9/5 石炭の日

 家の庭から石炭が湧いて出てきた。この場合、私は石炭王とでも名乗れば良いのだろうか?

 石炭を売ることで、私は一躍金持ちとなった。元々住んでいた家が、いまは区画ごと大規模工場となった、なんて些末ごとだ。いまでは十倍は超える敷地の家に住んでいる。既に家の中で三度ほど迷子になった。

 金持ちにも難点はある。友人たちが、金目当てで来るのだ。追い返しているうちに、私の側には先輩だけが残った。先輩は、一般人が金持ちになったらどうなるのか興味があるらしい。悪趣味だった。それでも一緒にいて気兼ねないのが先輩だけなので、側に置いておく。

 あるとき、ついに石炭が庭から出なくなる。維持費もバカにならないから、家を売り払い、工場は解体する。そうすれば、手元にはちょっとした小金が残る。石炭王ではなくなった私の側に、先輩はいない。たまに連絡はくれるので、普通の先輩後輩の関係に戻ったというべきか。

 残ったお金で、庭付きの家を買った。庭からまた何か湧いてくれば、先輩は側にいてくれるだろうか。

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