バケツプリンと失恋

 後輩が作ったバケツプリンに一目惚れした。

 作り手ある後輩に、バケツプリンとの交際を伺う。しかし当然のように拒否された。間をとって、俺は後輩とつき合うことになる。交際関係に至れないのであれば、この際娘でも何でもいい。

 それから連日後輩の家に向かい、バケツプリンと会う。後輩の作ったバケツプリンは色艶形と申し分なく、いつまでも見ていられる。秘訣は何かと後輩に尋ねてみれば、愛ですよ、と冷たくあしらわれてしまう。

 運命の出会いは、別れの時も早かった。プリンの消費期限である。市販品と比べて、手作りプリンは足が早い。三日程度が限度だと、後輩に諭されてしまう。

 泣く泣く俺はバケツプリンを食べ始める。スプーンで見るも無惨な形に変えられたプリンは、涙が出るくらいおいしかった。

 しかし一人で食べるには、いかんせん量が多すぎる。後輩は三日かけて食べさせる予定だったという。無駄にするのももったいなくて、後輩と二人で食べる。

 ようやく最後の一口を食べた俺を、また作ってあげますよと彼女は慰めてくる。でもプリンを見るのも食べるのも、しばらくは遠慮したい。

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