9/9 救急の日

 後輩が私のことを好きだと言ってきたので、速やかに病院に連行した。レントゲンを撮ってもらったところ、後輩の脳に腫瘍が見つかる。早期発見だったらしく、手術は無事成功。後輩は何事もなく元の生活に戻ってくる。

 しかし、後遺症がひとつ残った。それ以来、後輩は何かしらの病に罹るたび、私に好意を寄せてくるようになったのだ。熱っぽい視線も、風邪か何かのせいだ。早退させるたびに付き添いを要求してくるから、まったくもって手間がかかる。ともあれ私の献身と後輩の不思議な習性によって、後輩の健康は保たれていた。

 病から回復するたび、後輩は私のことを避けてくる。元から会話するどころか、視線すら合わせてくれないのだ。誰に対しても素っ気ないから、嫌われているわけではない、と思いたい。もっともこの態度のおかげで後輩の異変に気づくことができたのだから、何がどう転ぶかわからない。

 後輩は身体が弱いのか、月に一度は体調を崩す。不摂生な生活を改めろと咎めても聞きやしない。「お前、私のこと好きなんだろ?」と揶揄っても、後輩は怒ったように顔を赤くして、何一つ答えない。素直に受け答えでもされた日には、また付き添う羽目になるからいいのだけど。

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