9/17 キュートな日
かわいくない後輩がいる。ぼさぼさのくせっ毛の髪。長く伸ばした前髪を、重ねて覆う瓶底眼鏡。自身がなさげにいつも猫背で声が小さく、口を開けば誰に対しても憎まれ口を叩く。そんな後輩。
俺に対してだって例外ではない。少なくとも、弱みを見せられたことなんて一度たりともない。こちらから歩み寄ろうとしても、まるでハリネズミみたいに威嚇するから近づくことさえできやしない。だから後輩の人生の道筋に何があったのかなんて、知るはずもない。知る気もなかった。
ところでいま、俺は死体を埋めている。殺人犯は後輩。俺は現場に居合わせただけ。放心している後輩に構わず、俺は死体を埋めている。
きっといつもの調子を取り戻したら「誰が頼んだ」なんて怒るだろう。そんな風に期待していたけれど、彼女の罵声はいつまで経っても来ることはない。それどころか、あからさまにしおらしく、こちらの顔色を伺い、気遣ってくる始末。これではもはや別人だ。
俺の後輩は、どうやらもういないらしい。死体と一緒に、かわいい後輩まで埋めてしまったみたいだ。
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