第17話 神様のこと




 さてさて、いつもおしゃべりしている私なんだけど。

こうやってちょくちょく人里に降りてみんなの暮らしを見たり、

地域の精霊と話したり、他の神様と会議したり自由のようで色々と

することがあるの。

あんた達が言うサラリーマンとそんなにかわんないわ。





「弁天様、おらの頭の皿が欠けてしまっただ、直してくんろ。」



 カッパの子供がやんちゃして頭の皿を傷つけてしまってみたいね。



「ちょっと、治すから。ほら。じっとして動かないの!、えいっ!」


「弁天様ありがとうごぜーました。お礼にキュウリでも食ってくんろ。」



あ、ありがと。なぜにキュウリ一本なのか、カッパの子よ…。




 こうやって、地元の精霊、人間たちは妖怪っていってるわね。

ともに暮らしていて、なにか自然災害の予兆があるときは精霊たちが

神に教えてくれて、神通力で災害を最小限に抑えつけたりね。



あっ、またなんか来たわね。えっ?狐の娘。



「すみません、産土神うぶすながみ様、こういう男をこの辺で見かけませんでしたか?」



「えっ、あんた、みない顔ね、ここいらでは珍しい九尾きゅうびきつねの女の子ね。

どれどれ、う~ん、みた事ないな、またなにかあったらカラスを飛ばして教えてあげるから、この帳面にあんたの名前を書いておいて。」



などなど。いろいろする事があるわけよ。ほんと役場の窓口か!っての。



えっ、じゃあ、いつ願い事を叶えてくれるのかって…。



 人間あまえんじゃねー! 



 だいたい私が何でヒトの願い事を叶えなきゃいけないのよ!

あのね。神様ってなんのためにいるか、知ってる?


 ヒトはね、欲が強いからだんだん気持ちが汚れていくの

そのまま放っておくとどんどん悪いのが溜まっていって心が荒れて、

喧嘩や戦争になっちやうの。

その汚れた気持ちを浄化するために私たちがいるのよ。



 神社とかお寺とかで祈る事で気持ちが晴れるでしょ。

それがヒトにとっての一番の幸せなことなの、だから、

私利私欲しりしよくのお願い事なんて千年はやいわ!



 はぁ、すっきりした。ごめん、ちょっと力が入っちゃったね、

私たちはあんたたちが気持ち良く生きていけるようにお仕事をしているの。



神様も縦社会でね、先輩がいたりするのよ。



 私の担当範囲エリアにも何柱かおられるわね。

仕事もそこそこでウチに来て、将棋したり麻雀したりして時間を潰していくけど、

ここはサロンかっていうの!



 ざっと紹介すると、あそこで将棋をしている渋いダンディがイザナギ様。

通称ナギちゃん。

かっこいいわね、この辺のリーダーで。恐ろしいほどの神通力があるの、

まぁ、オノコロ島を作ったヒトだからね。ああ、日本のことね。


 で、対面で相手をしているのが白髭しらひげ様。通称ヒゲジイね。

あのひともウチに来てナギちゃんと将棋をしている。

たまに麻雀するだけど…あまり強くなくてね。



 他にはウチの斜め下の神社に住んでいる、龍神。うん、かっこいいんだけど、

何考えているのかわかんない感じね。あまり顔を合わせないけどさ。



 ざっとこんな感じかな、この地域は神や仏様に守られているのよ。

まぁ、人間には見えないけどね。超超超レアで私たちが見えるヒトもいるけど。

あまりあんたたちには関係ないかもね。



 だから、言っとくけど、願いことしても、聞いてないからね。

そんなことより、こうしたいとか、こうしますとか、自分自身に願掛をけしなさい。

そういうヒトほど手助けしてあげようかなっておもうからね。

心を汚さずに生きていきなよ。



 ああっ!忘れてた、もう一つ。

わしたちは111年ごとに、自分とそっくりの人間が生まれるの。

その人間を見つめて人の移り変わりを知るもの仕事のうちなんだけど、

まぁなんだ、化身っていったらいいのかな。



 ただ、その化身も自分は神様の写し代わりだとは気づいていないの、

フツーの人間として生まれて、フツーに生活して。フツーに死んでいくわけ。

わたしたちが目印にするしるしみたいなもんだから。



 もしかしたらだけど、あんたも、神様の化身かもしれないよ。

てか、あんたち自身にはわかんないけどね。

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