第51話 晩夏の横浜
「ああ~新幹線のアイス美味しかったけど、硬かったねぇ。」
「ほんまや、スプーン折れてまうかとおもてもたわ。」
「そろそろ、新横浜だな。探偵さんお墓まで案内してくれるって。」
「あの探偵さん、そこまでしてくれはるんかいな。」
「この前、スパイみたいに真っ黒なスーツ着てましたよね。」
「まさか、こんな暑いのにスーツなんか着てないやろ。」
「新幹線の改札口で待ってるってさ。」
♡新横浜で電車から降りた途端…
「もうわぁ~~~ん」「あづい!」
夏でも涼しい竹生から横浜に足を下ろすと熱気、湿気、
その他もろもろが三人の体を包み込んだの。♥
「さすがに都会は暑いなぁ。」
「ほんまや、よう、みんな平気な顔してはるわ。」
「あたしも、この暑さ忘れてました。あれっ、着信が10件も何だろ?」
♡マキノはスマホのマナーモードを解除すると着信が10件も入っていたの♥
「あれっ、あさひから。なんでこんな時間に電話かけてきてるの?」
♡マキノはホームの階段を降り改札内のたまり場で、あさひの着信にリダイヤルすると、視線の先の柵の向こうであさひが手を振っていたの
マキノはびくりしながら柵越であさひと会話を交わしているね。♥
「げっ!なんであさひがいるのよ!」
「てか、何回も電話したんだから、出てよ。」
「マナーモードにしてたから、つか、なんでここにいるの?」
「うん、営業で外回りの途中よ。」
「ふーん、みんなは?」
「し、仕事してるわよ。」
「なるほど、追い出されたのね。」
「えへへ、そう、バレたか。あの黒いスパイもここにいるよ!」
「スパイって、ああ、探偵さん。お母さんのお墓に案内してくれているんだって。」
「てか、何で?…あたしたちがここにいるって、あさひに言ってたっけ?」
「ふふふ、マキノくん、私にも有能なスパイがいるのだよ。」
「あっ………莉央だね。」
「そう、ここに着くだいたいの時間を教えてくれたのよ。」
「それはどうも。ああっ、改札出てそっちに行くわ。」
♡マキノ改札を出てあさひと挨拶のハグをしたの、先に改札を出た浜たちは
あさひの後ろに立って笑っているわ。
よく見ると、日吉の後ろに黒いスーツの男性が立っていたの。♥
「あ、っ、探偵さん、先日はお世話になりました…てか、暑くないんですか?長袖の黒のスーツ。」
「ああ、これが私のトレードマークなんで。」
「そうですか。。。今日は案内おねがいします。」
「ねぇねぇ、マキノわたしも付いて行ってもいいでしょ。」
「あんた仕事中でしょ。」
「これも仕事だもん、おばあちゃん!マキノちゃんがいじめるぅ。」
「困った時におばあちゃんに甘えるな!」
「えっ、もう浜さんって呼ばないんだ。」
「ほな、あさひちゃんも一緒にいこうか?」
「やったぁ!」
「何であさひは、人の気持ち掴むのあんなにうまいんだろ…関心するわ。」
♡黒スーツの探偵がお墓までの道中のタクシーを用意しようとしていたのね。♥
「ああ、そうなんですか?五人乗りのタクシーご用意しますね。」
「それは大丈夫、
「うちの車って?なによ。」
「いいから付いてきて。」
♡あさひをはマキノたちの先頭を駅出口に向かって歩いている
あさひはなにやら電話をしているみたいで急に颯爽と歩き始めたの
あさひの先導でロータリーに着くと黒くて大きな車が停まっていて
車の脇に背の高いスーツの男性が立っていたの。♥
「お疲れ様です。新(あらた)社長。」
「高山さんも暑かったでしょ、車の中で待ってくれればいいのに。」
「ありがとうございます、さぁ、皆さんご乗車ください。」
♡あさひがバスみたいな大きな車にみんなを乗せてお墓の住所をたづねたの。
探偵が行き先を言うと、運転手の男性がスマホに行き先を語りかけた瞬間、
ダッシュボードから人の声が聞こえてくるの。
それにはみんなびっくりしてしまってね。♥
《行き先地入力いたしました。縁光寺、ここから20分、道路舗装による工事渋滞のために、ルート3を選択しました。》
「あ、あさひ、車が喋ってる!すごい、てか、あんた、本当に社長なの?」
「失礼ね、インターネット販売から、ソフトウエアの開発、翻訳の自動化など、何でもやってるんだから。」
「ありゃ、あさひちゃんはやり手なんやね。」
「おばあちゃんにそう言ってもらえると嬉しいです、高山さん、目的地までお願いね。」
「はいわかりました、社長。」
♡みんな狐につままれたみたいに「キョトン」としているわね。
数ヶ月前にマキノと取っ組み合いになっていた子供みたいなあさひが
すらっとした女の顔を覗かしているからね。
人の心を天才的に掴むことのできるあさひは、これから成長しそうな社長や政治家、教育者、などなど、著名人と多くのパイプをもっているみたいで
ビジネスニューリーダーの旗手として注目されているわね。
隣に座っているマキノは、小声であさひと話しているんだけど。♥
「あのさ、あさひ、えっと、あんたのことを、なんて呼んだらいいの、社長って言ったらいいの」
「なに
「でも、なんか、そのすっかり、もう社長さんじゃん。」
♡この小声を聞いていた運転手が後部座席に向かって口を開いたの。♥
「すみません、社長から皆さんのことは聞いております
私のことは気にしないでいつものようにしていてください。」
「はい、なんか、すみません…」
「ほうか、あさひちゃんは会社の大女将なんやな。
ほら、ビシッとしなあかんけど、うちらの前では楽にしたらええやん
なんせうちはあんたのおばあちゃんやからなぁ、おっちゃんもおるけど。」
「おばあちゃん!、大好き!」
「ほらまた!甘える!」
「あっかんベーだ!」
「あっ、あさひちゃん悪いんやけど、どっか果物屋さんに寄ってもらえへんやろか?小海はメロンが好きでな、買うていってやりたいんや。」
「ああ、おばあちゃん、言っておいてくれたら、こっちで用意したのに。」
「ありがとな、でも、これは、小海の親友から是非にってお金をあづかってんのやわ。その子も今日来たい気持ちやったんやけど用事でこれへんかってな。」
「そうなんですね。マキノのお母さんって愛されていたんだね。」
♡運転手が気を利かせてくれたのもあって、マキノが知っているあさひにもどって、車内で騒いでいるわね。
運転手もこころなしかうれしそうにしているみたい。
地元の有名な青果店で大きなメロンを買ったんだけど……少し足りなくて。
たしかに一個3万とか。超、超、超、高級だわね、わたしもよくお供えいただくけどこんな桐の箱に入ったメロンなんで見たこと無いわぁ!
小海へのお供えを買った一行は再び車に乗って10分
大きなお寺の駐車場に止まったの。
黒服の探偵がお寺のインターフォンで話していると住職がでてきて、合同埋葬されている大きなお墓に一同を案内してくれたわ。
夏の日差しが真上から照りつける中、あさひは日傘を差してしゃがんで手を合わせる浜に太陽が当たらないように日陰をつくっている。
日吉は風呂敷からメロンを取り出してお墓の前に供えたの。♥
「小海、ごめんな。なかなかあんたの顔を見にこれんかって。
ほんまはあんたを連れてかえりかったんやけど、もう、どのお骨があんたかわからへんってことやから、うちを許してな。」
「おかぁさん、なかなか来れなくてごめんね。あたしこんなに大きくなったよ、
みんな大事にしてくれてるよ。おかぁさん!」
♡まきのは小海からもらったネックレスを解き、メロンの横に並べたの。♥
「小海、あのな、お父さん帰ってきはったんやで、マキノちゃんの大事な人を助けてくれはったんや、あんた、そっちで永吉さんに会うたら、ありがとうって言うといてぇな。」
「おかぁさん、おじいちゃんに守ってもらったよ、おかぁさんがおじいちゃんに言って優くんを助けてくれたんだよね。ありがと。」
♡炎天下の中、しゃがんで手を合わせている二人の背中が泣いているの
日吉は浜の、あさひはマキノの背中を撫ででおちつかせていたわ。
セミが大合唱している、陽炎が糸を引いて立ち上がる夏の昼間の出来事。
10分ほど外で手を合わせた一行は、住職に呼ばれてお堂の中でお茶をいただいているの。♥
「暑かったなぁ、あさひちゃん、探偵さん、ほんま助けてくれてありがとなぁ。」
「なに、水臭いこといわないでよ、おばあちゃん。当たり前でしょ、わたしも浜ファミリーの一員なんだから。」
「そうやったな、他のみんな元気にしてはるんか?」
「うん、みんな、おばあちゃんが今晩泊まりに来ることを楽しみにしてるよ、ねぇ、明日って時間あるんでしょマキノ。」
「もちろん、大丈夫だよ。」
「じゃぁ、できたばかりの東京スカイツリーに行こっ。」
「あの高いやつかいな、うち、東京タワーも行ったことないのに、ほんな新しいとこに連れってってくれるんかいな。」
♡無事に浜、マキノ、日吉が墓前に手をあわせたのを見届けた黒いスーツの探偵が会話が終わったところで依頼者の日吉と浜にお辞儀をしたの
そして浜がバッグから封筒をとりだしたの。♥
「あの、では、わたしの契約はここまでということにさせてください。」
「本当にありがとうね、でも、あんな料金でここまでしてくれて、申し訳ないわ。あの、これ少ないけど受け取ってくれへんやろか。」
♡浜は何度も黒いスーツの探偵に封筒を手渡しするんだけど、探偵はそれを受け取らなかったんだ。♥
「いいえ、わたしは依頼を
「ほんでもここまでしてもろたんやから。」
「結構です、わたしはわたしの気持ちに沿ってやったまでのことですから。」
「なに、ちょっと変な人かとおもっていたけど、ちゃんとした人じゃん。
あのさ、うちの会社と契約しない?」
「あの、マキノさんに…お願いしたいことがあるのですが、いいですか?」
「えっ、あたしに?なんでしょうか?」
「あの………」
♡黒い探偵はカバンから四角の色紙をとりだして、マキノの方に突き出したの。まきのはキョトンとした顔をして。♥
「じつは、わたし、ずっとマキノさんの大ファンでして
プライベートと仕事を混同するのはいけないと思ったのですが。
マキノさんの周りの人が幸せになってくれるなら、いいなと思って働かせていただきました。失礼は承知なんですが、………サインいただけませんか?」
「えっ、もちろん、サインなんかいくらでもします!」
「えええ!マキノにファンなんっていたの!」
「私にだっているわよ、リーダーだからって、なんでも自分が一番だとおもわないでねーだ!」
「なに、ちょいジェラなんですけど。、じゃぁ一緒に写真も撮ったらいいじゃん。」
「そうだね、探偵さん一緒に写真撮ろっ!」
「じゃぁ、探偵さん真ん中で。色紙持って!」
「えっ、ちょっと!お二人ともっ!何ですか!」
♡探偵が驚くのも無理ないわね。
マキノのサインをもらった探偵は左右からマキノとあさひに腕を組まれて
ぎこちないけど満面の笑みで。
その後ろには日吉と浜も納まりシャッターが切られたの。
なるほど、だから探偵が親身になっていたのか。でも一生懸命やって、最高のご褒美もらってよかったじゃん。黒いスパイの探偵さん。♥
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます