第2章 浜

第27話 beni5



♡ボランティア炊き出しが終わったマキノだけど

ふらふらと睡魔すいまと戦いながら帰り仕度をしているね。


 帰り道、ボランテイア参加した常連客の男性がマキノを見て

弁天味噌の車を居酒屋日吉まで運転してくれると申し出てくれたの

一睡もしていないマキノは日吉の運転する車の後部座席で眠っちゃったのね。


 後部座席では、珠の肩に少し笑みを含んだ寝顔のマキノが

もたれかかっている。珠はまるで自分の孫を見るような優しい顔で

マキノが起きないように気を使っているわ。


湖から登る朝日をバックに、始発の電車と並走しながら

マキノは竹生町帰ってきたの。♥





「マキノちゃん、お疲れ様やったね、ご飯食べるか?ちょっと寝るか?」


「ああ、浜さん、ただいまです。そうですね、ちょっと寝てもいいですかね?」


「ええよ、部屋に布団敷いいておいたから、少し寝い。」


「ふわぁい、ちょっとだけ、寝ますね。」





♡よろよろと部屋に戻っていくマキノ

普段「ほんわか」しているマキノなんだけど、

イザという時はとてつもない力を出すそんな

不思議なところが魅力なんだよね。


で、目を閉じると夢の中でが。♥





「あの、ボ、ボクと付き合ってください!」




♡今まで、何度か告白をされた事はあったけど

こんなまっすぐな気持ちの告白は初めてだったの。

嬉しくて何度も「告白」が夢の中でリフレインしているみたい。

だって寝顔がニヤニヤついているからねぇ。♥






「♬ ティロリロリン、ティロリロリン♬ 」





♡枕元のスマホが鳴っている。寝ぼけたままスマホを手に取ると、懐かしい声が聞こえてきたの。♥





「ちょっと、なによ、ドラマのヒロインになってんじゃん。ヒューヒュー。」


「はん、えっ、誰?えっ、あさひぃ。」


「ごめん、寝てた?新聞に夜どおし隊員をまっているボランティアの女性って書いてるわよ!」


「えっ、なによ、何の事?てか、何であんた知ってんの?」


「へぇ、かっこいいじゃん、ガッシリとしたガタイに黒いスウェットスーツ、

浜辺で待つ女と朝焼けロマンス。アノ映画かとおもちゃった。」


「ええ、何であんたが知ってんの!って聞いてるのよぉ。」





♡マキノはまだ今朝の事が報道されていることさえ気づいていなかったの。

まぁ、寝起きにそんなこと言われてもってことだよねぇ。♥





「ハローマキノチャンオヒサシブリデス!」


「マキノなに抜け駆けで彼氏作ってるの!」


「ああ、おかん!やったじゃん、結婚するのか!」





♡矢継ぎ早にマキノの昔のメンバーの声が聞こえてくる

各自、思い思いマキノを質問攻めにするのね

寝不足寝起きで圧倒されちゃってるんだけど

2周くらい回って突然あさひが切り出したの。♥





「あのさ、明後日あさってって暇?、みんなでそっち行くわ。」


「ええっ!なによ急に。来るの!えっ、マジでいいよ!時間開けるから。」


「うん、マキノがダメって言っても行く気だったから

もう浜さんには了承とってあるし。

みんなを泊めてあげるって。ねぇ、まくら投げとかしようよ!」


「はぁ、なに言ってんの。なんであんたが浜さんの連絡先知ってんのよ。」


「そのへんは、4月に行った時に電話番号聞いておいたわ。」


「相変わらず、しっかりしてるわね。ああ!ちょっと待って、

明後日ってダメだわ!あたし午後から実行委員の懇親会だ。」


「何その懇親会って?」


「地区のお祭りに協賛してくれるスポンサーさんの接待だよ。」


「あんた、すっかり地元民になってるじゃん。」


「こっちはこっちで、いろいろあんのよ。でもどうしよう。」


「いいよ、勝手にこっちであんたのコトを根掘り葉掘り聞いておくから。」


「はぁ、もう、わかったわよ、なる早で帰ってくるようにするから。」

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