第21話 ボルテージ
♡百周年祭まであと一年半。
マキノがこの街に来てから一年が経ち
味噌作りと居酒屋の手伝いをしながら実行委員の一員として
忙しく飛び回っている日々。
マキノも何かすることがあってうれしいみたいで
この街にもすっかり馴染んでいるわね。
今日も実行委員の会議で、企画ブレーンである
ホワイトボードに幾つかの目的を書きだしている。
実行委員の面々は虎姫の考えた「プラン」に驚くことになるの。♥
「まずみなさん、言っておきます
この百周年イベントは必ず成功するでしょう、わたしがいますからね。
でもイベントが終わって、百一年、百二年と、
ずーっとこの街は続いていきます。
閉店が多い商店街、明治時代から続くの朽ち果てそうな建物、
いまだに多い木造家屋。まだ昭和を引きずっているような街並み。」
「ちょっと虎姫くん!ズケズケと、あんたに何がわかんのさ!
あたしだって、1年すんでるけど、まだよくわかんないんだよ。」
「まぁまぁ、マキちゃん落ち着いて、いいからねっ話を聞こっ。」
♡言葉を選ばない虎姫に対してマキノがかみついたんだけど莉央がいさめたの。
でも彼の言葉は痛いほど実行委員のメンバーの心に刺さっていたわ。
子供の頃賑やかだった商店街が今では錆び付いらシャッター通り
古い建築遺産はあるものの、上手にそのアピールができずに、
街がジリ貧に落ちていく感覚をメンバーは感じていたんだ。♥
「今日より明日、明日より明後日が萎んでいく恐怖心
みなさんの気持ちがじわじわ押し潰されていくのがわたしにはわかります。
百年祭、成功は必然です、みなさんに言いたいことは祭りが終わっても
永続的に街が竹生町が昔を取り戻すそんな仕組みをこの祭をきっかけにスタートしてほしいのです!
その日がこの街の新しい紀元になるように。
「…………………パチッ」
「………パチッパチッパチッパチッパチッパチッパチッ」
♡下を向いていた実行委員が虎姫の熱弁に顔を上げて拍手を打ち始めた、
それは寂しくなって行った街を知っているものたちの悲願であり
希望だったの。♥
「それで、わたしは三つのプロジェクト提案します。」
●一つ!アートワークの街、作家が普通に暮らし気軽に芸術と触れ合える。
●二つ!過去の建物を歴史遺産としてアピールすること。
●三つ目に、地域のメディア局を作ることです。
♡虎姫の建ち上げてきた内容に実行員はすぐには理解できなかったみたい
でもその一つ一つの重要性を説いていっくの虎姫から何かを吸収しようとする
メンバーの瞳は輝いていたわ。
虎姫の言葉は乾いた土に雨水が染み込んで行ように彼らの希望の種の芽を発芽させようとしているの。
マキノも虎姫と数年間離れ、一人で企画会社を立ち上げ
今や時の人となった虎姫に何かを感じたみたい。♥
「祭りはだたのきっかけで、そこからこそが重要です
残念ながらこの街は産業も乏しく大都市を結ぶ高速道路も通っていません
今のままでは陸の孤島と化したこの地の住民が増えていくのは
時間がかかるでしょう。
ならば、週末だけでもいい外から来てもらいましょう
この街に、ここに立っている人間を増やすんです!
割り切って住民でなくゲストをむかえればいいんです!」
「ゲ、ゲストってどうやって呼ぶのですか?」
「そうですね、これから説明します。
駅の近くに今は使われていない旧鉄道会社のアパートがありますが
このアパートを町で借り上げ、これから作家を目指そうとしている若い人を
安い賃貸料金で誘致ます。
アパートと駅を結ぶ間の商店街の空き店舗を間借りして
週末に彼らが作ったものを販売し、商店街に活気を取り戻しましょう。
彼らとの契約は一年間。売り上げの20%をアパートと売場の場所代にし
永続的につづく作家市を開く。次世代の作家のふるさとを、ここに、
この街に作るんです。」
「この街を訪ねてこられる方は、決してお客ではありません。
面白いものを楽しみにしているゲストなのです!」
「うぉおおおおおお!」
♡会場内の男どもはその演説にも似た虎姫の言葉に
どよめきたち腹から声を上げているの
話が長かったから要約するね。
お金のない若い作家を住まわせて、売場を与え
それを街の広告宣伝つまり顔にするというもの。
まぁ昔は、どの城の侍もよくやっていた方法なんだけどね。
観光だけでない、新たな視点、日々面白いものを探している
外部の人間を呼び込むための考えなわけ。♥
「せ、せんせい、あの、本当にそんなことできるんですか」
「できる、できないの問題ではないです
できたか、できなかったか、です。
街の力は人の数、それが週末だけであっても人の流れが人を呼び、
それが渦になってまた人が集まります。
人が集まってくればしだいにこの街にも目がいくようになるでしょう。
思います皆さんはラッキーです
この事務所をとびだして少し表の通りを歩いてごらんなさい
あなた達にはたくさんの街資源がある、古い建物という強力な資源に
囲まれているんですよ。
要はそれをどうつなぎ合わせて使うかです。もちろん使用許可など大変なことが多いと思います。でもできるんです、やるんです!あなた達が行政を動かすんです。」
「若者が行政と戦った、こんな街の話をしましょう。とある城下町で、戦後経済発展のために数百年続いた堀を埋めることになりました、しかし地元の青年団が自分たちの慣れ親しんだふるさとの景色をまもるため、埋立反対と市と徹底抗戦しました。その声は大きくなり市も埋立開発を諦めて数十年。
今その堀は街の観光シンボルとなり、映画のロケでもつかわれる有名な場所になりました。そのときの若者が行政を動かしたからその街が未だに恩恵をうけているんです。アイデアを出しましょう、民間の力をつかって行政をまきこみましょう。そのときにこそ、ミラクルが起きるるのです、地元愛だけが地元を救えるのです!」
「おおおおおおおおおおっ!」
♡さらに虎姫はまくしたてるように、熱く強く語り開けたの、次第にマキノも、虎姫の言葉の重力引き込まれちゃって、もう昔一緒に仕事をしていた彼と違いこの街のために熱く語っている姿に、なぜか一筋の涙が流れてしまったの。♥
「せんせい、よくこんな短い時間でそこまで。」
「やろう!役場を動かして、あの日のような竹生をもう一度取り戻そう。」
「やろう!やろう!」
♡いつも重い空気に包まれていた実行委員のハートに炎が灯ったみたい。それから各パートに分かれてプロジェクトを進めることになったみたいね。優作はプロジェクト全般。マキノと莉央は広報とイベント進行役に大抜擢。………まぁ、元プロと、現役プロだからね。
気持ちを
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