第48話 太平洋非ベルト地帯
永吉が帰ってきて浜にもやっと40年間の区切りがつけることができたのね。
さっき日吉が言っていた「浜がここを守っていたっていう言葉だけど」
4〜50年前、日本中が好景気に沸いていたイメージしかないけど
時代の波に乗れなくて置き去りにされた街もたくさんあったの。
ちょっとまた50年前に戻るけど、浜たちが歩んできた道をすこし話させてね。
永吉が亡くなってから半月後、浜は無事若女将に復帰したの。
対岸の黒壁には新幹線が開業して、東京から大阪まで一本の線で日本の大動脈を貫いていったの。
黒壁は交通の要となって観光客で賑わっていったわ。
そして数年後、黒壁に大きな高速道路が開通して
物流が活発になっていったの、もう湖を使った物流が消えてしまったのよ。
あんなに賑やかだった湖面から船が消えて、穏やかになっていったわ
毎日ちょっとづつの格差が湖の奥にある竹生から力を無くしていったの
職を求めて人口が大都市に流れていき
昔に繁栄した街並みだけが残ってしまったの。
そんな竹生で浜は旅館をやりくりしていたんだけど
大旦那と大女将が相次いで亡くなちゃって。
日吉旅館も経営が苦しい中、従業員を一人、二人と対岸の千成旅館に移ってもらい、迫ってきた人口減少でやがて旅館経営さえできなくなってしまったの。
幸い旅館が街の中心だったから、大きすぎる本館を売却して
永吉が作った離れだけで、細々と営んでいたのね、それが今の居酒屋日吉なの
だからマキノとあさひが取っ組み合いになったときに
居酒屋には思えないほどの大広間があったの
旅館のなごりなのね。
「盛者必衰のことわりをあらわす、おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。」
でも、空けない夜はない、冬があればまた春はまたやってくるわ、
それだけ、そっと教えておくね。
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