第16話 コスプレ対決

酒場にいる傭兵がモニターの方を指差しながら大声おおごえで云った。

傭兵「おい、みんな見てみろよ。こんな戦いがあるかよ」(笑)

さっきまで談笑していたオムたちもモニターのほうに目をやるとモニターに映し出されていたのはトーナメント2回戦に出場したチームだった。

競技が始まる前に両チームのメンバーが司会者によって紹介されている。どちらも個性の強い独特なコスプレ衣装を着ているので酒場にいるみんなはモニターに釘付けになり一瞬の沈黙があった。


東陣のチームは全員女性でコスプレ衣装が華やかである。

オフショルダーのニットのワンピースを着た女・レモン

白のブラウスにミニスカートを着た女・ミルク

羊の着ぐるみをかぶった女・クレープ

女子高生の格好をした女・ミント

白いロリータファッションに身を包んでまるでおとぎ話に出てくるお姫様のような女・メロン


どの娘も可愛いし仕草や表情まで愛嬌がたっぷりで目のやり場に困るほどだ。

それに負けずおとらず西陣のチームは5人が忍者のコスプレ衣装で揃えてきている。なんだかやけに物騒に見える。


刀を持った忍丸しのびまる

手裏剣を持った剣丸つるぎまる

鎖鎌くさりがまを持った影丸かげまる

鎖鎌くさりがまを持った嵐丸あらしまる

刀を持った草鞋丸わらじまるの男性5人のアバターで構成されたチームである。


ポテトが思い出したかのように云った。

ポテト「あっ!このコスプレ最新の衣装だ。で、2回戦から追加された武器にコイツら合わせてきたんだな」


シュガー「合わせたって何を?」


ポテト「トーナメントの2回戦から新たに追加されたのはメイン武器に刀と手裏剣しゅりけん鎖鎌くさりがまがあって、サブ武器は煙玉けむりだまとムササビマントになっているんだぜ」


オム「運営側に忍者ファンがいるみたいだな」(笑)


マック「どれも遊び半分の追加武器にみえるが刀は射程距離が短いかわりに敵を3回斬ればライフをゼロにできる。サブ武器やスペシャルウエポンも忍者専用になっているからチーム全員が忍者装備だったらけっこう手強てごわいぞ」


ミール「このコスプレの娘たち可愛いわね♪ぜひ東陣のチームに勝ってもらいたいわ」


シュガー「確かにクセのある忍者チームよりお嬢様チームのほうが戦いやすそうだね」


ポテト「オレは忍者と戦いたいぜ!ホログラフィーの分身の術なんかに惑わされねーぜ」

1回戦で追跡ミサイルを2発喰らってすぐに退場したポテトが自信満々で云っているのを聞いて、ミールが口に含んだワインを吹き出しそうになって口元を手で押さえ笑いをこらえている。


マック「オムはどうなんだ?」


オム「オレはどっちでもいいよ」(笑)


司会者の両チームの紹介が終わると酒場にいた傭兵たちが、どちらのコスプレチームが勝つか賭けをはじめた。

忍者チームに賭ける傭兵のほうが多く、忍者チームのオッズは1.5倍になった。

お嬢様チームのほうは可愛くて魅力はあるが弱そうなのでオッズは2.2倍がつけられた。


傭兵となったプレイヤーたちは物資を手に入れることが一般人よりも容易なのでお金を使うことがほとんどなかった。

仮想世界のショップで買い物するか現実世界で食糧を少しだけ買うぐらいである。プレイヤーが住んでいる施設では食糧や物資がタダで手に入るのでお金を使うことはあまりなかった。


賭けをして儲かれば傭兵たちは武器やオプションアイテムを買うぐらいである。しかし、それも普段の競技で勝利して手に入れた物資を転売すればいつでも武器もアイテムも手に入れることができたのだ。


仮想世界にあるサービスは無料のものが多く、資本主義が主体ではなくなったこの時代では傭兵たちにとって仮想通貨は賭けに使う”カジノチップ”の代わりである。


バーカウンターでお酒を提供してくれるAI(人工知能)の女店員が傭兵たちの賭けを集計して、いったんみんなから掛け金を預かり、予想を当てたほうに配当を配る。

ごくわずかに手数料を取られるが公平なジャッジをしてくれるので安心してお金を預けられるというわけだ。


バーカウンターの両端に倍率オッズとチーム名がピンク色の枠の中に収められて空中に表示されている。まるでネオン管が光っているように輝いていた。


コスプレ対決は警笛と共にスタートされた。

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