8/25 即席ラーメン記念日

 突然家に来た先輩に出せるものといえば、カップラーメンくらいしかなかった。

 私は料理が下手だ。材料だってない。そんな中で、急な来客である先輩に用意できるものといえばは、いつ買ったのかも思い出せない即席麺程度。

 いっそのこと、へたに見栄を張らず、失敗作を食べさせなくてよかったと思ってしまうのがいいか。即席麺はお湯で数分、決められた時間温めれば変わらない味が出てくる叡智の結晶だ。

 ところで先輩は、人を殺してしまったのだという。もちろん、殺人の話はテレビやニュースで伝え聞いたもので、事件の真相は知る由もない。

 私の部屋にいる先輩は、いつも通りの先輩だった。いったい何の思惑があって、私の家に足を踏み入れたのかは分からない。これから話してくれるのだろうか。助けを求められるのか。それとも私は人質にでも取られでもしてしまうのだろうか。いずれにせよ、先輩に求められたのであれば、不承の後輩としては応えてみせるべきところだ。

 いつ作っても同じ味の即席麺のように、私は態度を変えない。だから願わくば、私の先輩も、私の前では変わらないままの先輩でいてくれますように。

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