第53話 合宿 


♡マキノの顔を見て、4人は甘えモードでダラダタしているわね。そんなことは気にせずにマキノと浜は食材たちを活かすべきキッチンで戦っていたの。♥





「マキノちゃん!お魚焼いて!」


「おばあちゃん!お皿に盛っておくね、里乃ちゃん、上から煮汁をかけておいてくれない?」


「マキノさん、これでいいですか?」


「うん上手だね!満点!おばあちゃん、野菜炒めてくれないかな?」





♡三人の息が会っていくと次々に料理が仕上がっていくのね

リビングのテーブルには料理が並んでいきサイドテーブルを使ってまで料理が置かれていく。

ちょうどその頃夜勤のプログラムの男子社員がわらわらと寮に入ってきて。♥





「社長、こんばんは、入っていいっすか?」


「おいで、おいで、料理がいっぱいあるのよ、どんどん食べて!」


「社長、失礼します!」


「おお!めっちゃいい香りじゃん!」





♡普段は寮生のリビングに使われている部屋に30人ほどの人間が入ってパーティになっているわね、プログラム若者男子が次々に料理を平らげていくの。♥





「ああ!野菜って久しぶりじゃん!これうめぇなぁ。」


「まじ、おれもこっちにでてきてから、はじめてまともなもん食ったわ。」


「うめーなぁ。」





♡プログラマーの若武者たちが次々に料理を取りにくる。キッチンで作業している、マキノは彼らに声をかけるの。♥





「よく食べてくれて嬉しいわ!、ねぇ、普段から野菜取ってるの?」


「いやぁ、忙しいからカップ麺か、マックかな」


「ダメじゃん!ちゃんと食べなさいね。はい、出来上がり、モリモリ食べてね。」


「里乃ちゃんも食べな、あとでお願いあるんだけど、いいかな?」


「はい、マキノさんとマキノさんのおばあさんは食べないんですか?」


「うん、冷凍しても食べられるおかず作ってるから、食材もったいないしね。」


「マキノさん、私も手伝わせてください。」


「里乃ちゃんお腹減ったでしょ。」



「あとで食べさせていただきますから。わたしフードロスを減らす仕事をしてるんです。

 マキノさんたちを見ていて、食材を見分けてすぐに食べたり、冷凍したり、無駄がないことされているんで、すごく興味がわいてきちゃって

リアルに体験できることってないですから。」



「わかった、じゃぁ、里乃ちゃんだけにあとで、いいもの作ってあげるわ。」


「ほんとですか!できれは、教えていただいても、いいですか?」


「うん、いいよ、さぁ。冷凍保存できるものを作り上げましょ!」





♡里乃はマキノに親しみを感じていき、まるで姉のように慕っている。

 適宜、浜や周りの人間に指示を与えテキパキと作業を進めていくマキノの姿に

まるで女将時代の自分と、レースで部員たちに指示をおくる永吉をだぶらせてみているわ。♥





「おばあちゃん、煮付けの味ってこんなもんかな?みてもらってもいい?」


「どれどれ、うん!おいしいがな!日吉よりも煮込み上手かも。」


「やめてよ、日吉さんにはかなわないわよ。でも、おばあちゃんに褒められてうれしいカナ。」





♡冷蔵で食べられるもの、解凍して炒めて食べられるもの、25皿の料理をつくってメモを書き出したのね。♥





「あのさ、里乃ちゃん、ラップの上に付箋貼っておくから、書いてある通りに調理してもらってもいいかな? 

付箋の上に大きく番号が振ってあるから順番に作ってくれれば無駄が出ないからね。」




「あの、どうしたら、食品ロスを減らせると思いますか?」


「えっ、食品ロスかぁ、そうだね、んーと。」




♡マキノは残った玉子を割ってボウルにいれてかき回してるの。そこに調味料、酢などをいれて玉子焼きを作りはじめながら莉乃の質問に答えているの。♥





「そうだね、ウチみたいに小さな料理店は無駄がでると売り上げが減るし。

 普通のお家、お店、工場とか、状況でかわっちゃうからなぁ

ごめんね、わかんない。ただ勿体無いとしか考えたことしか無いから

里乃ちゃんだけのスペシャルの玉子焼きよ。食べてみて。」



「わぁ、ほわっとしておいしそう、いただいていいんですか?」


「もちろんよ、もう玉子ないから内緒ね。」


「はむっ!、、、、お、おいしい!なにこれ!超おいしいです!」



「あさひたちと一緒に暮らしていた時、毎日つくっていたのよ。

毎日みんなの喜んでいる顔がみえるのがしあわせでね。

いただきます、ごちそうさまが嬉しかったの。」



「いただきます、ご馳走さまですか、そういえば一人暮らしだから長い事手を合わせていないですね。」


「マキノさんご馳走さまでした。」


「いいえ、お粗末さまでした。」


「伊賀ちゃん、なに食べてんの?なんかいい匂いしたんだけど。」


「あっ、社長、なんでもないです」



「なによ!残り物を二人で食べてたのよ。


それよりさ、あさひ、いや、社長!ダメよ!あんな若い子達が野菜食べてないって言ってんじゃん、カップ麺だけで一ヶ月とか、絶対ダメ!働きざかりのあの子たちの栄養も考えてあげないと。」



「そ、そうなの。わたし、その辺無頓着だったかも。」


「伊賀ちゃん、ウチの会社、昼夜は給食にしようか?」


「えっ、いいと思います!」


「スーパー多いみたいだし、夜なら値引き品の野菜とかで調理したら安上がりになるかもよ。」


「夜!スーパー、値引き。。。そっか!わかった!そう、そうですよ、マキノさん!、そうですよ!」


「えっ、あたし何か言った?」


「社長!」


「えっ、なによ伊賀ちゃん?」


「作りましょう。17時からの閉店間際の残り物サイト!」


「廃棄ロスを減らすためのサイトです。

閉店間際で余っている安売り食材のアイコンをタップしていくと、その料理のレシピが出るんです。」


「あっ、なるほど!それ行けそいうね、広告つけるか、会員制でもいいわね。」


「食材に対応するレシピをサーバーから引っ張ってきて表示すればいいんですよ、スマホでできますから!」


「ありがとう!マキノさん!マキノさんの料理の姿を見て思いつきました!」


「えっ、あたしなにもしてないよ!」


「やっぱり、マキノさんはウチの会社のラスボスなんですね。」


「なんかよくわかんないけど、よかったわね。」


「あのさ、マキノ玉子まだある?」


「さすが鼻がよく聞くのう、おぬし。」




♡仕事で悩んでいた里乃の助けになったのかよくわから無いけどとにかく喜んでいるみたいでよかったわね。


 マキノはあさひを隠すように屈ませて、手招きすると小皿に一掴みだけの玉子焼きを残していたの。あさひはニターっと笑ってキッチンカウンターの陰に隠れて一口頬張ると。♥




「おかんの玉子焼きサイコウ!」





♡向でダラダラしている三人に見え無いようにこっそと。でも、背後から刺すような視線が。♥





「ズルイ!デスッ!サクラモ食ベタイ!」


「なんだよコソコソしやがって!俺にも作ってくれよ!」


「いいんだ、、マキノはえこひいきするんだね。」


「なによ、あんたらテレビ見てぼーっとしてたじゃん!」


「懐かしい匂いでわかっていたわよ!」


「わかりました!伊賀里乃、玉子買ってきますっ!、マキノさん、買ってきたら、作り方教えていただいていいですか?」


「うん、いいよ、でも、このわがまま星人たちに作らされるよ。」


「ヘーキです、マキノさんみたいの大量につくりますから!」


「じゃぁ、わたしも買いについていこうかな?、里乃ちゃん一緒にいこ、おばあちゃんは休んでて。」


「そうか、じゃあ、ゆっくりさせてもらうわ。」


「じゃぁ、行こ!」


「はいはい!俺もツイてっていいっすか!」


「おれも!マキノさんにお供します。」


「おれも行きたいです。」





♡男子社員たちが一斉に買い物についていくと言い出す始末で。♥





「なによ!なんであんた、そんなに人気あんのよ!」


「知ら無いわよ、じゃぁみんなで行こうか!」


「あんたたち、休み時間、、、。今日は特別でいいか。」


「社長そろそろ、いい時間ですし、スーパーまで送ったらそのまま社にもどって作業続けますから。」


「そう、お疲れ様ね。」


「さぁ、里乃ちゃん!野郎ども!いくぞ!」


「おおおおおお!」




♡たった、一時間で、あさひたちの会社の社員の気持ちを掴んでしまったマキノ。竹生で暮らして自分に居場所のできたマキノは、めきめきとオーラを強めていったの。

 今見ると、あさひよりも強く輝いているかもしれないわね、生きて行く強さと、優しさ、そして誠実な美しさがマキノを魅力ある女性にしていっているんだとおもうよ。♥




「マキノ変わってないけど、、、変わったね、すごく眩しいわ。」


「そうなんや、毎日一緒に居てるさかいに気がつかへんかったんやけど。」


「いつもオドオドしてたのにさ、なんか俺も眩しく感じるくらいに、いい女になったもんだ。」


「デモ、優シイトコロハ昔ノママダヨネ。」


「そう、だから一瞬で若い子が惹かれちゃったのかな、どうする、あさひ、このままじゃ会社乗っ取られちゃうよ。」


「あはは、マキノならいいよ、あんなに辛い時期があったのに、元気になってくれてうれしいよ。」


「なによ、またあさひ泣いてるの?」


「あのことはもう、いいじゃん。終わったことだしさ。」


「えっ、終わったことって何なの、やろか、うちに教えてもらえへんかな?」





♡マキノが出かけたあと、四人がマキノの過去のことについて話しはじめたの社長が倒れてからの話を。


 虎姫の発案でマキノが毒キャラを演じ、それでインターネットでリンチのようなバッシングの嵐、殺害予告まで、マキノは気丈に構えていたんだけど、まともな心を失いかけていて。


 それを必死につなぎとめたのは、ここにいる四人だったの。やがて人気も下降線をたどり結果活動中止になっちゃって、そのままマキノは申し開きすることなく、すべて自分だけで、背負ってしまったこと。♥





「マキノはbeni5で過ごしてきた時間が好きだったみたいなんだ、だから最後また揉めることを拒んだの。」


「そっか、マキノちゃんらしいわ。うちからお願いやけど、いつまでも友達でいたってな。」


「おばあちゃん心配しないでいいよ、うちら友達より濃い戦友だから、何かあったら駆け付けるからね。」





♡今までマキノが浜に言わなかったこと、浜はそっと心のうちにしまいこむことにしたの、そしてしばらくするとマキノが帰ってきたのだけれど……

今度はさらに多くの女の子を引き連れて。♥





「ただいま!かえりました。きゃぁ!楽しみ!きゃぁ!あはは。」


「ん?なんか人多くない?」


「社長私たちも呼んでくださいよ!」


「おじゃましまぁす!」


「えっ!あんたたちなんで、ここにいるの?」


「夜勤チームにLINEでおいでって言われたんです、すごい楽しいって、だから、お泊まりに来ちゃいました。」


「マキノさん、これどこにおきましょうか?」


「あっ、そっち置いて、じゃぁはじめようか!浜とマキノの料理教室!」




♡どうやら、玉子を買いにいったはずなのに、夜勤チームの男子社員が女子社員をLINEで呼びかけて、明日休みの女子社員が集まってきたの、そんでスーパーでマキノと意気投合したみたい。


 男子社員の絶品の味という書き込みで作り方を覚えようとみんな集まってきちゃったんだね、女の子たちの前で美味しい玉子焼きの作り方を手取り足とり教えているマキノの姿に、みんなはマキノの成長を喜んでいるね。♥




「おーい。ひなつ、いぶき、さくらぁ。玉子焼き焼けたよ!」


「あさひよぉ、こりゃ、完全に会社を乗っ取られたな。」

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