第03話 運命は棒倒し


♡マキノは小学生の頃からの十数年間ず~っと一緒にいたあさひに、自分探しの旅を相談してみたの。

 彼女の人生はあさひが連れて行った「とある占い」でその運命を決めることになるんだけど、その占い師が………まぁいいわ。♥


 


「マキノの自分探しかぁ、そっか…わかった、いい未来がくるように私も手伝ってあげる。


 ノープランで何かを探すのって難いじゃん。

あのさ、起業の相談にのってくれた素晴らしい先生がいるんだけど、マキノもそこで占ってみない?何かの参考になるかもよ。」



 


♡ドSなあさひが盟友のマキノのために一肌脱ごうっていうんだから、友情って美しいじゃない。

 そんなこんなで二人は、今にもつぶれそうなほこりっぽい木造の占いハウスに来たんだけど、その占いがちょっと変わっていてね。♥




 

「マキノっ、ここ!このお店!この占いよ!」


「えっ???。わ、わ、わ「割箸わりばし占い」って何よ?」


割箸わりばしの倒れる方向で将来をみてもらうのよ!すごい当たるんだから!」


「てか、あさひ。あんたの言ってた、会社を作るきっかけになった先生って、ちょっと本当に割箸キッカケで会社立ち上げるつもり?」


「まぁ、いいから、いいから!」




【!!びつくりだよ! よく当たっちゃうよ!!!!割箸占い!!!】





♡占いブースの前にはチョー雑な看板デザインが。

 センスを疑われるような、ダサい書体でつくた品の無い看板がぶら下がっているわね、これを胡散臭うさんくさいっていうんだろうなぁ

いや、それを遥かに通り越して危ないって言った方がいいカモ。


 ブースの中も中でチープな装飾で息が詰まっちゃう。

安そうな黒いテラテラのカーテンで間仕切られいて、傷だらけのテーブル、屋台に置いてあるような、座面が丸でビニール四つ足パイプ椅子。

まぁ、誰が見てもここで占いはしたくないわね。♥


 



「ちょっと!私のことは置いといて、よ~く考えようねあさひ

本当にいいの?ほんと~にいいのかなぁ?」



「まぁ騙されたと思っててもらいなよ、お金はわたしが出すから。」



「お金の問題じゃないわよ!こんな占いで本当にあんたの会社大丈夫なの?って聞いてるの!ほらご覧よあの怪しい看板、ビックリマークだらけじゃん。」



「おじょうちゃん!いや、毛先クルクルのおぬし!失礼なヤツじゃのう

中途半端にかわいい顔して。



 みたところ、失業中かのう……それも派手に失業しておるのぅ

こっちの能面美人とは、もう十数年くらいの仲か?見えるぞ見える。

高2の夏、共に学校に内緒のバイトをし、恐ろしいほどの売り上げたようじゃな。


 くるくるのお主が、はじめてメイクしたのもそのバイトの時じゃな、おうおう派手にメイク失敗しとるのう!おてもやんみたいじゃ!

バイトのあとなしくずしにコンパになって、お主だけナンパされなかったなぁ、ひゃひゃひゃ!」


「はっ!何、なんでそんなに知ってるんですかぁっ!…あさひ話したの!」


「いやいや、その、まぁまぁテキトーに可愛らしい顔にそう書いておるわい。」


「そ、そうですか。」

(ちっ!なんだかイチイチ腹たつな!)



 


♡心で舌打ちなんかしちゃって、まぁ、当たるのは当然だよね。

黒づくめのマントフードの占い師は………


じつは、私が人間に見える神様の技で化けた姿だから。


正直占い方法なんてなんでもよかったんだけどさ、テキトーに割箸が転がっていたんでこれでいいかって、ふふふ。


 そんなこんなで、まるで、今さっき見てきたかのように言葉でマキノをいたぶって遊んでいるわ。

マキノに顔から火が出るほど恥ずかしかったことを洗いざらいぶちけてやったら、ダウン寸前のボクサーみたいにぐったりしちゃって。

もう、私を占いを疑う気持ちも消えてしまったみたいで。♥



 


「これより、尊いおやしろの御神木ごしんぼくから譲り受けた

この霊木の破片で、悩めるお主の行く先を占ってやろう、

御柱おはしらが倒れた方向が吉方位きちほういじゃ!

「ぱたん」……はい!、こんなん出とりますけど!




『お主を必要としてくれる人は西におる!』




ずーっと西へけ!……


えっとね、新幹線はダメよ、在来でね。

朝四時の始発に乗ってね、ずっと西方面向いて。

ああ、途中でシュウマイ弁当なんかもいいわね、んでね。

富士山バックにピースしたりとか自撮りだよ。

あと名古屋で天むすとかイイよね!京都まで行ったらね。


 ホームの渡り通路で肉まん売ってるから、あれ美味しいわよ。

でも電車の中で食べたらヤバイの!匂いが、ちょーヤバ!だから、ちゃんと駅のホームのベンチ食べるのよ、カップ酒なんかと一緒にさ。


……ということじゃ!」



「ええっ!駅構内で肉まん食べるんですか?

ワンカップ片手に、なんか楽しそうですね。

私、何だか自分のミライみつけられそうでワクワクしてきました。」



「はぁっ!見ゆるゾ!見ゆる、おぬしの未来が……

それでね、ホームの渡り通路でぐるっとみわたして、止まってる電車に乗るの。

いい!何回も言うけど、絶対に電車内に肉まん持ち込んじゃダメよ臭いがかなりの、えぐいくらいの、迷惑になるからね。

その電車の終点がね……お前の運命の地じゃ!」





♡そんなことがあって、マキノはいま暗い夜道をトボトボ歩いている

なんかブツブツと文句言ってるようだけど。

 それ以上は手を貸してあげらんないのよねぇ~神様って言ってもさ

何から何まで手伝ってあげることはできないんだなぁこれが。♥


 



「ここどこよぉ、雨降ってるし、傘ないし、コンビニも、タクシーも、

携帯の電池も無いし、なんにも無いじゃん!

 「ぐぅ~~~」 お腹も減ったし。あのインチキ占い、信じた私がバカだったわ。………

 だいたい、割箸占いってなに?なんとなく信じちゃって、言いつけ通りに駅のホームで肉まん食べたけど。おいしかったけどさ。」


 


♡たどり着いた場所が自分の楽園と信じきっていたマキノ

でもね理想と現実は別モノなんだよねぇ。♥


 


「バシャッ!きゃぁ! ……… 」


 


♡通りかかったトラックが歩道のマキノに水をかけて通り過ぎちゃった。

かわいそうにずぶ濡れになっちゃって。

まぁ、よく言う「洗礼」ってやつかな(w)すっかり汚れてるけどね。♥


 


「もうやだ!東京に帰りたい~~~~!」

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