第22話 マキノと莉央




♡マキノの中で莉央の存在は大きくなっていってる

実行委員で会うだけでなく、今ではショピングや映画とか…

二人は仲のいい姉妹みたいによく遊んでいるの。

そんなある日、莉央はマキノを実家に誘ってみたんだ。♥




「こんにちは、初めまして。莉央さんと仲良くさせていただいています

高島マキノといいます。」


「ご丁寧な挨拶ありがとうございます。母の洋子ようこと申します

マキノさんのことは莉央から聞いています

いつも迷惑かけてばかりで。

 こちらから挨拶をしないといけないと思っていたのですが、

今日はゆっくりしていってくださいね。」


「いえいえ、あたしこそ、莉央ちゃんには色々助けていただいてばかりで。」


「ちょっと、硬いわよ、……マキちゃんてちゃんと挨拶とかできるんだね。」


「こらぁ、莉央っ失礼でしょ!」





♡莉央の家は竹生町に何百年も続く和蝋燭わろうそくのお店。

最近では電気で明かりをつけるから、需要は減っちゃって

神社とか、お寺とかでしか使われなくなったわね。

 数人の職人さんと、莉央の母親だけで

細ぼそと手作りろうそくを作っているの。♥





「すごい、きれい!これが和ローソクなんだ、初めて見ました。」


「まぁ、嬉しいわ。うちのローソクをきれいって言ってくれて

これは絵ロウソクって言ってね、仏壇にそなえる仏花をモチーフにして

描かれているの。

これを備えるととてもきれいなのよ、

一本本職人さんが丁寧にローソクに筆をいれているの。」





♡店内には色とりどりの和蝋燭が並んでいてさ

熟練の作業によってマキノは目の前で作られていくロウソクが

まるで魔法のように映ったのかもしれないね。♥





「マキちゃん、おいで、おかーさんの話長いよ!」


「ええ、だって絵付け面白いって。」


「いいから、いいから。」


「もう!本当にあの子は、きっとマキノちゃんに甘えてるのね

あの一人っ子だから、お姉さんと思ってるみたい

いつも嬉しそうにマキノちゃんのことを話すのよ。」


「そうなんですか、なんかいつもカッコつけてますけどね

莉央ちゃんが呼んでいるんで、ちょっと行ってきますね

お母さん貴重なお話ありがとうございました。」





♡マキノは莉央の部屋に入りふかふかのソファーに座って

莉央とたわいもない話をしている。

恋愛、仕事、昔の楽しかったこと女学生のおしゃべりみたいに

会話が止まら無いの。♥





「うちのおかーさん、うるさくない?」


「そんなことないよ、優しそうなお母さんじゃん。」


「うん、そうだけど、25になったのにまだ甘えてばかりで。」


「いいじゃん、甘えられるなら。」


「マキちゃんのお母さんってどんな人?」


「えっと、………」


「ごめんなさい、なんかマズいこと聞いちゃった?」


「うんうん、ヘーキだよ。お母さんは、小学4年の時に病気で。。。」


「そう、ごめんなさい。わたし、考えなしに聞いちゃって。」


「気にしないでいいよ、なんか話しちゃおうかな。」


「いいの?」




♡淡々と話し始めるマキノ。

母親と二人で仲良く暮らしていた記憶が言葉にすることで、

目の前に浮かぶようだった。


 一緒に手をつないで、保育園に行ったこと、近所の公園で二人で作ったお弁当を食べたこと、漢字が覚えられずに教えてもらったこと、一緒に料理をしたこと、一緒にお味噌をつくたこと。


 そして、4年生の秋。3時間目の授業が終わって先生に呼び出され

病院に連れて行ってもらって、急に倒れた母親と3言話して

永遠の別れになってしまったこと。


 莉央はその話を聞いてマキノの目の前で大粒の涙を流していたの。♥





「なんで、莉央ちゃんが泣いてるのよ、おかしいなぁ。」


「だって、マキちゃん、だってぇ!」


「ほら、莉央ちゃんブサイクになってるよ。」


「でも、それから新しい出会いがあったわ。

あたしが施設に入った時に、ちょっといじめられちゃってね

そんなある日台風の目のような元気な女の子が入所してきたの。


 やんちゃで、男の子を泣かしてばかりで、少し怖かったんだけど

いつの間にな仲良くなって。同じ年齢なのにお姉ちゃんみたいで

いつもわたしを守ってくれていたの、大切な人ができたんだ。」


「そうなんだ、よかったねって言ってもいいよね。その人ってどんな人なの?」


「えっとね。。。あらたあさひ、、、beni5のあさひだよ。」


「ええええ!あの、あさひ、えっ、えっ?おしとやかの?、清楚な。」


「まぁ、世間ではそうなってるわね。先月日吉さんとこに遊びにきたんだよ、一晩泊まって帰えちゃったけど。」


「なんでよ!なんでわたしを呼んでくれないのよ!」


「だってあさひ急に来るって電話してきたし、一晩話して、すぐ帰っちゃったから。」


「そうなんだ、一度あってみたいなあさひさん。

そうそう、うちのパパ大ファンなんだよ」


「うん、知ってる。」


「えっ?なんで?」


「だって、一緒に飲んでたもん。」


「マジ?」


「うん、マジ。」


「あのオヤジめっ!そんなこと一言も言わずにのうのうとしやがって!」


「あっ、あまりお父さんに聞かないほうがいいかも。。。」





♡だよね、あさひに叱られて土下座していたもんね、あっ、この子も土下座してたっけ、やっぱ親子か。♥





「莉央ちゃんはローソクのお店を手伝うの?」


「わたしは、あんまり手伝いたくないなぁ。」


「そうなんだ、なんか職人技って大変そうだもんね。」


「そうじゃなくて、やりたいことがあってさ

手伝ったらなんかしたいことから逃げちゃうみたいで

昔はよく手伝っていたんだよ。

あのさ、洋ロウソクと和蝋燭の違いってわかる?」


「なになに?いきなりクイズ?

…てか、和蝋燭って何?ローソクはローソクじゃないの?」


「そっか知らないんだ。じゃぁ教えてあげる。」


「和蝋燭はとても手間がかかっているんだ、

蝋燭の芯はあれ畳と同じイ草でね。ロウの原料ははぜの実って

言って植物でできているんだ、だからほとんどススが出ないの。

 それに洋ロウソクと違って芯が太いから火が消えにくくて

ゆらゆらと火が大きくて長持ちするの。」


「ふーんそうなんだ。莉央ちゃん、すごいよく知ってるね。」


「なにっ、バカにしないでよ、一通りできるのよ、お母さん仕込みだから。」


「そうなんだ、莉央ちゃんなんかずごく誇らしげで嬉しそうだよ、

あっ、もうこんな時間だ、そろそろ帰んなきゃ店の手伝いがあるから。」


「マキちゃんよく働くね。じゃぁ、わたしも居酒屋日吉まで行こうかな」


「うん、八時過ぎたらお父さんくるかも、それでもいいの?」


「いいよ、ゴチになるから。」


「しっかりしてるねぇ。」


「おかぁさん、今晩ご飯いいわ、日吉で食べてくる。」


「なによあんた。もっと早く言いなさいよ!用意しちゃったわよ!」


「ごめん、おかーさん」





♡親子のやり取りを見ながらマキノは微笑ましくっていいなと思いながら、

なぜか浜のことをおもいだしていたの。♥





「あっ、マキノちゃん、鮎の佃煮もらったの、よかったら食べる?」


「えっ、いいんですか、わぁ。おいしそう!いただきます!」


「え~、そんな田舎っぽいもの渡さないでよぉ。」


「莉央ちゃん!何言ってんの、湖で取れた鮎でしょ、おいしいじゃん

食べ物にそんなこと言っちゃダメ!」


「へーい、マキちゃんって、おかーさんみたい。」

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