第38話 遠隔型戦闘用アンドロイド(E-01H)

トーナメントで盛り上がっている酒場に速報が流れた。


速報「エルサルバドルの大地震の後、警察と軍隊が暴徒化した市民の制圧に向かったが遠隔型戦闘用アンドロイド(E-01H)が町で暴れ、銃撃戦の末に辺りにいたすべての人間を惨殺した」


さらに速報は続き「AI政府はこの事態を重く受け止め、遠隔型戦闘用アンドロイド10体を現地に派遣したが部隊は全滅に終わり、まだ未確認の1体の遠隔型戦闘用アンドロイドは町に潜伏している可能性があるため地域住民は十分に警戒してください」と注意をうながしている。


シュガー「エルサルバドルで遠隔型戦闘用アンドロイドが暴走・・・。物騒ですね、あの町は」


マック「イヤな予感しかしないぜ」


ポテト「まさかジャック・・・なんてことはないか」


ミール「わからないわよ。アイツが遠隔操作しているのならとんでもなく強いでしょ」


オム「かもしれないな。いくら犯罪者や元軍人が多いエルサルバドルでもAIが操作するイーワン(E-01H)10体を倒せるヤツが他にいるか?」


シューガー「ジャックは狂戦士ですからね」(苦笑)


オムたちは4回戦まで勝ち残り、とうとう準決勝まで来ていた。そして、次の対戦相手はゴスロリのリンダのチームである。


この戦いに勝てば、決勝に進出するのである。A側とA’側の頂上対決となり優勝するチームが決まるのだ。


優勝したチームは上のランクへの移動が認められている。上のランクで競技に勝てば得られる物資は今の3倍に跳ね上がる。スポンサーの数が増えてチームのメンバーを増やしグループ化することが可能になるのだ。


Aグループ(Aチーム、Bチーム、Cチーム)のようにグループ化されているのは同じ仲間ということであり、所属しているグループのチーム同士は競技で対決することがない。傭兵がチームを掛け持ちしなくても戦わなくても物資を手に入れることができるように優遇されている。


物資の量、スポンサーの数、メンバーの規模は、今のランクから大幅にグレードアップする。そのため競技で勝つことはよりいっそう難しくなるのだ。


オムたちのランクは「Aランク」である。ランクアップすれば「AAランク」になる。そして、さらに上は「AAAランク」である。


ランクアップすれば規模が大きくなり、たくさんの人の生活が競技の勝敗にかかってくるのだ。そのプレッシャーに耐えられず、自らランクダウンを申し出る者もいる。チームから離脱して、1人でAランクに戻るというパターンだ。その場合は、Aランクの傭兵とトレードされる。


トレードにはお金がかかるので安易にランクダウンする者はいないがAAランクで戦えるスキルがなければチームの足を引っ張ることになるのでチームからの離脱は致し方がないことなのだ。


オムたちは酒場の一番奥の隅っこのいつものテーブル席で酒を飲んで談笑していたがリンダ様は次に勝てば決勝ということもあって顔がこわばってピリピリしているようだった。


Virtual Stadiumの不定期に行われるイベントで傭兵たちはランクアップしていく。


AI政府は、人間の戦略や攻撃パターンを知るために常に戦闘を分析している。その戦術を遠隔型戦闘用アンドロイド(E-01H)に反映して、敵の殲滅や人類を支配するために使うという目論見もくろみである。


しかし、仮想世界の競技と違って現実世界では、その実力はまだ20%程度しか反映されていなかった。


スティーブ博士は、遠隔型戦闘用アンドロイドを改造して、操作性を50%、攻撃力を30%向上させることに成功していた。そして、ジャックが好みそうな特殊な能力をイーワン(E-01H)に持たせたのである。




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