第29話 全員集合!




♥ホテルからタクシーに乗り込むやいなや、あさひに電話を

すでにもう出来上がっている感じで周りに笑い声が飛び交っていたわ。♥





「あさひ!いま終わった、居酒屋日吉でしょ、あと15分でつくから。」


「ああ、マキノぉ、まってるで、はよいや。」


「えっ、うん、すぐ行くわ。。。(なんで、あさひは竹生弁なの)」





♥タクシーが居酒屋日吉の前に泊まると、莉央がマキノを外に押し出して♥





「早く行きなよ、みんな待ってるんでしょ、お金払っとくから。」


「ありがと、莉央ちゃん!」





♥マキノはお礼をいうと一目散に居酒屋日吉のドアを引いたの。♥






『ガラガラガラ!』「あああ!おかんだ!おかん!ひさしぶり!」





♥あさひ、ひなつ、いぶき、さくらの四人が玄関のマキノを取り囲み、

くるくるマキノの周りを輪になって回りながらハグしているわ。♥





「おかえり、マキノまってたで、さぁ、はよ、食べよ。はよぉ」


「ちょっと、ちょっと、待ってよぉ。」




♥マキノが16歳から9年間。辛い時も、悲しい時も、そして嬉しい時も

ずっと一緒に寝食を共にしてきた戦友がマキノを取り囲んでいたの。


 この街にきて一番の嬉しそうな笑顔で感情を爆発させているマキノに

隣のテーブルで、もう出来上がっている弁天味噌のメンバーもまるで我が子を見るかのようなやさしい目でマキノたちを見ているわ。♥





「浜さん、日吉さん、珠さん、みんな、ただいまぁ。」



「ええから、ええから、今日は大騒ぎしてかまへんで。

あっ莉央ちゃんもお疲れさん、莉央ちゃんこっちくるか?」



♡マキノたちが玄関先で大騒ぎしていると、莉央は気を使ってそっと弁天味噌の女たちの方に行こうとするんだけど、カウンターの隅で出来上がっている一夫を見つけるのね。♥



「あれっ?お父さんいるじゃん!なに泣いてんのよぉ!もう酔ってるの?」



「あっ、莉央も来たか。お父さんはいま猛烈に感動しているんだ!

この幸せをアテに、こそっと隠れてのんでいるんだよ。」



「あの日吉さん、マキちゃんの代わりに、何か手伝いましょうか?」



「ありがと、一人で大丈夫だから莉央ちゃんも楽しんでいきなよ。駆け付け一杯飲むかい?」



「日吉さんごめんなさい、このあと車出す用事があってお酒飲めないんです。

ウーロン茶もらってもいいですか?

じゃぁ私は泣いているこのおじさんの面倒みようかな。浜さん、お父さんの横に座りますね!」



「あはは、娘が隣やったらいいお酒になるなぁ、よかったな一夫。」





♥マキノは長テーブルをメンバーの5人ですわっている。

背後の小座敷には弁天味噌の女たちが陣取りカウンター席には伊香親子が。


 できた料理を莉央が受け取ってbeni5のテーブルまで持ってきて。♥





「はじめまして、なんだか夢のようですね。みなさんにお会いできるなんて。」


「あっ、そう。この子が伊香莉央いかりおちゃん、いつも親切にしてもらってるんだ、めっちゃかわいいでしょ。」


「はじめまして、あなたがいつもおかんが自慢している、莉央さん?

ほんとかわいいね、いかにもモデルさんだね。」


「ええ、といっても、いまは地方局の食レポのお仕事だけですけど。」


「そうなんだ!なんならさ、莉央ちゃん新メンバーにして再結成しようか!」


「ちょっと、からかわないでくださいよ。」





♥楽しい会話が響き居酒屋日吉は女たちの笑い声で包まれていたの、まさに女の園になっているわね。カウンターの隅にメガネのおっさんがいるけど。♥





「ねぇねぇ、おかん、見たよ、あれ彼氏、だよね。」


「えっ、何のことよ」


「マキノサン、ズルイデス、彼氏ガデキタ時ハ報告スル約束デシタヨネ!」


「ねぇ、何猿なの?」


とは違うわよ!」





♥メンバーの中で恋愛妄想体質の米原まいばらいぶきが、その妄想を膨らませ歌劇風に一人芝居を始めるの。♥





 マキノは愛する彼氏のために小雨降る中深夜ずっと帰りを待っていた

決してねむることなく、ただ彼氏のことを心配して

朝日が照らす中、彼氏は人命救助してそして彼女の前に立つ。


「ああ、マキノさん君がいたから頑張れたよ。」


まきのは彼氏の手を取りそしてまっすぐに瞳を見上げながら熱いキスをかわして


「無事でよかったわ、心配していたんだから。」


そういうと、彼氏はマキノをぎゅっとだきしめて。


「俺と結婚してくれないか?」


ただ、プロポーズの言葉にマキノは頭を縦に振って返事をする

生まれたばかりの暖かい太陽がの光が抱き合う二人を照らしている

嗚呼ああ!なんてロマンチックなんでしょ。


…だよなぁ、マキノ!」



「いぶき!何一人芝居してるの! だいぶ脚色されてるけど

キスなんかしてないわよ!つか、なんでそんなことまで知ってんのよ!」





♥四人が一斉に奥座敷で飲んでいる珠代を指差した。

マキノはいまやっと気付いた、現地にいないとわからない現状をみんなが知っている理由を、珠代がこの街のゴシップ誌だということを思い出したの。♥





「珠さん!なんで言いふらすのよ!めっちゃ恥ずかしいじゃん!」


「若い二人のロマンスとかぁ、ドキドキするやんか!」


「ほやで、マキノも素直になって呑も。呑んでハッピーになったらええやん。」


「つか、あさひなんであんたさっきから竹生弁なのよ!」


「そらそうやろぉ、あちらのお姉さま方と飲んでたらほうなるわな。」


「ソウデス待ちキレナクテ、1時二ハ着イテシマイマシタ。」


「あんたら、どんだけ飲んでんの!つか、なんで、あさひそんなにこっちの言葉に馴染んでるのよ、私だってまだ馴染んでないのにぃ。」


「ほら、うちは女優もしてたさかいに、すぐに言葉には馴染むわいな。」


「ほんまあさひちゃんこっちの言葉すぐに喋れるようになってすごいんやで。」


「あ~もう、なんか私も飲みたくなってきちゃった。でもお風呂まで運転しないといけないし。日吉さんとりあえずお茶いただいてええ⤵︎ですか?」


「あっ、ええ⤵︎→ですかって、なんかイントネーションおかしない?ええ⤴︎→ですか?やろ。」


「うるさいなぁ、あさひ!あんたの馴染む速度が異常に速いだけでしょ。」





♥先に来たあさひたちは、もう四時間は飲んでいるよね、

出来上がったメンバーの楽しそうな声を聞いて、やさしい笑顔をする浜。


 マキノの声がいつもより楽しそうで、こうやって仲間に支えられていたんだとわかるとなんだか嬉しくなったみたいね。


 マキノたちのテーブルに莉央も加わって、さらにかしましく盛り上がっていくね。♥





「あのぉ、さっきからみなさんが時々マキちゃんのことをって言ってましたけど、何でですか?」



「ああ、それね、私たちずっと寮暮らしでね、よそのグループってお互いがライバルっていうか、結構プライベートはしっかりしてるんだけど…。


 うちはみんな仲良くてね、仕事も普段もあんま変わりなくてさ、でも面倒くさいことは、おかん、あっ、マキノがやってくれてたの、寮母さん的な?


お腹減ったらいつでも何か作ってれててね、それが、すごく美味しいのよ。なんていうのかなお母さんの味的な。だから私たちはおかんって呼んでいたの。」



「だよね、だって、あんたら仕事から帰ってきたらジャージのまま

グダグダしてたじゃん、あたしだってらくしたかったのに!」


「ごめんね苦労させて、ほんだけおかんには頭があがらへんにゃわ、うちら。」



「マキちゃんって、ずっと世話焼きだったんだね。」



「ソウデス、オカンの玉子焼キヒサシブリニ食ベテミタイデス。」



「そうそう、莉央ちゃんオカンの料理たべたことある、すごく美味しいんだよ。」



「ふんっ、何よ、作んないもん!」



「まきのちゃん、ほれはあかんわ、うちらゲストやろ、お客さんや、もてなしてくれなあかんがな。」



「てか、あさひ、ネイティブジモティじゃないの?方言うますぎ!」



「えーい、わかったわよ、作ればいいんでしょ。」



「やった!玉子焼、玉子焼、玉子焼!」



「あんたら子供か、作るから待っててよ!」





♥あさひが莉央の耳元でコソコソ話しているね♥





「マキノは下手に出たら何でもしてくれるから、覚えておくといいわよ、かなり単純だから。」


「みたいですね。あの、あさひさんのことを姉さんって呼んでいいですか。」


「よし、許す。」


「ははぁ。」


「日吉さん、コンロ借りていいですか?つか、このままじゃ汚れちゃうから、浜さん割烹着を借りますよぉ。」


「奥の引き出しの二番目に洗濯したやつあるやろ。」





♥マキノは柱割烹着を着て玉子を焼き始めたの、その仕草は手際よく、日吉も驚いた顔で見ている。


 マキノはまるで料理人かのように厨房をつかって玉子を焼いていく

一挙手一投足が美しい流れであっという間に四人分を焼き上げてしまう。


 色鮮やかな黄身の色を残しながら、こんがりと焼けた表面、ふつふつ半熟の囁きを奏で美味しい香りが湯気となって天井にのぼっていくわ。♥




「これこれこれ!おかん!食べていいよね、つか、食べる!」




♥四人が卵焼きを頬張ると、日吉は隣に並びマキノにたづねたの。♥




「マキノちゃん、卵焼きにお酢入れていたよね、あれって誰からか聞いたの?」


「えっ、お母さんが教えてくれたんですよ」


「あっ。そう、珍しいなぁって思ってさ」


「そうなんですかね、でもああやって作るとみんな喜んでいますよ」


「マキノちゃん、僕も一口もらっていいかな?」


「ええ、端っこしか残ってないですけど、ちょっとまってくださいね、もう一回焼きますから」




♥そう、もう日吉の目には見えていたの、マキノの動きが自分や父の永吉と同じだってことを。

料理人の感覚というか、いやきっと「血」なんだろうな。


 日吉と小海は永吉から玉子焼の作り方を教わっていたんだ、

小海の方が覚えが早く、日吉は小海に追いつこうと思い隠れて練習していたわ。


 誰よりも小海のことを近くで見ていた日吉だからこそ、所作が自分と同じ流れだと察知したんだよね、小海の直伝なんだろうなって。


 ちょうどその時玄関先に運命を背負った黒いスーツを着た男が、日吉をたづねてきたの。♥





「あっ、今日ちょっと、あの。」


「すみません、一刻も早く伝えたくて。直接お邪魔してすみません。」





♥黒づくめの男は玄関先で日吉に耳打ちを♥





「小海さんのことがわかりました、また改めてお邪魔します。」





♥男がスッと玄関から出て行くと、日吉は男をおいかけて出て行ったのね。

そして莉央がぼそっとつぶやいたの。♥





「たしかあの黒い人、この前、竹生駅前の喫茶店で日吉さんと話してた人だ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る