第41話 バカしたい!
♡すっぴんのほかほか顏で温泉から帰ってきたマキノたち
莉央は朝日とさくらを居酒屋日吉まで送ると
みんなにお別れを言って明日のロケのために帰って行ったの。
5人は座敷に布団を並べて川の字で寝ているわ
積もる話に花を咲かせていたのだけど
いつしか疲れ果てて眠っちゃったみたい
あらら、元アイドルとはおもえない寝相ね。♥
「うわぁあああ!もう昼まえじゃん!」
「えっ、わぁほんとだ!」
「エッ、ダレモ目覚マシタイマーシテナカッタノ?」
「えっ、マキノがしてたんじゃねーのか!」
「げぇっ、バッテリー落ちてる。」
♡あーあーせっかく莉央が用意してくれたスケジュールの半分が飛んじゃったね。
5人は
みんなバタバタとメイクして気がついたらもうお昼すぎちゃって
寝巻きからお出かけ着に替えると…居酒屋から浜の声がしたの。♥
「みんな、お昼やで、一緒に食べよ!」
「わーぁい。ごはんたべるぅ!」
♡みんな居酒屋スペースでテーブルを囲んでいる
テーブルに並べられた色とりどりのおかずたち
白くピカピカなご飯、懐かしく体に染み込むような香りのお味噌汁
食べ物たちがテーブルの上でミュージカルの舞台みたいに踊り歌っているの。♥
「さぁ、みんな食べい。」
「おばあちゃん、ごはん手伝いたかったから、起こしてほしかったです。」
「えっ、なになに。マキノおばあちゃんに甘えてるの?」
「違うわよ!そんなんじゃないから。」
「ああごめんなぁ、昨日遅くまで楽しそうやったし、ゆっくり寝るものええかなっ思てな。」
「なんか、
「ず~っと俺たちそうやって暮らしてきたもんな。」
「さぁ、さぁ、みんな食べい!」
「はぁ〜い!いっただきます!」
♡育ち盛りの娘のようにアラサーの女たちがバクバクとご飯を食べている
話をはずませながらお箸先も踊っているわ。
ひなつがご飯のお代わりをすると、なぜかマキノの体が反応してしまう
ほんとにおかんだね。
メンバーはこれが日常かのように浜と日吉が作ったお昼ご飯を
あっという間に平らげてしまったの。♥
「ああ、ごはんしあわせ、本当におばあちゃんと日吉さんのご飯って
マキノと同じ味だね。
まきのぉ、二ヶ月に1回でいいから、東京にご飯作りにきてよ。」
「やだよ、リアル飯炊き女じゃん。」
「このあと、どうする。せっかく莉央が作ってくれたスケジュールだしなぁ。」
「アノサ、電車カラ見エタ島ッテ行ケルノデスカ?」
「ああ、弁天島って電車から見えた島のこと?」
「ええ、そうだよ。」
「島行きたい!島行きたい!」
「マキノ案内して。」
「えっ、あたし、弁天島に行ったこと無いよ!」
「なに!こんな近くに住んでて、行ったことないの?」
「なかなか行く用事ないからさ。」
「でも島渡って、ここまで帰ってきて京都まで出るとなると、結構時間かかるぜ!」
「弁天島いくんか?ほれやったら、弁天島経由で向こう岸の黒壁町にいく船あるわ、黒壁からやたら新幹線乗れるさかにほっちのほうが早いで。」
「じゃぁ、弁天島上陸作戦決定!」
♡みんなが盛り上がる中、マキノは莉央にメールをしたためているわ。
「せっかく用意してくれたコースだけど…行けなくなって申し訳ない」
ってね。♥
《莉央ちゃんせっかく工程表つくてくれたのに。寝坊してお昼になっちゃった、ごめんなさい。》
《あはは、みんなで遅くまで騒いでたんでしょ、どこか行くの?》
《弁天島に行きたいって。》
《じゃこんど、莉緒の用意したコースマキちゃん連れてってあげる。
それより、みんなで楽しんでね。あっ、
《莉央ちゃんもお仕事頑張ってね。》
《あっ、あのさ、ザリガニって結構おいしいんだよ。》
《食べ過ぎておなか壊しちゃダメよ。》
《へーい。》
「なにぃ。マキノ王子様とやスイーツメールしてるのかなぁ?」
「ちょっと見ないでよ!」
「じゃぁ行こうか!日吉さんありがとうございました。
また来ますね。ほんと楽しかったです!」
「ああ、いつでも待ってるよ。」
「ほな日吉、みんなを桟橋まで送ってくるわ。」
♡マキノたちと浜は居酒屋日吉を後にして
旧家の並ぶ道を桟橋まで向かって歩いているわ。
空は梅雨の合間の晴天、もう既に夏のきらめきが大気を温め
今年一番の真っ白な入道雲が立ち上がっていたの
青いく穏やかな湖の水面に、立ち上がる雲が
逆さ鏡のように映っている。♥
「なんかもう夏じゃん!」
「おお!すげー綺麗だな!お〜い!みんな早くこいよ!」
「珍しくいぶきがはしゃいでるね。」
「ワォ!何テビューティフルナンデショ。」
♡メンバーたちが道に横一列に並ぶ
湖面すれすれに真っ白な水鳥が飛んでいるの。
キラキラと光る反射光を浴びながら5人は昔の記憶を呼びさましていた。
そう、水面が客席で「キラキラライト」を浴びて5人で歌っていたあの頃を。♥
「あははは、何!ウケル。ほら、ほら見て!無意識だったら怖いわ!」
「えっ?何がよ!」
「ほら、立ち位置を見てみなよ昔のままでしょ!」
「あっ本当だ!」
♡そう、前に居酒屋日吉に張ってあったポスターの並びと一緒に
横一列に並んでいたの。
あさひをセンターにひなつ、いぶき、あさひ、さくら、マキノの順番で。
ずっとこの並びでステージに上がっていたんだよね。♥
「ねぇ、久しぶりにさぁ、アレやんない?」
「おお、いいね、やろうじゃねーか!」
「いいじゃん!旅の恥はかきすてっていうもんね。」
「ミンナデヤロウ!」
「えっ、やだよ、あたし。」
「ええ!なんだよ、ノリ悪ぃなぁマキノ。」
「何が旅の恥はかきすてよ、あたし地元なんだから!」
「なに!もう、地元愛バリバリじゃん」
「だってぇ。」
♡あさひが走り出して、浜辺で釣りしているおじさんに声をかけて、
スマホを手渡すと一目散に帰ってきたの。♥
「さぁ、カメラはまわってるよ!」
♡あさひが号令をかけると、マキノを除いてみんな各々のポースを。
スマホで動画撮影しているおじさんもノリノリで
道端に横一列に立っているメンバーを撮影しているわ
あの時のように、メンバー自己紹介の口上が始まる。♥
「こんにちは!いつも心にやすらぎを、あなたの近くのそっとよりそう、癒し娘のひなつです。」
「いつも気持ちは大きな青空。気持ち良くあなたを包んであげる。爽やか娘いぶきです。」
「胸がドキドキ、心ワクワク、いつも真っ赤なハートをおすそ分け、リーダーのあさひです。」
「淡クトキメクピンクノ気持チヲ、アナタノハートニ届ケマス!初恋カラーノさくらデス。」
♡マキノは恥ずかさいっぱいだったんだけど
さくらが自分のフレーズを言った瞬間、
キラキラ光る湖面にあの社長の面影が浮かんだ気がして
体が勝手に動いていたんだ。♥
「あなたの光をいっぱい浴びて、すくすく育たまんまる果実。心にオレンジ柑橘娘のまきのです。」
『5人合わせて、ベニーファイブ!』
「わぁ!!!!!!」
♡船を待っている、観光客が何かの撮影かと思い
みんなの周りを取り囲んでいるわね
観光客は突然のパフォーマンスに手を叩いている。
思わずやりきってしまったマキノだったけど
みんなでまたこうやってできるなんて思ってもいなかったから
本当は嬉しかったみたい。♥
「では、みなさん聞いてくさい!サマーメモリーズ!」
「えっ、歌うの!」
♡出だしはマキノのコーラスパート
音合わせもせずに第一声からキーを昔のままに
あさひの歌い出しを盛り立てる。
あさひは空気を貫くような高い声で出だしのサビを歌う
前に観客がいない湖にむかってその声は放射状に広がっていく。
もちろん振り付けつきで、
突然始まったbeni5のミニコンサートに観光客は大盛り上がり。
みんなの乗船チケットを買った浜は観光客の後ろでマキノをみている。
息のあったダンス、広がる歌声。このチームが形でなく心から
繋がっていることがわかったみたいね。
知らずうちにあの日を演じた5人にはどこか爽やかな風をまとい
その清涼感が観光客に伝わっていたんだ
曲を歌い切ると、ちょうど沖から定期観光船がやってきたの♥
「ねぇ、おばあちゃんも行こうよぉ、ねぇねぇ。」
「うちは2時から商工会の会合やねん。ごめんなぁ。
みんなは黒壁まで行くんやで、マキノちゃんは往復チケットね。
しっかり楽しんでおいで。ああ、あさひちゃん、竹生から、
黒壁に行く時電話くれへん?
向こうに知り合いを呼んどくわ。
桟橋に着いたら駅まで送ってもらうことになったるさかいにな。」
「おばぁちゃん、チケット高かったでしょ、みんなの分あたし出しますから。」
「ええんよ、ほれにうちは、あんたらのおばあちゃんやからな、これくらいさせてえなぁ。」
「おばあちゃん、ありがとうございます。」
「ブーブーブーまたマキノだけ抜け駆けしおばあちゃんとイチャついてる!」
♡マキノは浜に抱きついてメンバーにみせつけるように舌をだして。♥
「べーだ、ウチの、おばーちゃんやもん!」
「ブーブーブー独り占めだ!独占禁止法違反だ!、訴訟だ!裁判だ!。
マキノあのさ…イントネーション変だぞ!」
♡四人がサムダウンしながら二人を孫とおばあちゃんを囃し立てる
浜はポンポンとマキノの頭を撫でて、五人を船に乗せたの。
5人は急いで観光船の二階デッキに上がり、
桟橋に立っている浜に手を振るとまた一列に並んだ。
そして各々が浜に感謝の言葉を口に出したの。♥
「おばあちゃん!またくるね。元気でいてね。」
「おばあちゃん!お味噌汁おいしかったよ!」
「おばあちゃん!ウチらおばあちゃんの孫だからね、東京にも遊びにきてね!」
「グランマ、マキノニ会エテ嬉シカッタ。本当にアリガトウ!」
「おばあちゃん!あたしおばあちゃんのことが!大好き!」
『おばあちゃん!ずっと愛してるよ!』
♡出港の時間となり観光船は真っ白な桟橋を離れ離れていく。
それぞれの思いを受け止めた浜は桟橋ギリギリまで船を追い
笑顔で手を振っている。
夏の青い水平線に吸い込まれていく小さくなる船影に
むかって浜は大きな声で想いを届けたの!♥
「みんな!ウチの大事な大事な宝モンを、守ってくれてありがとう!」
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