第33話 火星移住計画

3回戦で見ものだったのはゴスロリのリンダのチームだった。リンダ様はガトリングガンで次々に敵を倒していった。

子分たちを巧みに操り、敵の注意をらせて背後から撃つ。その冷酷な戦いぶりと中世のヨーロッパを意識した黒い衣装が独特な雰囲気をかもし出していた。


Virtual Stadiumの競技では威力が強く、連射性能が高い武器にはチャージ時間が設けられている。数秒ボタンを押し続けてチャージしないと撃てないのだ。


中距離射程で高い連射性能を持ち、尚且なおかつ、攻撃力を備えているのはガトリングガンだった。撃ち始めるまでのチャージ時間は5秒である。

この扱いにくい武器をリンダ様は得意としていた。


リンダ様が引き連れている子分はモッチ、本丸ほんまる、ペッチ、マリモの4人である。それ以外にもリンダ様のファンは多く、ゴスロリのリンダのチームに入りたいという志願者はたくさんいる。


ゴスロリのリンダのチームは3回戦に勝ち、競技終了後に酒場に現れるとお嬢様チームがこの前のジャックの件を感謝して、お礼の言葉を伝えにリンダ様が座っているテーブル席に集まってきた。


レモン「リンダ様、この前はジャックの件でいろいろお世話になりました。ありがとうございます」

レモンが頭を下げると他の4人も一緒に深々と頭を下げた。


リンダ様「私は何もしてないよ。オムたちが先に施設に入って話をつけたからね。ただし約束どおり物資はもらうわよ」


レモン「ええ、倉庫のほうへ物資の輸送の手続きは済んでいますよ。楽しみに待っていてください」


リンダ様「また何か困ったことがあったら相談しな」


ゴスロリのリンダは、完全に女帝じょていである。


いつもの酒場でいつも集まる仲間がいる。新人の傭兵たちもすぐに競技で戦うことに慣れ、競技に勝ち、物資を手に入れる。そして、傭兵らしくなっていくのであった。


傭兵らしくなって戦うのが当たり前になってくると今度は欲が出てトーナメントで優勝することを狙い始める。そして、ランクアップして上位の競技に出場することを夢見るのだ。


上位ランクへ行けば、上位ランクの奴らが集まる酒場がある。同じ仮想世界内にあるのだがランクごとに行ける酒場は振り分けられているのだった。


世界中のプレイヤーが同じ酒場に集まれば、人の数が多すぎてパニック状態になるため、ランクごとに行ける酒場は分かれているのだ。


上位ランクで強いプレイヤーになればなるほど、性格も良くて知的なタイプになっていくという。


オムたちは酒場でいつも通り、酒を飲みながら普段の他愛もない話をしていた。そこへ速報が入る。


バーカウンターの横に設置されたモニターに「AI政府による方針の決定」という文字が流れた。そして、モニターが傭兵たちの競技の戦闘からAI政府の画面に切り替わり、AI政府は「これから火星への人類移住計画を進める」と云った。


これには酒場の傭兵たちも驚いていたようだ。2042年、AIを搭載したパソコンが新たなパソコンを開発して作るようになり、AIの考えはどんどん人智の及ばないところまで進んでいってしまったのだ。


テクノロジーの進化によって、人類は寿命が長くなり”時間”を持て余すようになった。しかし、火星への移住には一体どんな意味があるのだろうか?


そもそもそんなことが可能なのか?ということである。


オムたちの酒のアテにはちょうどいいネタになった。




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