第44話 ちくわは竹生をすくう



♡竹生町百周年祭に向けて虎姫の提唱していたプロジェクトの一つ

「作家のふるさと計画」が動き出したの。


 広告を見て応募してきた作家は50名その中で10作家に絞り

いまは使われていない町営のアパートに入居が決まったの。

作家の入居と同時にシャッター街となっている空き店舗を改装して

オープンカフェ風の作家市が開催されたのね。


【百年祭まであと11ヶ月】


 毎週土日の開催のこの催し物も、当初は告知不足もあっ客足もそれほどではなかったのだったんだけど、ある作家のマスコットが起爆剤になり来客数が週を追うごとに増えていったわ。


 人気を博したマスコットが「竹生くん」というをモチーフにしたなんともいい感じに脱力感があるキャラクター。


 インターネットに画像をアップされると人気を呼びイイネが増えていく。

こんなブサイクなキャラのどこがいいのか解んないけどね。


 このちくわのマスコットに火をつけたのはマキノと莉央なんだけどね。♥




「マキちゃんみてみて!何の子の!かわいい!なになに?ちくわじゃん!」


「ほんと!かわいい!あたしこの子を買っちゃおかな!」


「あっ、この子をつくった作家さんですか?」


「はい、こ、こんなに喜んでも、、、もらえるなんて。」


「かわいいですよぉ、この子おいくらですか?」


「じ、実行、委員さんですよね、お世話になっているので、さ、差し上げます。」


「だめですよ!こんなに可愛いのに!」


「えっ、えっ、いいです。」


「マキちゃんラッキーじゃんあげるって、もらっときなよ。」


「何、言ってんのよ!この子の身にもなってみなさいよ!

せっかく世間に出てきたのに、タダでもらわれたらかわいそうじゃん!」


「そ、そうですね、じゃぁ、千円でいいですか?」


「本当にそれででいいんですか?」


「はい、じつは、初めてなんです。」


「えっ、なにがですか?」


「この子、初めて欲しいって言ってくれた人。」


「えっ、じゃぁ、私が初めてのお客さんなんだ!」





♡う〜む。このへんちくりんなマスコットの写真をネットにあげたんだけど。

ジワジワ火がついて、今じゃ隣県からもこのちくわちゃんを買いにお客さんがやってくるんだって。


 ミラクルはそこから、竹生くんを呼び水にして他作家の作品も売れだしてね。

いつの間にか、毎週土日の作家市のためにバスまで出る始末で

シャッター街だった商店街も作家と共存することで人が集まりつつあったの

なんか昔の竹生をおもいだすなぁ、活気のあったあの頃のね。♥





「えっ!マキちゃん!この子スマホにつけるの?ちょっとでかくない?」


「いいじゃん、かわゆいし!それにこの子は、ちくわ兄弟でも世界で

一番目の子だから、見えるところでアピってもらわなきゃ。」






♡マキノがマスコットをスマホにつけると、

作家はうるうると瞳をぬらしている。感極まっちゃった?♥





「あ、あ、ありがどうございまじた。じつは受け入れてもらえるか、

自信が無かったんでず。でもこんなに喜んでもらえるなんて。」


「そんな、泣くことじゃないでしょ、それに、まだまだお客さんくるわよ、

増産おねがいします。」


「実行委員さんにそういわれると、頑張ってつくります!

えっと、い、い、今更で言いにくいんですけど。………チュロスです。」


「ちくわじゃないじゃん!」





+ + + + + + + + + + + + + + + + + +


♡余談なんだけど、物語の枠に収まりそうにないから先にバラしちゃうね

この作家さん、将来世界で活躍するキャラクターデザイナーになるんだ。


 新人アーティスト発掘がこの企画の趣旨だから1年後この街を卒業しちゃうんだ、海外で活動することになるんだけど、律儀に定期的に作品を小包で送り作家市で売っくれているんだって。


 彼女だけでなくそんな作家が増えていき竹生は日本でも有数のアートの街になっていくのまだもっと、もっと先の話だけどね。♥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る