第3章 小海
第49話 うちら、東京にいくで!
♡永吉の葬儀が終わり夏も終盤を迎えている
蝉の声も少しだけ静かになり、夕日の影が少し長くなり出した頃。
黒い探偵から連絡があったのね。
じつは、マキノとあさひが取っ組み合い担った日
浜が探偵に小海の墓を探して欲しいって追加依頼していたの。
やっと「小海が眠っている共同墓地がわかった」って連絡があったのね。♥
「マキノちゃん、こんど日帰りで横浜に行かへんか?」
「どうしたの、かあさん、マキノちゃんと二人でお出かけかい?」
「おばぁちゃん、もちろん!あたし案内するよ!」
「実はな、小海のお墓がわかったって探偵さんから連絡があってな、
永吉さんも帰ってきてくれはったことやし小海のとこに行こうかおもてな。」
「お母さんのお墓、うん。行きたい!おばぁちゃん!一緒にいこ!」
「おいおい、ちょっとまってよ、俺も連れてってよ!」
「あんた、店あるやろ」
「そんなの休みにするよ。」
「じゃぁ、おばあちゃんと、日吉さんと、あたしの三人で行こうよ!」
「ほな、永吉さんも小海に会いに行こうな。」
♡家族総出で横浜行きの計画が立ったのね。
浜は小さい写真の入る額を買ってきて、写真アルバムから永吉の懐かしい写真をとりだしたの。
永吉のチームがボートレースで優勝したときの写真。
永吉の肩には幼い日吉が担がれて、誇らしげで、その隣に小海を抱いた浜が寄り添って立っている
浜はその写真をそっと小さな額に入れて、旅行用のバッグにしまいこんだの
そしてマキノは早速あさひにメールを送ったのね。♥
「今度、おばあちゃんと、日吉さんと、あたしの三人で
横浜のおかあさんのお墓まいりに行きます。
そのあとだけど、そっちに寄ってもいいかな?」
♡メールを送信し終わった直後マキノのスマホの着信音が鳴ったの
ほんの10秒ほどのことよ!
あさひは条件反射のようにマキノに電話をしたのね
どんだけマキノ好きなんだ、あさひは。♥
「もしもしマキノ!、元気、今度くるの?てか絶対に会おうよ
なんならうちに泊まっていきなよ!みんなで待ってるから!」
「ああ、あさひ、ひさしぶり、お泊まりさせてくれるの嬉しいけど、日吉さんもいるんだ。」
「日吉さん、いいじゃん、ダンディだし、ご飯作ってくれるし。」
「えっ、ゲストに料理作らせるの。」
「いいじゃん、美女のハーレムの
「あんた、キャラ変わった?その主に料理させるんでしょ、ただの料理人じゃん、日吉さんに聞いてみるけどさ。」
♡マキノは日吉にあさひたちが住んでいる社員寮に泊めてもらえることを告げると、日吉はすこし「しまった!」って顔をして。♥
「ああ、そうなんだ。じつは今さっきホテル予約しちゃってさ、高校時代の友達が東京に二人いるから会おうかなっておもってるんだよ
成人式以来あってないから、せっかくあさひちゃん達が気を使ってくれてるのに、ゴメンね。」
「大丈夫です、あの子たち、気なんか使ってませんから。じゃあぁ、おばあちゃんとあたしであさひのところで泊めてもらいますね。」
「わかった、じゃぁ、一室キャンセルしておくわ。」
「日吉さんゴメンなさい。」
♡そして、竹生を立つ日。
竹生駅には優作、珠代、莉緒、洋子が見送りにきてくれていたの、
洋子は浜に近づき浜の手を包んで封筒を渡したんだ。♥
「えっ、洋子ちゃん、これは?」
「本当はわたしも小海に会いに行きたいんですけど、ちょっと協会の用事があって、これで小海が好きだったメロンでもお供えしていただけませんか?」
「ええよ!洋子ちゃん!気持ちだけで十分やから!」
♡洋子が浜に何度も頭を下げて花代を渡そうとしているのね。しばらくやりとりが続いて浜も根負けしちゃってね。♥
「洋子ちゃん、ありがと、ほな、小海に買って行ってあげるわ。
それより、よう知ってたな、小海がメロンに目がないって。」
「そうだよ、小海はメロンにメロンメロン、なんちって。」
♡キィィィン!日吉が駅一角をマイナス100度で凍りつかせたわ。♥
「ああっ、お母さんよくメロンのシャーベット作ってくれました。なんか、おもいだすなぁ、あたしもめろんに、めろんめろんでした。」
♡まさか日吉のダジャレにマキノがかぶせて来るなんて。♥
「ほれより、よう、洋子ちゃん小海がメロン好きってよう覚えてくれてたね。」
「ええ、お中元でもらったメロンを仏壇にお供えして盆過ぎに下げさせてもらってたんですけど。だいたいその日に小海がうちに遊びに来てて。」
「はぁ、、、あの子ったら、ちゃっかりしてるわ。恥ずかしわぁ。怒っとかなあかんな。」
「浜さんごめんなさい、このことは内緒にする約束になっているんで、聞かなかったことにしてください。
それに、夏休みの裁縫の宿題を小海にやってもらてましたから。」
「なに!お母さん、ズルしてたの、ひどい!ズルはダメって言ってたのに!」
「昔の話よ。あ~娘にばれちゃったじゃん、浜さんやっぱり叱っておいてください。」
あはははは!
♡まだまだ暑い晩夏の空の下、緑のかえる色の電車は夏空を滑るように走り出す。
見送りに来た優作はやさしい瞳でマキノを見つめて手を振っている
マキノはこの街に辿り着いてからの数年間を思い返していた。
泣きながら飛び込んだ居酒屋が自分のルーツで、そしてこんなに自分の元にたくさんの人の人生が絡んで、自分もその誰かの人生の一部になっているって。
そしてすこしもやもやしていた思いが確信に変わったの、あさひ達に見送られて一人になった自分の選択は間違っていなかったてね。
心の中で奇跡が重なった背後に神様の力を信じていたのかもれないね。♥
つか、わたしがその神様なんだけど。
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