第14話 素直になれない莉央
♡浮いた話の一つもない孫の優作に、これはチャンスとばかり上機嫌の珠代。
待ち合わせの竹生駅の改札前で、優作が地方創生アドバイザーの
待ち合わせの時間のちょっと前に、モデルのような若干セクシー系の女性が一人、珠代を見て手を振って歩いてきたの。♥
「優ちゃんのおばあちゃん。お久しぶりーぃ。」
「あれっ、莉央ちゃん!へーっ、どこの都会的な女の人かとおもたわ、
えっ、今日は何なん?」
「ああっ、優ちゃんに用事で案内を一旦断ったんだけど、
用事がキャンセルになって、せっかくだしと思ってさ、来ちゃった。」
「なんや、時間ができたんで来てくれたんかいな。
ほれよりなんやほんまべっぴんさんになったなぁ、莉央ちゃんのお母さんの若いころとそっくりやな。」
♡珠代と莉央は顔見知りらしくしばらく話していると、マキノも莉央に向かって軽く会釈をしたの。
なんかちょっとだけ居づらいというか、知り合い同士が仲良く話していてぼっちになったときってなんか気まずいよね。
珠代の後ろでチョロチョロ動いていると、莉央の方から声をかけてきたの。♥
「あの、こちらの方は。」
「ああ、いま弁天味噌作りを手伝うてもりてる、マキノちゃん。
莉央ちゃんにみたいにべっぴんさんやろ、
優作のために案内についてきてあげるって。」
「ちょっと珠代さん!ああ、はじめまして、高島マキノと申します。」
「ああ、はじめまして。優作くんの幼馴染で
かわいい髪型ですね、よろしくお願いします。」
♡ちょっと「ヤンキー臭」のする莉央にマキノはドキドキ、
少しかわい子ブっているマキノに対して莉央もなんかちょっとライバル心メラメラみたいな。
お互い顔には出していないけどね。そんなこんなで優作たちをのせた電車が
ホームについて、そのウワサの先生登場なんだけども。♥
「あっ、ばあちゃん、マキノさんも今日はありがとうね。ってか、莉央なんでお前いるんだよ?」
「何でって、優ちゃんが来てって言ったからじゃん。」
「てか、おまえが俺を巻き込んだんだろ、それより今日って、オーディションだろ?」
「なんか、イメージと違ったからオーディションを蹴ってきたの。」
「なんだよそれ!あっ、マキノさん先生を紹介しますね。こちらにおられるのが、地方創生アドバイザーの虎姫先生です。」
「こんにちは、虎姫、、、、、」
♡珠代と莉央、優作の陰に隠れていたマキノが顔を上げて、その先生と目をあわしたんだけども。♥
「ああああああ!、ええええええ!」
「なんで、あんたここにいるのよ!」
「マキノこそなんでここにいるんだよ!」
「何でって何でよ!あたしはここで暮らしているの。」
「意味わかんないよ、あさひたちは?」
♡優作が連れてきた先生はなんと、マキノと顔見知でしかもアイドル時代に関係がある男。
優作、珠代、莉央の三人はポカンとした顔で二人のやりとりをみている。
ドラマみたいな何かが始まりそうな再会!って感じでなくて、
会いたくなかったみたいな、別れた元恋人的な、感じ?♥
「へぇー、お知り合いみたいですね。さては過去に恋人同士とか、ですかぁ?」
「いいえ、ち、違います!そんなんじゃないですから。」
「マキノさんでしたよね、先生とどんな関係なのかな?」
「えっと、ただの知り合いです。」
♡どうもさっきから、虎姫がマキノがタメで話しているから莉央はちょっとムカついているみたいね。
マキノもなんかあたふたしてなにやら、虎姫との関係をはぐらかしているみたいだし…そして虎姫が爆弾発現をするんだ。♥
「ええ、彼女は、昔一緒に仕事していましてね、beni5のマキノですよ。まぁ、今は活動休止中ですけどね。」
「ちょちょちょ!ちょっと、アンタこんな所で言わなくてもいいじゃん!」
「うそっ…え!ま、まじで!あの、マキノって、「毒子」
♡マキノがあの悪名高き毒子とわかって、莉央は頭に来たみたい。
東京ではまったく花開かなかった芸能活動。
地元の竹生町に帰ってきてから、地方のレポーターの仕事や
ローカルコマーシャルのモデルとかしているんだけど、仕事がこなくて。
それにひきかえ一時期のトップアイドルが、しかも自分の地元で田舎味噌を作っていると聞いて心中穏やかじゃないよね。♥
「そおなんだ、自分でグループ壊しておいて、なになに、都落ち?
ここなら田舎だから優しい人ばかりだとおもって味噌作りの
そんな人に優ちゃんに近づいて欲しくないわね、純朴そうな彼なら仲良くしてくれると。こっちは必死で少ない芸能の仕事をつないで生きてるのに、マキノさんは、東京から逃げてきたの?」
「ちょっと!莉央!おまえがマキノさんのなにを知ってるんだよ!」
「莉央さん、誤解だよ、マキノがグループを壊したんじゃなくて、あれは、お」
「いいから!いいの。それに約束でしょ。だから、もういいんだから。あ、あたし、逃げてきたの。」
「ほら、
♡マキノに噛み付いた莉央だけど、2時間前に電車の中で泣いていたわ。
大阪のローカル番組のオーディション会場で、自分より若い子がすでに決まってしまったって言われて。
莉央が主催者に聞いてみると、スポンサーの姪がすんなりその席に収まっちゃって、その上に
「君って、なんか古くて、
人気チームを空中分解させておいて、そこまでの地位まで行ったのに、
いま目の前に自分の故郷にいるマキノにカチンときてしまったのね。♥
「優作さん、珠さん、ちょっとあたし、帰ります…ごめんなさい。」
「ちょっと、莉央ちゃん!あんた言い過ぎや!
マキノちゃんがどんなに暑くても、どんなに寒くても文句一言もいわんと
頑張ってお味噌作ってんの知らんやろ!
マキノちゃん、ちょっと待ってぇなぁ。優作、ウチ、マキノちゃんおかっけるさかいに、ごめんやで!」
♡莉央もつい、むしゃくしゃした気持ちから、罵った言葉が口からこぼれてしまったことに自分を責めたの。
マキノに過去があったとしても、そこまで傷つけることはなかったんだと。
莉央もマキノに咄嗟とはいえ、放ってしまった酷い言葉の重さに気づきいたたまれなくなり、そっとその場から離れて行ってしまったの。♥
「虎姫さん、すみません。こんなグチャグヤになってしまって、せっかく時間作っていただいたのに。」
「うん、いいよ。それよりさ、この街のことを教えてくれない?
時間もそんなに無いことだし、頭の中に入れておきたいんだ、ここを。
安曇川くんでも名所を案内できるだろ?」
「はい。わかりました。。。」
♡虎姫はマキノに対して何か秘密を持っているみたいなんだけど、それは口に出さずで。♥
「あの莉央のことですけど。タレントしてるんですけど、あまり売れてなくて、つらいこととか結構いわれているみたいなんですよね。きっと何かあったと思います。」
「いいよ業界は揉め事が多いから。
それより、私もつい口を滑らせてしまいましたが、マキノのことは内緒にしておいてもらえませんかね?このあとの私の仕事にも尾をひきそうなんで。」
「なにか、あったのですか?…いいえ、わかりました。」
「ところで虎姫くん、あの莉央ちゃんってさ?君の彼女かい?」
「いいえ、ただの幼馴染です。」
♡優作が莉央のことをフォローしながら、虎姫の百年祭のプロデユースのために竹生町のいいとこを案内してまわる優作。
莉央のこともそうだけど、駅から立ち去ったマキノの悲しそうな顔が
気になってしかたなかったの。♥
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