気の合うふたり
二人で分けようと思っていたのに、遅れてコンビニから出てきた後輩は、同じ味のパピコをその手に持っていた。
丸一年の隔たりを経て、同じ日に生まれたこの後輩。出会った時からこうなのだ。一緒に飯を食えば俺と同じものを注文する。二人で写真を撮れば、後で送ってやるというのに自分のスマホでも撮る。誕生日には示し合わせもしてないのに、互いに同じものを渡す。気が合いすぎて張り合いがなさすぎる。
そんな後輩にも、渡せないものだってある。制服の第二ボタン。似た者同士な俺たちには、生まれた年という隔たりが明確にある。卒業式のその日には、俺はあいつに渡してやるつもりだ。まだ付き合っている仲ではない。それでも、俺がこう考えているなら、きっとあいつも同じことを考えているらずだから、きっと問題はないのだ。
しかし、後輩は転校することになる。いわゆる家庭の事情というやつらしい。夏の日、俺よりも先に、後輩はこの学校を出ることになる。
最後の二人きりの下校、その別れ際に、俺は季節外れの第二ボタンを後輩に押し付ける。後輩は目を白黒させて、次にひとしきり笑って。
それから、お揃いですねと、ポケットからボタンを取り出したのだ。
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