第56話 ガールズトークの夜 



♥昨夜はワイワイと賑やかだったけど、高級ワインに、豪華なおつまみ、そしてマキノの手料理。


 今宵は打って変わってしっとりと女性だけのガールズトークに。トークのおつまみはもちろんマキノと優作のこと。


 マキノはみんなに吊るし上げられちゃって、みんなが知るはずもない情報を知ってたり、なんだかいろいろ筒抜みたいで、………話の出処スマホを買ったばかりの珠代だったりして。


 散々マキノのコイバナを言わされて、次は話は浜と永吉との馴れ初めからの話になるの。


だけど………。


 マキノを除いた四人は目を真っ赤にして永吉との話を聞いていたわ。そんなこんなで夜も更けていき、各自自分の部屋に戻るかと思えば、結局雑魚寝状態になっちゃって。それでもみんななかなか寝付けないみたい。♥





「ねぇ、マキノ明日も泊まっていきなよ。」



「そうしたいんだけどさ、明後日にはお味噌の仕込みがあるし、日吉さんだってお店開けないといけないから。また来るよ。」



「マタマキノノ家ニ遊ビニイキタイナ。」


「もちろんよ、ぜひ遊びに来てよ!」


「いいかもな!社員旅行をマキノの街にすっか!」


「あはは、大所帯ね、楽しそう、里乃ちゃんにもっと料理教えてって言われてるから、シゴいてやろうかな。」


「それにしても、なんでマキノはそんなに料理のレパートリー多いの?」



「そうなんだよ、施設からずっと一緒にいたけど、料理なんて誰もに教わってないのに。マキノだけなんか料理学校に行ってたみたいにサクってつくちゃうんだよなぁ。」



「たぶん、子供の頃、間借りで住んでた家のご夫婦がお店していたからかな?」


「そうなの?初耳よ。」


「だって言ってないもん。」


「お店って何屋。」



「お弁当屋さんの二階におかぁさんと一緒に住んでいてね

おかぁさんはそのお弁当屋さんで働いていたからかな。」



「そうなんだ、だからずっと見ていたってこと。」



「そこのおじさんとおばさんに可愛がられていてね。

保育園のころは帰ってきたらニンジンやジャガイモの皮むきしていたの、それが初めかな。」



「ええええ!それって幼児虐待じゃっん!」



「違うよ!私がお母さんの真似したくておじさんに「あたしもやりたい!」って泣きついて、おじさんがやってみるか?って教えてくれたんだ。

そのお家お子さんが居なかったから、まるで自分の子供みたいに可愛がってくれたの。」


「へぇ、だからマキノは初めから料理ができたのか。そのお弁当屋さんってまだあるの?」


「うん、お母さんが亡くなってからすぐに施設に行ったから…それから行ってないんだ。」


「えっ、ねぇ、店の名前わかる?」


「えっと。たしか、ベンケイとか言ったかな。」


「場所は?」


「横浜市の。。。」


「サーチしてみたけど、ごちログには載ってないみたいね。」


「まだ残っているのかな?」





♡マキノがあさひに出会う前、小海と二人で暮らした仕出し屋の2階。

記憶の中ではそんなに大きなお店じゃなかったけど、とっても大切な記憶を手繰り寄せるように思い出していったわ。

うとうとしていた浜にマキノは声をかけてね。♥





「おばあちゃん、明日だけど、あたし昔に住んでいたベンケイってお店に行ってもいいかな?場所もうろ覚えだから、おばあちゃんは日吉さんと先に帰ってもらっていい?」





♥浜は寝返りを打って、マキノの顔を見ながら。♥





「マキノちゃん、うちも付いて行ってええかな?マキノちゃんが小ちゃい時に暮らした街をみてみたいな、日吉も言うたら付いてくるやろ。」


「でもいっぱい歩いたしさぁ、おばあちゃん疲れてない?」


「かわいい孫のためやったら、たとえ火の中、水の中やよ。」


「………」


「あれっ?みんな寝たの?いつもなら、独り占めとか、えこひいきとか言って騒ぐくせに!」


「今日みんな楽しそうやったから疲れはったんやわ。」


「みんなの笑顔見られて、東京に帰ってきてよかった。そろそろわたしも寝ようかなぁ。おやすみなさい。」





♡みんな布団に顔を埋めてマキノと浜の話し声を聞いていたの

それはとても優しく、暖かく、まるで子守い歌を聞いているみたいに優しい気持ちにさせたの。

 こうやって、みんなで雑魚寝していることに懐かしかったあの日のことをまた思い出していたみたいね。♥

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