どこかもやがては地上
後輩が捨てヘリコプターを拾ったらしい。
彼女の家に行くと本当に庭にヘリコプターがいる。餌を与えると、嬉しそうに翼を回した。砂埃がすごい。
飼うのは難しいようで、後輩と一緒に新しい飼い主を捜す。だけど中々立候補者は現れない。理由は明白で、ヘリコプターの翼が欠けてしまっていたのだ。
後輩から発見場所を聞き出し、俺はその周辺を捜す。一週間の捜索の末、ついに千切れた翼を見つけた。あとは接着剤で付ければいい。これ以上ないほど甘く考えて、意気揚々と後輩の家に向かう。しかし驚くべきことに、久しぶりに目にしたヘリコプターの翼は生え替わっていた。
ヘリコプターは翼を唸らせ、緩やかに飛び立とうとする。ヘリコプターの中に、後輩が眠る姿が見えたて、俺はあわててヘリコプターに飛び込む。
街が遠ざかっていく。目覚めた後輩は、この状況を初めから望んでいたみたいに落ち着き払う。けれど一言だけ、先輩はばかですね、と呆れたように口にした。
いつもの調子の彼女に、俺は心底安堵した。どこに行こうとも、ここは地球の内側で、やがて必ず降りるのだ。ひとまずは、翼が折れないことを願おう。
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