明滅する赤
後輩が煙草を吸うようになったのは、前の彼氏の影響だ。では、その前の彼氏が誰なのかと言えば、俺だったりする。
普段は吸わない煙草を彼女が吸うとき、それは救援信号だ。赤の光を明滅させ、空に狼煙をあげるとき、それは彼女が助けを求めているときだ。
夜のベランダで彼女が煙草を吸っている。俺は気づく。後輩の家に行く。泣きそうな顔で、彼女は俺を迎え入れる。流れる赤黒い液体。開いた瞳孔。居間で横たわっているのは、いま、後輩とつき合っているはずの男だった。
カーシェアリングで車を借りて、自宅から取ってきた寝袋に男を詰める。段ボールの箱に入れて、車に二人がかりで車に運び込む。そして、後輩と二人で真夜中のドライブ。
山奥に行って、人気のない沼に、重石をつけた寝袋を放り込む。
元々、俺だけで殺すつもりだった。一人ならもっとうまくやれたが、まあこんなこともあるだろう。最前は尽くした。あとは野となれ山となれ。
去り際に、後輩が煙草をつけようとする。俺は後輩を、犯罪がバレる証拠になるかもしれないからと理由をつけて止める。
線香代わりの煙草の一つさえ、他の男にくれてやるものか。
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