第26話 狂人

2階の東側の通路の奥へ進んでいく卍とマリアだった。2人は通路の中央より少し奥へ進むといきなり一番奥の部屋からジャックが飛び出してきた。


片目のジャック「グハハッ!久しぶりの戦闘だ。楽しませてくれよ」


卍「マリア。モーゼのところに行け!ここはオレが引き受ける」

マリア「ああ、わかった。戦闘態勢を整えてきっちりアイツを仕留めてやる」


マリアは手りゅう弾をジャックのほうへ放り投げてスロープのほうへ戻ろうとした。しかし、ジャックは後ろに下がるどころかスケート靴のダッシュボタンを押して一気に迫ってきて、マリアの前でサブマシンガンを構えた卍のお腹に改造されて筒のような形状になった右手をピッタリくっつけてガトリングガンを連射した。卍はスペシャルウエポンのバリアを張ろうとしたがまったく間に合わなかった。


実戦経験に長けたジャックの戦い方は、敵の行動に対する、とっさの判断が防御ではなく攻撃になっているのだ。片目のジャックには迷いや躊躇がなく、まっすぐ敵に近づいて来るとき野生の動物のような凄みがあった。卍は何もすることができず一瞬でライフがゼロになり姿を消すことになってしまった。


マリアがハンドガンで片目のジャックを狙撃するがロケットランチャーのような右手を盾のようにして体をかばいながら接近して来る。マリアが撃った弾はぜんぜんジャックの体に当たらない。マリアは後ずさりしているが気づけばジャックはマリアのすぐ目の前に立っていた。


マリアは恐怖で固まってしまった。体が硬直して動けない。あまりにも戦闘経験に違いがありすぎて大人と子供ほどの経験値の差になってしまっていたのだ。


ジャックはマリアを壁まで追い詰めた。ロケットランチャーのような右手でマリアの喉元を押えつけ、マリアが持っていたハンドガンを左手で払いけた。そして、ジャックはニヤニヤ笑いながらマリアの着ている服のボタンを1つずつ外していくのだった。


片目のジャック「久しぶりだぜ、この感触。長い間、眠っていたから忘れていたが感覚が蘇ってきたぞ!」


マリアの上着はぎ取られ、上半身はブラジャーだけの姿になった。さすがに競技場の観客席からも酒場にいる傭兵たちからもブーイングが起きた。これはVirtual Stadiumにおける重要なトーナメントになっているのだ。現実世界で物資が得られるかどうかを賭けた真剣勝負である。傭兵となったプレイヤーたちは町や村の出資があるおかげで衣食住が整った施設に住み、そして、カプセルの中で真剣に競技に参加しているのだ。世界中の人々は女にさかっている傭兵が見たいわけではない。


マリア「どうせここは仮想世界だ。VRスーツの感度をゼロにすればお前に何をされても感触なんてないんだよ。この変態野郎」

喉元を大きな筒のような金属で押さえつけられて恐怖心はあったがマリアは精一杯に強がった。


片目のジャック「ほうほう、VR?」


ジャックがマリアの胸を触った。マリアの顔色が変わり、様子がおかしい。悶絶もんぜつしているようだ。


マリア(胸を触られている感触がある。どういうことだ?)


ジャック「オレの右手は闇改造されている。オレが触れたものはデジタル制御にエラーが生じるのさ。もちろんお前がオレに胸を触られた感触があることもわかっている」


マリアは悔しそうに顔をゆがめた。そして、自爆するために手りゅう弾の安全ピンを外したが爆発しないことに気がついた。


ジャック「オレが触れた奴はどんな武器を持っていても無効化される。残念だったな」そう言いながらマリアのブラジャーの中に手を入れる。


マリア「くっ!」逃げることも自爆することもできない。


片目のジャックの狂人ぶりが露呈しはじめた。

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