第08話 缶詰王子




「ああ、のど乾いてきちゃった、なんか飲み物でも買っていこうかな

あそこのスーパーみたいなとこに行こうっと。」





♡自転車で新鮮な世界を楽しんでいるマキノが地元のスーパー「鳩マート」に入りペットボトルのお茶を手にとったの。


 そしていてそうなレジに並んだんだけど、レジ待ち前には背の高くてちょっと頼りなさそうな男性のカゴの中には、レトルト食品や、飲料水、缶詰が山盛りになっていたのね。


 「あっ!缶詰が落ちる」って思った瞬間とカゴから崩れ落ちマキノの足元に転がってきたの。


 ドラマでよくあるパターンだけど、「あの、これ落ちましたよ、胸キュン!」ってほっぺたが赤くなるようなシチュなんだけど。。。そんなこともなく。♥





「あっ、落ちましたよ。」


「ああ。す、すみません、買いすぎちゃって。

拾っていただいてありがとうございます。お買い物ってお茶だけですか?」


「あっ、はい。」


「じゃぁ、先にレジしちゃってください。僕の時間かかりそうですから。」


「えっ!いいんですか、すみません。」






♡マキノは落ちた缶詰を山盛りに積まれた上にちょこんと置いてあげて

今にも崩れそうなカゴの中を、ハラハラしながらみている。

お先にと言われた瞬間。♥




「コロンコロン。」


「あらっ、また落っこちちゃった、それにしてもすごい買い物の量ですね。」


「あははは、あの。地区のなんですよ

子供やお年寄りがいっぱい来ますからその用意で、あああ!」


「コロンコロンコロン。」


「あっあたし拾いますから、そんなに多くの買い物一人で大丈夫ですか?

あの、手伝いましょうか?」


「気にしないでください、レジ空きましたよ。」


「なんか申し訳ないですが、ありがとうございます。」




♡お茶一本だけレジで精算して店を出ようとしたマキノだけど、やっぱり缶詰くんが気になっちゃって。

 やっぱりまだ、コロコロころがしていたみたいで、チャップリンの映画みたいにコミカルで面白いんだけど。


 レジを済ませたマキノの目の前をお年寄りの夫婦が買い物をレジ横の段ボールの箱に入れて通り過ぎたの。マキノはとっさに廃棄段ボール箱を貰って、そんで缶詰くんが精算を終わった直後に段ボールをもってきたの。♥




「あの、袋に入れたらまた転がるかもしれないんで、この段ボール箱に入れたらどうですかね?」


「えっ、ぼ、ぼ、僕のこと待っていてくれたんですか?箱までっもらってきてくださって。」


、なんだか缶詰が気になって、それにあまり落としてヘコんでいたら景品で貰った人はがっかりするじゃないですか。」




♡あーあー。缶詰くんマキノの「」にやられちゃったわ。

ダメだよ、こんな田舎の純朴そうな男性にその「」刺激が強くてハードすぎるって。♥




「あの。あたしお手伝いしますね。」


「あっ。は、は、は、は、い。」





♡マキノはダンボールのスペースを考え、無駄なく効率的に缶詰くんが買った景品を詰めていく。

 その様子は、なんだったっけ?上から凸凹デコボコのブロックが落ちてきて隙間を消していくゲームみたいなやつね。

 マキノは手際よくどんどん商品を詰めていき、あっという間に段ボールがいっぱいに、入りきらずに溢れちゃった分を袋に詰めてあげて♥





「あのぉ。外までなら袋を持ちますよ。」


「なな、なんか、逆に気を使ってもらって、すみません。」





♡缶詰くん、マキノのことがかなり気になっているみたいねぇ

そりゃそうよね、オーラは無いけど元トップアイドルだもん。

 買物カートに段ボールを乗せて車まで運ぶ缶詰くんと、楽しそうに袋を持って寄り添う感じのマキノ。


 彼はすごく緊張してガチガチに、なんかちょっとかわいく見えてきた。

ギクシャクとした一方通行の会話が結構爆笑もんで、こりゃおもしろいわ。♥





「あの、どちらから、来られましたんでしょうか?」


「えっと、東京です。ちょっとえんあってここに来てて。

縁っていうか何だろう、そう自分探しの旅行的な…そんな感じです。」


「そそ、そ、そうなんですね。あまり見かけない人だとおもいまして

でして。その、あの、自分を探しているんですね。」


「クスクス。楽しい方ですね。うん、ここっていいところですね

緑は綺麗だし、湖もキラキラしてきもちいいし、風は優しいし

空気は澄んでいるし、人はステキだし、ねっ。」


「あがとうございました。たすかりましたっ!」(敬礼)





♡あーあー、缶詰くんは舞い上がって敬礼ちゃってるよ、

マキノは軽く指を折り曲げてグーの腹で口元を抑えてはにかみ笑いしている

そのポースやばいよ!(昔でいうぶりっこね)


 彼が乗ってきた軽ワンボックス前で袋に入った景品を手渡したの

そしたら彼は段ボールの中から一缶とりだしてマキノに手渡したのね。♥





「あの、これ持って行ってください!」


「いいですよ、それに景品でしょ。」


「いいんです、もらってください、おねがいします。」


「カンパン?………あ、ありがとう。ごさいます。」


「ぼぼぼく、いきますね。じゃぁ、お元気で!」


「缶詰さんも運転に気を付けてね。」





♡もう!あいつちゃんと運転できるかな?だいぶ浮かれてるよ

缶詰王子が駐車場から出てこうとすると。。。。


「プスン!」


 あーあー、車エンストしちゃったじゃん、本当に運転大丈夫なの

お互いが車のサイドガラスごにし目が合い、マキノもおかえしとばかり敬礼して見送っているね、缶詰王子きっと一日中ふわふわするよね。

………絶対に。♥

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