第11話 弁天味噌保存協会
♡マキノが
浜は自分の孫に接するかのように丁寧に指導していくと、飲み込みの早いマキノはどんどんと昔からも守り続く手法を覚えていったの。
浜は…丁寧というか、なんかデレデレだね。
もちろん浜がそんな風にマキノに接しているのは、ここにいない小海とダブっていることもあるんだろうけど、一緒に作業しているメンバーも昔のことを思い出しながら暖かい目でマキノを応援しているわ。♥
「すごい量のお味噌ですね。これはパック詰めしないんですね。」
「ああ、これは県のレスキューさんに届けるんやわ。マキノちゃんちょっと納品てつとうてくれへんかな?」
「もちろんです、このお味噌をどこに運んだらいいですか?」
「うわぁ。マキノちゃんそんなに重たいもん一人で持ったら腰
「そうなんですかね?これくらいなら。へーきですよ」
「見かけによらんと、すごい力もちやね。」
「えへへっ、ばか力だけはあるんですよ。」
「じゃぁ行ってきまぁす。」
♡30キロの味噌樽に入った味噌をいとも簡単に持ち上げ、珠代が運転する軽バンまで運ぶマキノを見てみんな目を丸くしているね。
そりゃそうよね、線は細いのにこんなに重いものをいとも簡単に持ち上げちゃうんだからね。
で、その県の水上レスキュー隊なんだけど。
大きな湖の警備をしている組織で、月に一度30キロのお味噌を隊の詰所にとどけているの。
レスキュー隊は交代制で、毎日10人ほどの隊員が慌ただしく湖の安全管理に努めているわ。
その訓練たるや過酷で、走り込みから、器具をつかったトレーニング、とくにきついのが真冬でも行われる水中訓練。
冷え切った体を温めるために、隊員交代で豚汁をつくては訓練後のご褒美として食べられてるわけ。
ほんのり甘い風味でコクのある弁天味噌は隊員にとっても重要な食材なんだ。
マキノは珠代の助手席に乗り込んでお味噌の納品に向かったの。♥
「マキノちゃん、もう半年になるけど、この街はどうや?」
「ええ、だいぶ慣れました。」
「自分探しの旅してんにゃろ?どうや。ここに腰でも据えてみたら?」
「そうですねぇ、なんか都会よりも合うっていうか、
あの、ばかにしてる訳じゃないですよ。、空気も水もおいしいし、
のんびりしているからなんかズルズルと居座っちゃっています。」
「ほりゃよかったわ、こっちで結婚して住んだら?孫の優作とかどうや?ええ子やよ。」
「優作さんって、缶詰さん、いやいや。あはは。(*´ω`*)」
「優しくてええ子やでしゃべったことあるもんな。ところで缶詰ってなに?」
「いいえ、なんでもないです。」
「珠さん、自動車の免許って取るのって時間かかります?なんだか免許欲しくなってきちゃいました。」
「そうやねぇ、田舎やから、車はあったほうが便利やわ。」
「免許を取りにいこうかなぁ。」
♡交差点を曲がると湖が一望できるバイパスに乗るの。
バイパスを進むにつれて標高がどんどん上がって行き、有料ドライブウエィみたいに、空を走るような高さで湖の対岸までくっきりと見えるの。
バイパス国道をトコトコと走り山頂付近インターまで上り詰めると、まるでジェットコースターのように、湖まで一気に坂道を駆け下りてゆくんだ。♥
♡レスキュー隊の施設はプールや鉄棒など、まるで学校のような施設で、
駐車場につくとお味噌の納品。
マキノは車から台車をとりだして30キロの味噌樽をひょいって、いとも軽々と台車にのせちゃうの、珠代もびびってるわね。
そのままガラガラと施設の裏まで運び勝手口で呼び鈴を押すと扉が開いたの。
そこには昼間勤務している隊員たちが訓練前の机作業をしていたわ。
味噌を運んできた珠とマキノを見ると、隊長らしきヒゲの人物が挨拶してきたの。♥
「弁天味噌さんいつもありがとうございます、隊員に奥まで運ばせますので。安曇川!安曇川はいるかぁ!」
「はぁぃ、今行きます。「ガラガラガラ!」わぁああああ!」
♡部屋の奥で缶詰が転がっていく音が聞こえてくる、隊長も「あちゃ~」っと残念そうな顔をすると部屋の奥から隊員服に身を包んだ一人の男性が出てきたわ。
背も高く、体格はいいものの、そこはかとなく残念なオーラが漂っている、
その男性隊員とマキノの目があったんだけど。♥
「!あああああ!
♡そう何を隠そうそこにいたのは、迷子になったマキノを車に乗せて助けた優作だったの、祖母の珠代はふふふと笑いながら、ヒゲ隊長は初めて顔をあわせるマキノを珠代にたづねたのね。♥
「あの、こちらの女性は?」
「はい、
「ええええ!」
♡珠代の一言で詰所のみんながひっくり返るほど驚いているわ。
とくに優作がいちばんびっくりしているわね。
浮いた話の一つも無い「優作の嫁」発言に、詰所の時間が止まってしまったの。♥
「冗談ですよ、こんなできた子が優作の嫁になんかきませんよ
いまウチを手伝ってくれている、高島マキノちゃんです。
年寄ばかりで味噌樽運ぶんもキツいんで
「はじめまして、あたし高島マキノっていいます。ちょっと珠さん、みなさん驚かれているじゃないですか!」
「冗談や、じょうだん」
「ハハッそうですか、さすがにびっくりしました。私は滋賀県水上レスキューの隊長をしております、
隊員にお味噌を部屋の奥にもっていかせますので。」
「いえいえ、ウチの商品なんでもっていきますから、どちらにおきましょうか?」
「いま隊員に運ばせますね、女性がひとりで持ち上げるなんてなんて無………ええええ!高島さん。」
♡隊員でも持ち上げるのに大変な味噌樽をいとも簡単に持ち上げてケロっとした顔をしているマキノ。全隊員が見た目のギャップとの違いに驚いているわ。♥
「いいえ、僕が運びますから。重たいでしょう。」
「そうですか。うん、そうですね。ちょっと重たいですね。」
「ちょっとって……そこに置いてください。」
「はいっ、あの、この前はありがとうございました、きちんとお礼もできていなくてすみませんでした。」
「そんな、気にしないでください。あれくらいのこと。」
「いいえ、本当に助かりましたから。」
「………あのぉ話を割ってすみません、高島さん。安曇川隊員とは。おしりあいですかな?」
「ええ、迷子になって困っているところを優作さんに助けていただきました。」
♡マキノが軽々と持っている樽を台車の下に置いたの、そして優作がその樽を持ち上げようとするも……。♥
「よいしょっと、ううう!」
「何だ!安曇川!腰を入れろ!ここにおられるお嬢様に笑われるぞ!」
「はぁぁい。」
「また、優作は隊長さんに叱られているのかいな。」
「珠さんの優作さんが隊員さんなら言っといてくださいよぉ。もう。イジワルなんだからぁ。」
♡優作がモタモタと味噌樽を運んでいる姿を、マキノは心配そうにみている。
よたよたと歩く姿に、眉毛にしわを寄せて
それをニタニタと笑みを浮かべてみる珠代。
ほのぼのするような、ハラハラするような人間模様だけど、なんだかみんな幸せそうだね。♥
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