお互いの顔や性格を知る奴らが行動を共にしていた。


3号「おい、4号押すなよ。まだオレもこの体になれてねぇんだ。バランスが崩れるだろ!」


4号「わりぃーわりぃー。マジで今のはコケそうだった」


5号「さっさと上がって来いよ。お前ら遅いんだよ」


5号が一番先頭を歩き、残りの二人を誘導する。元受刑者だったころも兄貴分で面倒見のイイ奴だった。生まれ育ちが悪く、家庭環境も劣悪だったために街を牛耳っているマフィアのグループに入りボスの指示にしたがって窃盗を繰り返していた。もし5号の生まれ育ちがよければスポーツで有名な選手になっていたか学業で良い成績を残していたのかもしれない。刑務所に入る前にやっていた窃盗は空き巣に入ることが多かった。


もし家の住人と鉢合わせになれば銃で撃たれるか住人と取っ組み合いになって押さえつけられればすぐさま刑務所行きである。住人と鉢合わせになり取っ組み合いになって相手を殺してしまえば、すぐに強盗殺人に切り替わって罪が重くなる。そこには言い訳できる余地はなかった。


どう転んでも人生が好転することはなく5号の人生はどんどん深い闇のほうへ堕ちていた。その最終地点が電脳容器サイバーボトルである。


5号が川沿いの傾斜のきつい岩場をよじ登り、3号と4号が上がって来るのを待っていた。敵の姿はなく、(こんな岩場で敵が現れることもないだろう)と内心思っていた。しかし、その予想を裏切るかのように5号は何者かに背後からミサイルを撃ち込まれてしまった。そのまま5号は爆死である。


5号の戦闘用アンドロイド(E-01H)の手や足、体は粉々に吹き飛んだ。

3号と4号が叫び声を上げた。


3号「うおー!5号がやられちまった!敵が来たぞ」

4号「一旦、この岩から降りるぞ!急げ!」


3号と4号は急いで川沿いの斜面のきつい岩場を降りていく。3号と4号の手足は岩場に掴まるだけで精一杯である。そこにガトリングガンでジャックが弾丸の嵐を浴びせた。


3号と4号の戦闘用アンドロイド(E-01H)の機体が粉々に飛び散っていく。何も戦えるような状態ではなく、ただ弾丸の嵐を浴びて朽ち果てていく。


ジャック「なんだ?このマヌケな連中は。まるで手応えがねぇ」


戦闘では低い位置より高い位置にいるほうが有利である。それが戦いの鉄則なのだ。それを理解していない奴らはジャックの敵ではなかった。


3体~4体のグループに分かれた小隊を殲滅するためにジャックは動き出した。


スティーブ博士と助手のオリビア、第六等級シックスオフィサー第七等級セブンスオフィサーはオペレーター室のモニターを見ながらジャックの動きを観察した。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Virtual Stadium hiroumi @hiroumi2017

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ