第48話 討伐に向かう

秘密基地の研究施設にいるエンジニアが次々と電脳容器サイバーボトルを戦闘用アンドロイド(E-01H)に搭載していく。両手にグリップ付きの手袋を装着したエンジニアが3人1組になってバケツリレーのように電脳容器サイバーボトルを受け渡して、イーワン(E-01H)の首元から胸のあたりの空いたスペースに電脳容器サイバーボトルを入れて10個のコネクタを繋いで電源をONにしてイーワン(E-01H)を機動させていくのだった。


スティーブ博士はオペレーター室のモニターでイーワン(E-01H)の動きを見ながら不具合がないかを慌ただしく確認している。第七等級セブンスオフィサー第六等級シックスオフィサーがモニターの前でオペレーター室にいるサポーターたちに指示を出し、元受刑者たちが暴れ出さないように警戒を強めるのだった。


もしイーワン(E-01H)に搭載された元受刑者たちが暴れ出した場合は、オペーレーター室にいるサポーターが遠隔操作に切り替えて、元受刑者の行動を抑制するつもりである。実際に2体のイーワン(E-01H)の様子がおかしくなり1体は近くにあった脚立を思いっきり払い除けてエンジニアのほうに近づこうとし、もう1体は床にうつ伏せになったと思ったらいきなり平泳ぎで泳ぎ始めたのだ。


どちらもすぐにサポーターが遠隔操作に切り替えて、イーワン(E-01H)を列に並べさせた。さっきまでの動きがウソのように直立不動で立っている2体が人間の魂を抜き取ったもぬけの殻のように見えるのが不気味である。


あまりの異常な行動にサポーターだけではなく、第七等級セブンスオフィサー第六等級シックスオフィサーも驚いていた。

第七等級セブンスオフィサーとスティーブ博士は信頼関係を築けていたが第六等級シックスオフィサーのほうはスティーブ博士の研究を懐疑的な目で見ているのだ。


第六等級シックスオフィサーは、秘密基地に配属されてから長い年月を過ごしたためにが異常なことを知っていた。


ある研究者は人間を小さくする研究をし、またある研究者はDNA操作によって人間と他の動物を融合させる研究をしている。変わった義肢ぎしの研究をしている者もいれば、太陽に当たるだけで何も食べなくても生きられる人体改造の研究をしている者もいる。


どの研究者も異常である。では博士と呼ばれていてもいつ逮捕されてもおかしくない研究者ばかりだった。


秘密基地に連れて来られた研究者はAI政府の要望により集められていることは確かだが一般社会の常識からは大きくかけ離れていた。スティーブ博士のように助手がついていることは珍しく、スティーブ博士に助手がつくことを知っていたのは第一等級ファーストオフィサーだけである。


第六等級シックスオフィサーはスティーブ博士に嫉妬しているのだ。この研究施設で金髪の美人の助手をつけて目立っているのが疎ましかった。それも同じ部屋で寝泊まりしているので、そんな状況では誰でも大人の男女の関係を想像してしまう。


オペレーター室のマイクで第七等級セブンスオフィサー電脳容器サイバーボトルを搭載した戦闘用アンドロイド(E-01H)にアナウンスを流す。


第七等級セブンスオフィサー「これから君たちにはに出かけてもらう。敵は1体の戦闘用アンドロイド(E-01H)だ。敵はエルサルバドルの街の近くにある森に潜伏している。一般人の立ち入りは既に禁止してある。


シュミレーションで使った武器を使い、実戦で敵を倒すんだ。いいな?


もし戦いに勝てば、しばらく自分の好みにあった仮想世界を楽しめばいい。現実の世界では君たちは戦闘用アンドロイド(E-01H)の改良版ということになっている。


くれぐれも変な気を起こさないでくれよ。では、出発しよう」


大型のドローンの輸送機に乗り、元受刑者たちが搭載された戦闘用アンドロイド(E-01H)がジャックの討伐に向かった。



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